魔人の誕生
ユーシス達はエレシエル戦線にやってきた。たかが十人隊が移動してきたくらいでは大きな騒ぎにはならない。ここでまずは、新米は最前線の役割が与えられるだろう。それを乗り切ればだんだんと優遇されていくシステムだ。そしてやってきたばかりのポール十人隊は他の隊との連携が取れないので最前線で消費しようということになるのだろう。
「後ろに注意しとけ」
「う、うん分かったよ」
ユーシスは斬る斬る斬る。片っ端から斬る。全ては手柄のために、百人隊長クラスをおびき出すために。だが、こんな混戦地帯にわざわざ出てくる訳なく、少し後ろで指揮をささていた。当たり前といってしまえば当たり前であるが。その日の小競り合いでは結局これといった手柄は挙げられなかったが、一兵卒を殺しまくってたので敵味方から広く認識される事になる。
緑の悪魔がいると。
ユーシスがあそこまで突っ込んで百人隊長が出てこなかったは、ユーシスを恐れていたのだ。
「なんで後ろに注意しなくちゃダメなの?」
夜にポールが質問してくる。ユーシスはといえば少し呆れているようで、
「はぁ...そんな事もしらないのか?いいか、軍人の死因はな敵に殺されるだけじゃないんだ。味方に殺されるような時も多々ある。弓を放ったら矢はどうなる?飛んでいくだろ、それが味方に当たらない理由がない」
「な、なるほど。僕の家族には軍人がいないから教官から教えて貰った事しか知らないんだ」
(なるほどな...軍人になる奴にこんな事は教えないか...)
「ちなみに、親は何をしているんだ?」
「商人だよ」
ユーシスは商人の子供と縁があるみたいだ。アンブラに続いて2人目だ。
「なるほど、何を扱っているんだ?」
「えーとたしか、香辛料と鉱物だったかな...」
(......は?)
「えーつまり、胡椒や宝石って事かな?」
「うん、もうちょっと正確に言うなら宝石や金、鉄とかだよ」
「あーと...ポールの家名って...」
「ドナートだよ」
(大お坊ちゃんかよっ!どおりで...なるほどなぁ、恵まれてるなぁ)
「へぇあの!是非会ってみたいものだね」
「ユーシスなら歓迎だよ!」
(うまく利用してやるよ!俺のためになっ!くくく、くはっはっはっは!都合が良い)
○
翌日も昨日と変わらない戦況が続いた。エレシエル王国とラトケル王国は正式には戦争はしていないのだ。あくまで小競り合い。それが分かっている両方は一線は未だ越えてない。ここまで綺麗に回っていた戦況、いや歯車はここで狂い始めた。緑の悪魔のせいで。
「っち!このままじゃいつまでたっても同じだ!」
「そ、そうだね」
幸運にも昨日見た百人隊長が自らやってきたのだ。これ以上隊の人員が減れば責任を負うからだろう。
「ふはははははは!見ろポールよ!俺たちの名声がやってきたぞ!」
「貴様を緑の悪魔と見た!一騎打ちを申し込む!」
(一騎打ちか...俺を抑えていれば押せると踏んだ訳か。なかなか考えたな)
「受けて立とう!...ポール撤退の準備をしておけ」
最後のはポールにだけ聞こえるように呟く。
「いざ参る!」
何度か剣を合わせる。
(...)
若干ユーシスが押されていりようにも見える。
(...俺はこんなにも弱かったのか?レスターにはギリギリ勝ったと思う...が、この間もそうだったが俺の剣の腕は百人隊長クラスなのか!?この俺がっ!ありえない、常人では考え付かないようや鍛え方をしたんだぞ!っ!?そうか...なるほど)
しのぎを削る。その時ふとユーシスは相手の剣を素手で掴む。手が切れ血が流れるが、そのまま剣をずらし相手の首へ剣を当て引く。
その場がいっきに静まる。自分達の指揮官が討ち取られたのもそうだが、戦いの中剣を手づかみという常軌を逸した行動がそうさせていた。
「お前らの百人隊長、このポール隊が打ち取ったー!」
「ま、魔人だ...」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ」
「う、うああああぁぁぁぁ」
一気に散り散りになる。
「ユーシス...なんてこと!」
「なんのことだ?」
「手だよ!血が出てるじゃないか!」
「たいしたことではない、それよりも一旦引くぞ他の隊がくるはずだ」
均衡していた戦況が動く。エレシエル側はユーシスが崩したこの穴へ戦力を集める。
結果、この日、ラトケル側は後方にある砦へ撤退する事となる。
今ここに戦況は傾いた。それを起こしたユーシスの得た物とは、百人隊長の首 、自分の弱さ、そして昇格無しの報告であった。ユーシスはまだ一兵卒だ。
どうも!
最近忙しいっす、進路とかワロエナイ




