第二十三話
結局、〝残滓〟を見つける事が出来なかった二人。
鷹城公園の池の前で、どうするかを話していた。
「〝残滓〟無いね。よかったー」
「俺は、あんまりよくない。それに憑依してる可能性が高いからな」
「異世界の、異物だっけ?」
「ああ。蟲だ」
「む、むし?」
それを聞いて綾香が想像したのは、ムカデだったり大きなアリだったり、そしてGがつくあの黒いアレ。
わさわさとそんなおっきな虫を想像してしまっていた。
「言っとくけどな。蟲って言っても、形はどんなやつか分からんからな」
「あ、じゃあわさわさしてたり、そ、その、ご、き、だったりはしないんだね」
「多分」
どうしても、黒い虫と言うと、Gさんを思い浮かべる綾香であった。
「ああ、後さ。この前、固形化したやつ、俺踏み潰したろ?」
「あ、う、うん」
綾香の頭の中では、その時の事と、Gさんの事が綯い交ぜになり、それを踏み潰している彰人を思い浮かべてしまっている。
「ごき、じゃなくて、龍の顔、だったね」
「あんな風になるのか?」
「ううん、そんな事は聞いてないよ」
彰人は、ふむ、と言って、展望公園に行きたいと言い出した。
どうやら、あの時の事が気になっている様である。
当然、綾香も気にはなっていた。
彰人のせいで忘れていたが。
そして、二人で展望公園にやって来た。
土曜なので、少し、人気もある。
子供たちが、そこで遊んでいた。
「うーむ。これじゃ、出ても固形化されりゃ、対処が面倒だな」
「そうだねー……」
「これまでだと、こういう時はどうしてたんだ?」
「うん。一日くらいなら、放っておいても大丈夫だから、場所だけ覚えておいて、後は夜に……」
「なるほどな」
実際、綾香は、〝残滓〟の事は、自分がやるべき事ではあるが、そこまで危険視もしていなかった。
所詮、ただの黒いもやである。
放っておくと、その後に、堕ちた魔術師が復活するか、魔術が発動すると言われていた為、その日のうちに対処はしていた。しかし、そうなるまでは、時間がかかる物なので、基本は大丈夫だと思っていた。
「だが、異物が混ざったとすると、そうも行かないかもな」
「うぅー、面倒だよぅ」
「ああ、面倒だ。テニのやろうめ」
とは言え、発生してくれなければ、綾香の羅針盤は感知しない。
そして、彰人は目視でなければ探せない。
二人で、展望公園の椅子の所に来て座って話を続ける。
「出てくれんと、どうしようも無いしなぁ」
「うぅー、同じく」
「なぁ、その、堕ちた魔術師とその魔術ってやつ、もう少し教えてくれないか?」
「うーん、私もそう、詳しくは知らないんだけれど……」
そして、綾香は自分が知っている限りの、その事を彰人に話した。
だが、綾香が知っているのは、かつてそう言う魔術師が居て、今、その魔術の〝残滓〟が顕現している事。
そして、その魔術師を倒したのが、間渡家の祖先である事。
その魔術師が、諫見高校の場所で、朽ち果てた事。
それくらいであった。
「じゃあ、その魔術師がどんなやつだとか、その魔術の元が何なのかとかは、分かってないのか」
「うん……。お父さんなら、知ってるかもしれないけれど……」
「で、その羅針盤でなら探せると」
「うん。百メートルくらいの範囲だけど」
「ふーん。ああ、そう言や、綾香の親父さんは、今どっかにいってるんだよな。いつ戻ってくるんだ?」
「うーん、分からない……」
音信不通。
半年以上が家を出てから経過している。
連絡が途絶えたのは、つい最近。
だが、綾香も、沙智子も、それほど心配していない。
と言うのも、これまでにも何度かこういう事があったからである。
いつも、心配した頃に、ひょっこりと戻ってくる。
前に、一年近く、そうだった時もあった。
だから、今回もそうであると信じている。
「分からんコンビだなぁ……」
「うぅー、そうだけど、なんか悔しい……」
結局分からない事だらけの二人。
そのまま、展望公園から、街の景色を見ていた。
そして、もうすぐお昼になる頃になり、二人は諦めて、家に帰る事にした。
この展望公園、ここに上がってくる道が二つある。
学校方面へ続く道と、綾香の家の方面へ続く道。
綾香たちは、当然、家の方面の道へ歩いて帰った。
そして、その反対側。
絵理が居た。
こっそりと、二人を見ていた。
「ぬふふふ~。綾ちゃん、やるじゃん~~。ああ~っ、もしかして、あのまま二人はっ。いけないわ、綾ちゃん。まだそこまでは早すぎるわん~。でも、止められないわ~。ああっ、でもちょっと羨ましいわ~。後で聞いちゃお~。ぬふふふふ~~」
まぁ、完全なデバガメである。
見つけたのは偶然であるのだが。
絵理の目からは、二人が休日に、展望公園と言う素晴らしい場所で、この素晴らしい快晴の元、中睦まじく話をしているように見えていたのだった。
そんな絵理には気付かない二人は、綾香の家に帰っていった。
そして、絵理は展望公園で遊んでいた子供たちに、不審な目で見られていた。
「おねーちゃん、すとーかー?」
「なにしてんのー?」
「お子ちゃまには、ま~だ、早い事よ~ん。ぬふふふ~~~」
不審者に見られても仕方の無い、絵理であった。




