適正判断
「と、まあ話はこれくらいにして早速測ってみましょうか。体験した方が速いですしね」
「それでは一人づつそこの部屋に入ってください。入った後は聞こえる言葉に従ってくださいね」ユルグは指で扉を示す。
俺達が扉の方に気を取られているともうそこにはユルグの姿は無かった。
まるでそこには最初から何も無かったかのように…。
「なら、俺から行くか」ユルグが消えてから数分後に虹咬さんが立ち上がった。
「全員終わったら自分の属性を言い合おう」そう言って虹咬さんは扉を開けて部屋に入っていった。
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数十分後、グッタリとした姿で虹咬さんが出てきた。
虹咬さんはそのまま近場の椅子に座った。
「どうでした?」谷田さんが虹咬さんに近づいて問う。その後には俺を含めた8人が居る。
「ああ、何されたかは俺自身ちょっと良くわからないんだよなぁ…。とりあえず魔法は使えるようになったみたいだけど…」そう言うと虹咬さんは手を開いた。
すると、碧の球形の物体が浮かび上がる。
「「おお」」谷田さんの後ろでどよめきが起こる。
「ほらほら、速く次の人入りなよ」虹咬さんは手を握ることで球体を消して早く部屋に入るように促す。
「なら次は私ね」谷田さんの後ろから子守さんが部屋に向かって行った。
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講堂に入ってから大体1時間が経過してようやく俺の番になった。
自分の適正について話すのは全員が終わってからとなっていたからまだ俺も誰がどんな適正を持っているか知らない。
少し凝ったデザインの扉を開ける。
部屋には椅子と机が1組あり、奥には本棚が置いてある。部屋の中は全体的に暗く、今開けた扉以外には窓も扉も無い。ただ、頭上にある古ぼけたシャンデリア風の照明だけが部屋を照らしている。
あれは…どっかで見覚えが…あるような…
机の上には深い緑の色をしたモノを見て思う。
んー、あっ!そうか!“カラーコーン”だ!でもカラーコーンにしては布っぽいな…でもどう見てもカラーコーンなんだよなぁ…。
『誰がカラーコーンじゃ!誰が!!』
俺以外誰も居ないはずの部屋に男の声が響く。
俺は咄嗟に部屋を見渡す。しかし俺以外にあるものと言えば深い緑色をしたテラテラ光る布っぽいカラーコーンと1組の机と椅子、あとは本棚ぐらいしかない。部屋に入った時と何ら変わりない。
『だから誰がカラーコーンじゃ!?儂のこと指しとんなら違うぞ!!』
またも男のそれも老人風のしわがれた、しかしハリのある声が響く。
…まさかね。
『そのまさかじゃ。儂は机の上に置いてあるとんがり帽子こと“選定の帽子”じゃよ』
カラーコーンもとい、選定の帽子をよく見てみると…いや、コレどう見てもただのカラーコ……帽子だよ。
『そりゃそうじゃ、元々はただの帽子じゃからな。儂がの声が聞こえるのも主達の言葉で言えばテレパシーとやらが使えるからじゃしの。それを使っておるのじゃよ。まぁ、そんなことは良い、はよう椅子に座って儂を被れ』
そう言えばユルグが声に従えとか言ってたな…なら帽子に言われることに従えってことか?
『そうじゃよ。じゃからはようせい』
「分かった分かった、今いくよ」俺は帽子に対して返事をし、椅子に座り机の上の帽子を被った。
『ふむふむ……おお、主は凄いのぉ』
「?何がだよ帽子」
『ふむ、儂の呼び名はそれで良かろう。いやの、主の適正をみておるのじゃよ』
「いやいや、それを見るためにお前が居るんじゃないのかよ!?」
『それもそうじゃな。カッカッカッ。儂とした事が目的を忘れておったわ』
「お前なぁ…」俺は低い声で唸る。
『まぁまぁ、そう怒るでないわ。ふむ、主の適正、分かったぞ』
『しかし主は非常に珍しい適正の持ち主じゃの』
「珍しい?」
『うむ。主の適正は《光》と《闇》じゃよ。《光》と《闇》を一緒に持つ者が居るとはのぉ。少なくとも儂は見たことも聞いたこともないわい』
確に、《光》と《闇》は普通、真反対対極に位置してるはずだもんなぁ。
『それじゃやるかのぉ』帽子がそう言ったかと思うと俺の視界がブレた。
「あ、頭がっ!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」俺は咄嗟に帽子ごと頭を抑える。
突如、俺を頭がさながら割るような痛みが襲った。しかしそれは長くは続かなかった。
「あ、あれ?痛く…ない?」痛みが引くとともに視界がさっきよりも、よりクリアになったような気がする。
『こんなところかのぉ。やはり《光》と《闇》と言ったところかの。主にもダメージが入ったようじゃ』
「お前…俺に何をしたんだ…」俺は帽子をとって目の前に持ってくる。よく見れば帽子はほんのり、七色に光っているように見える。
『主の体にはさっきまで魔素が流れていなかったからの、それを流しただけじゃよ』
ああ、そういう事か…
『しかし嬉しい誤算もあったものじゃな。主には魔素が視覚的に見えるようじゃの』
「この薄ら光って見える物か?」手を見れば確に白と少しの黒に光って見える。
『そう、それじゃよ』帽子は肯定した。
『最後に儂からのとっておきのアドバイスじゃ』
「お、アドバイスなんてくれるのか?」
『主には他の9人にはない、いわゆる“魔眼”が発現したからの、特別じゃ』
『適正について問われたら主は《光》と答えよ、主の後ろにはどうやら《闇》に関連したモノの姿が見えるからのぉ。それに《光》と《闇》を両方持っているものなど前代未聞じゃ。もしかしなくても色々言われるやもしれん。別に主がそれでもいいと言うならば正直に答えよ。その辺りは主に任せよう』
「ありがとう。俺のこと気遣ってくれて」
『なぁに、主とはこれから長い付き合いになりそうじゃからの』
「そうか。なら名前教えとくよ。俺の名は“緋野断矢”だ。次からは断矢とでも呼んでくれ」
『主の名は断矢と言うのか…覚えておくとするかの。それでは断矢よ、また会おうぞ』
「ああ、またな帽子」俺は椅子から立ち部屋を後にした。
ええ、遅くなりましたとも…
これが俗に言うスランプというヤツなんですね…書きたいのに書けない…非常に辛いです。
まあ、頑張って行きます。
誤字脱字、感想等ありましたらお願いします
それではまた近い内に…上げれるといいなぁ…