10年目のさよなら
それぞれの人間性や価値観を描けたらいいなと思います。
私たちは、まるで氷で薄まったオレンジジュースの様な恋をした。初めは良かった。甘酸っぱくて、どこか切なくて。
淋しかったし辛かった事もあったけれど。
それらはもう、思い出―。
晴樹と付き合い始めたのは10年前。
"夏になったら結婚しようね"
彼の言葉が胸に痛かったのは、どうしてだろう?
「秋穂!何かあったのか!?いつも待ち合わせ時間前に来てるのに…一時間も待ったのに来ないから心配したぞ?」
息を切らしてるのは晴樹が走って秋穂の元までやって来たからで。
それとは反対に急ぐ様子もなく、ゆっくりと歩いてきた秋穂は何処かぼんやりとしていて、何だか上の空だった。
「…あ、ごめん。いつもの偏頭痛が酷くて出てこられなかったの」
嘘をついた。頭痛持ちなのは本当だけれど、今日は特に体調に問題はなく、むしろ問題があったのは秋穂の心の方だった。
(何よ。束縛するみたいな言い方をして。)
心の中に生まれた小さな苛立ち。遅刻した自分がいけないのだと頭では分かっていた。
それでも―。
「悪いけど、今日の約束は無かったことにして。」
「は?何言ってるんだよ!今日は―」
晴樹の大きな声を遮って秋穂は言った。
「分かってる。今日で10年目でしょう?でも私、終わりにしたいの。」
「!?どういう事だ」
「別れたいの」
「何でだよ」
「私の都合よ」
「どんな都合だ」
「晴樹にはもう関係ない事だから。さよなら」
そう言い切ると、秋穂は駅の改札口に向かって走り出した。
ありがとうございました。




