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ザ☆旅行記Ⅰ ご隠居様の城  作者: 小宮登志子
第1章 異世界に飛ばされて
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親子喧嘩等

 実験が終わると、誰もが一様に腕を組んで首をひねった。わたしは、内心、「すべったか」と、ひやひやしていたが、まず、ご隠居様が口を開き、

「要するに、これは本物の砂金じゃないということなのか?」

「そうです。金は簡単に溶けません」

「おい、執事、間違いないのだな」

 ご隠居様は、突然、話を執事さんに振った。ものすごく気が小さい執事さんは、不意を打たれ、さらにパニックになり、小役人的な本能のおもむくままに、

「間違いございません。わたしには専門的な知識はありませんが、一般的に、金を溶かすのは、よほどの気合と根性がないと、不可能で、このメイドの言うとおりで……」

 そう言うなり、執事さんは泡を吹いて倒れてしまった。


「執事が言うなら、そうだな。そういうことにしとこう。ならば、やっぱり騙されてたんじゃないか」

 ご隠居様は、納得されたのか、納得することに決められたのか、ウンウンとうなずかれた。あるいは、責任者としての執事さんの発言は重いということだろうか。

 御曹子は、何か誤算があったことに気付かれたか、急に顔を真っ赤にされ、

「キ……キサマ、こ……この、僕に恥をかかせやがったな!」

 と、すごい剣幕で連れ女の胸倉をつかみ、すごむ。

「何を言ってるのさ。あんたが言い出したことだろう。私は単にアイデアを……」

 しかし連れ女は、言い終わらないうちに御曹子から一撃くらっていた。それを見たご隠居様は激怒され、

「この馬鹿息子め! 見下げ果てたやつめが!!」

 杖を振り上げて御曹子に殴りかかった。

「ご隠居様、お願いでございます。落ち着いてくださいまし」

 純白シルクのメイドが、必死になって、ご隠居様の怒りを抑えようとし、

「ご隠居様、ここは一つ、穏便に……」

 騎士が強い力でご隠居様を羽交い絞めにした。


 わたしは、倒れていた執事さんの頬を張り飛ばし、目を覚まさせた。

「退散しましょう。これ以上ここにいても、無意味ですから」

 執事さんに言葉が通じているのかどうか分からないが、とにかく執事さんの手を引き、応接室を出た。そして、執務室まで連れていき水を飲ませると、執事さんは、多少、落ち着き、

「一応、私たちとしては、砂金の真偽が証明できたので、OKですよね、いいんですよね」

 と、心細そうに言った。何かあれば責任を問われるのは執事さんだから、わたしとしては気楽に、

「ええ、多分、そうだと思います」

 わたしは適当に執事さんをあしらって、執務室を出た。

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