第十八話
――――数日前――――
「はぁ。後十一匹か。これ面倒くさすぎる」
彰人はその後、深夜中探し回ったが、無間の蟲はそれ以降見つからない。
「そういや、あの黒い龍の顔、あれにも混ざってなかったか?」
それは、あの時彰人が踏みつけた、綾香が消していた魔術の〝残滓〟の事であった。
そして彰人は、その時のあの展望公園にやって来た。
空は白じんでいる。
もうすぐこの街に朝が来る。
「はぁ。これ以上は誰かに見られるなぁ。しかたねぇ。歩いて探すか」
そして彰人はそこから階段を降りつつも、やはりこの街に、何かの思いが発生していた。
「……俺、本当にここに住んでたんだな……なんとなく、分かるな……」
鷹城公園の一段目に来た所で、橋がある。
「あれも……分かるな」
諫見橋。
この街に住む人ならば、ほぼ必ず知っている橋。
彰人に知識としてだけあった記憶は、かつての彼の、思い出と重なりつつあった。
「……なんで、今更、思い出せるんだよ……」
そして、彰人は、橋の所に歩いて来た所で、なにやら黒いもやを発見した。
「なんぞ、これ?」
それは魔術の〝残滓〟である。
だが、彰人には分からない。
一応、消そうと試みたが、それは消えなかった。
「無理か。うーむ。別の術なら消せるかもしれんが……ここだと”聖光法術”は強くなりすぎるっぽいなぁ。ん? 普通に使ってたが、”聖光法術式円陣”は大丈夫なのか」
これは、誰かに、この世界の事を教授してもたったほうが良いと考えた彰人。
それに、どうも今回は時間がかかりそうだとも考える。
彰人は、その黒いもやに、一つ術をかけておいた。
”界順時停”と呼ぶ、時を止める術である。
だが、彰人はそちらの術は苦手であり、おそらく一日も持たないであろう、と考える。
「混じってはいないようだな。一応、これで少しの間は、混じる事も無いか。けどこれ危険だな」
このよく分からないもやに、無間世界の蟲が憑依すると、消せなくなってしまいそうである。
そして、彰人が基本使う術は、前に生活していた世界の、”聖光法術”がほとんどであった。
だが、それすらも、彰人に使える数は少ない。
「あの娘。確か、あの高校の生徒だよな。なんかこれも知ってそうだし。んー、時間もかかりそうだしなぁ」
彰人は、昨日のあの娘に聞こうと考えた。
しかし、どう探せば良いか、それにその間どう過せば良いか、少しの間、思索した。
「折角だ。あの学校に通ってしまえばいいか。となると、んー、必要な事をやってしまうか」
それから彰人は、学校の近くにある、役所に忍び込んだり、学校に忍び込んだりし、転校の手続きを不正に行った。
ちなみに、それらの手助けを、テニにさせる為に、幾度も”異界交信”を行使した。
嫌そうな声で、応答したテニに対し、
「学校に通えるようにしろ」
と簡潔に述べると、テニは一部を改変してくれた。
テニは最後に
『モウ手助ケシナイ。ウッサイ、クロ。モウ終ワルマデ、絶対ニ連絡ハ取ラン』
と言葉を残した。
そして、制服と鞄は学校に置いてあった物を勝手に取った。
おそらく、見本か何かで使ったものだろう。
だが、丈がぴったりであったので、拝借した。
「よしっと。これで明日からは普通にここに通えるな。クラスも同じになれたようだ」
後は、この世界の事などを聞いてみてから、無間の蟲を探す事にした。
なんやかんやと、手続き(不正)をやっていたら、夜になってしまっていた。
「あー、あの学校って、部活が強制だったか。昔の俺って、弓道部だったな。それで良いか」
彰人は展望公園の大樹の上で休んでいた。
「勉強は、うーん。”聖光心検視”でどうにかすっかなぁ」
そんな事を考えていると、展望公園に、あの女の子がやって来た。
「うー……もうっ。出てきてくれても良いのにっ。今日なら、ちゃんとお話も出来そうだったのにぃ」
(何の事言ってんだろうな?)
彰人は、その光景を、木の上から隠れて見ていた。
出て行っても良いのだが、誰かを探しているようであったので止めておいた。
(ま、どうせ明日から学校行くしな。そん時にでも、話しすっか)
その娘が居なくなってから、彰人は展望公園で、”聖光法術”の検証をした。
「えーっと、”聖光法術式円陣”。……問題無いな。んじゃ、”聖光体増”。ふむ、こっちも大丈夫か」
いくつかの術を行使してみたが、中には良からぬ術も発見できた。
「”聖光方術式滅炎”。げっ、ま、まずいっ! ”聖光法術式円陣”!」
自分で放った術を、己が術で封じる。
「あっぶねー。あんな出力になるとはなぁ。この世界、攻撃系ほぼ使えんじゃねぇか……」
どうやら、この世界では、彰人が使える術は、”聖光法術式円陣”と”聖光体増”。
そして、それに付随した術くらいであるようだった。
それ以外の術は、出力が安定しない。
やもすれば、この街、いや、下手をうてば、この日本すら破滅させかねない。
「この世界の事を、もう少し知ってからの方が良さそうだなぁ」
彰人は、術の検証はそれ以上は諦めた。
封じる事も出来ないようだと、かなり危ういからである。
「んー、ここだと人も来るよな。もう少し目立たん場所を探すか」
そうして、彰人は電波塔に移動したのであった。




