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第十六話

――――数日前――――



「――まじか、てめぇっ、戻ってきたら覚えてろっ!」


『泣イテヨロコベ。ソンデ、戻ッテクンナ』



 そして彰人は、地球の日本に飛ばされた。


 ゲートの出口を出ると、そこは空だった。


「まじかよっ! なんで空に飛ばしたっ! テニのやろう」


 空から落ちながら、眼下の景色を見る。


「あそこか。…………ん? 見た事があるような……」


 どこか、見覚えるのある街並みだった。

 暗いのでどうやら夜のようである。

 地上の少し前で彰人は”聖光法術式円陣アヴェス”を作り出し、空中で止まる。

 ”聖光法術式円陣アヴェス”の上に立ち、そして、もう一度見渡す。


「ここは……俺の生まれた街……なのか……?」


 街は少し寂れている。


 知ってはいた。だから、この街がそうだとはすぐに分かった。

 だが、知っているだけのはず。覚えている訳ではない。

 それなのに、彰人は懐かしく感じていた。


「……なんだ? この感覚……なんでだ……」


 彰人は、空中でその街並みを眺めていた。


 ふいに、横から光った何かが飛んできた。


「うおっ! いてっ!」


 街を見惚れていた為、避けそこなって、それに少しかすった。


「いってぇー。な、なんだ? 今の」


 飛んできたほうを見る。

 何故だか分かった。

 あそこはこの街の展望公園。


 そこに、黒いもやらしき物が見える。


「なんだ? あれ」


 その黒いもやは、蛇のようにうねうねと動いていた。

 そして、そこから先程の光った何かが沢山飛んできた。


「うおっ! なっ、アレからか? 俺狙ってんのか? 危ねっ、うおっ!」


 それを避けつつ、彰人はそれが矢の形をしている事だけ確認出来た。


「ありゃ、異物……か? でも、この矢はそうでないような……うぉっ、まだ飛んできやがる」


 更に光りの矢が飛んできた。


「バンバン飛ばしてきやがって。ん? なんか変わってねぇか。アレ」


 少し腹がたった彰人は、その黒い何かの所に行った。

 龍の顔のように見える黒い何か。

 彰人は、”聖光法術式円陣アヴェス”から飛び降り、それを上から踏みつけた。


「あぶねえよっ! 何なんだよこいつ!? バンバン光った矢を飛ばしやがって。……ん?」


「…………へ?」


 そこに、女の子が居た。


 踏みつけた黒い龍の顔は、霧となり消えていった。


(あー、混じってねえか? コレ)


 無間世界の蟲は、体を持たない。

 その為、有個世界に入り込むと、何か力のある物に、憑依する事もある。

 そうなると、かなり面倒であった。


「……な、何? 〝残滓ざんし〟が変化したの? あっ、もしかして、堕ちた魔術師っ!」


 唐突に、その女の子から言われる。


「へ? ん? ああ、もしかしてさっき、なんか光の矢を飛ばしてたのって、あんた?」


 なるほど。それなら合点がいく。


「あ、あなたが、お、堕ちた魔術師でもっ。もう大分、弱くなってるけれどっ。……これ、い、痛いですよ……? た、たぶん!」


 何かに間違えられているようである。

 とりあえず、先程のあの光りの矢はまずい。

 食らうと、彰人であっても消滅させられかねない、異色な術であった。

 

 その女の子は、制服を着ていた。

 高校生だろうか。

 だとするならば、下手に手出しも出来ない。


「ちょい、待って。それ、痛そうだし、なんの事だ? で、君こそ何?」


 とりあえず、降参しておこうと思った彰人。

 だが、知らされた自分の過去には、このような術を扱う人間など居なかったはずである。

 平行世界なので、どうもその辺りが違うようであった。


「あのー、あなたは、堕ちた魔術師さん……ですよね……?」


「いや、それ、何の事だ? で、それ向けるの、止めて下さい」



 この子は、何の事を言っているのか、未だよく分からない彰人。


(テニよ。全然違うじゃねぇか)



「〝残滓ざんし〟から、……現れましたよね……?」


「ざんし? ああ、さっきの、なんか黒いやつの事?」


 彰人は、それを踏みつけただけである。


「ち、違うんですか?」


「違うし。何の事かも分からんし。で、魔術師じゃないぞ? 俺」


「え? ……えーっと、あ、あれ? ……じゃあ一般の人?」


(魔術師? ふーん、じゃ、ここの平行世界は、魔術が存在するのか。でも俺、力あるけど使えねぇ)


 そして、その子は、術を解いてくれたようだった。


「あ、良かった。やっと止めてくれた」


「ち、違います! ま、魔力が尽きただけですっ! ……あ、う! ま、まだまだっ! はぅ……」


 ほっとした彰人だが、今度はその女の子が倒れそうになっていた。


「お、おいおい、大丈夫か?」


「……へ、平気ですっ! ……でも無いかも……」


 これはまずいのでは、と思い、彰人はその倒れそうになっていた女の子の体を支えた。

 さすがに、いきなり体を触るのも何なので、腕にしておいた。

 だが、その子はどうやら力を使いすぎて、そうなっているようである。


(ふむ。この子、魔術師なのか?)


「……一つだけ聞きたいんだけどさ」


「……なんですか? ……名前は……言いませんよ?」


「いや、それは別にいいけど。さっき、魔力が尽きたって言ったな?」


「…………あっ……そ、それは……」


「そうみたいだな。んー、魔力か」


 魔術は扱えないが、彰人が扱える、”聖光法術アンスミアード”を魔力に変換する術なら知っている。

 前に、色々あったせいで、覚えた術であった。


(確か、魔力は聖光力と正反対だったな)


「……こんな感じだったけか?」


 問題無く、変換出来たようである。


「……え? な、なに? え……えっ? あ、あれ? 体が……あ、ま、魔力が……」


 拒絶反応も無いようである。

 どうやら、彰人が知っている魔力と、差異は無さそうだった。


「戻ったか?」


「え……な、何? ま、魔力戻っちゃった……」


「大丈夫そうだな」


「あ、あなた……一体……?」


「知ってる魔力で良かったよ。なぁ、さっきの、あの黒い影みたいなのは、何なんだ?」


「有難うございます……じゃなくてっ、さ、先に答えてくださいっ! あなたは……魔術師なんですか?」


 彰人は先程の黒い影が気にかかっている。

 普通に、何かの生物などに、異物が入っていれば楽だったのだが、どうもあの黒い影のような物に混入しているように思えた。

 そして、その子に聞かれる。


(異世界の、聖光術師見習いの、その上、異端になった俺を、どう説明しろと)


「えーっと、説明が難しいな……とりあえず、俺は魔術師じゃない」


 それは間違い無い。彰人は魔術は使えない。


「じゃ、じゃあ何で、魔力を……あ、それは有難うございます。あっ、答えてくださいっ」


「そうだな、何て言えばいいのか。魔力は知ってるし、使えるけど、魔術師じゃない」


 厳密には、別の力を変換しただけである。


「よ、よく分かりませんっ」


「そう言われてもなぁ……で、教えてくれよ。さっきのはなんだ?」


 説明し始めると、長くなるので止めておきたい。

 そもそも、異物を排除できれば、彰人の任務は終わりなのだから。


「そ、それは、その、昔、堕ちた魔術師が居たそうで、その人が残した魔術の事だと聞いてますけど……」


「ふーん。昔からあったのか。ふーん」


 なるほど、昔からあの黒い何かは存在していたのか、と考えた。

 ならば異世界の異物とは違う物。

 もし、あれ自体がそれならば、昔から、と言うのはおかしい。


「ありがと。ま、少し分かったよ。んじゃな」


 この事を説明するのも面倒だったので、彰人はその場を去ることにした。


 ”聖光法術式円陣アヴェス”を行使し、彰人は街へ向かった。


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