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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
神託編

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朝の目覚めと約束

日を空けてしまったので上手く書けていない気がする……。

 フィリップとの決闘から早くも数日が経った。


 あの日にプリッシラさんが放り込んだ予期せぬ火種のせいで、ここ数日間は皆の誤解を解く事に苦労してしまった。


 あの機会に反論できれば良かったのだが、さすがにそのまま力説するわけにもいかないため、軽めに流すことにしたのだがそれも間違いだった。


 当然の事なのだが場が解散した後、個別に赴いて説明するという無駄な時間を掛ける必要がでてしまったのだ。


 グレゴワールといいシェリルさんといい、基本的に多忙な人なので、会うためには多少の手続きが発生するため非常に効率が悪い。


 とはいっても多少の手続きをするだけで領主や司祭に面会できるあたりは、僕の立ち位置が現状はかなり優遇されているということなのだろう。


 まあ、その話はもうよそう。僕の人物像が間違えて伝わってしまった事は不愉快極まりないが、今更どうしようもないし、考えるだけ無駄というのものだ。


 そんな事よりも今は大切な用事がある。


 今日はプリッシラさんが訪ねて来ることになっているのだ。


 プリッシラさんにはまだ話していないのだが、ある歌を異界都市の外に広めてもらおうと思っている。


 プリッシラさんの力を借りて錬金術の印象をよく出来ないだろうか、僕の誤解が解けた後にそう思ったのだ。


 この異界都市に住む住民にとって錬金術の印象はかなり良い物になっている。

 これはひとえに領主であるシェリルさんの努力の賜物といえるだろう。

 特に探索者達には魔術師への不満も相まってすんなりと受け入れられている。


 しかしながら、少なくとも僕が入手した情報では、異界都市外においては未だ錬金術の印象は良くないとの事だった。


 まあ汚名を着せられたわけだからしかたがないことだが……。


 近いうちにシェリルさんの計画も次の段階に移る事になっているので、それと歩調を合わせ少しずつでも印象を変えていきたいと思っている。


 民にとって歌は娯楽の一つとして受け入れられている。特に悲劇や無実の罪に対して心を動かされやすい。


 百年を費やした錬金術の悲劇を歌として草の根に広げる事でこの印象を少しずつ変えていくことは出来ないだろうか、と。


 プリッシラさんの協力を得られるかは分からないが、やってみる価値はある。


 今日はその第一歩だ。




 温かい朝日を感じながら身体を動かして布団を這い出る。

 ちなみに今、僕は非常に調子が悪い。理由は簡単、睡眠明けだからだ。


 とはいえ、なんとか午前中に起きることが出来たのは正に奇跡と言うべきだろう。

 これまではどう頑張っても午前中になど起きれなかったのだから。


 しかも今回の寝起きはこれまでに比べれば相当軽かった。いや酷いのは酷いのだが、症状は多少軽い。


 ここ最近はもういっそのこと眠れなくなれば良いのにと思ってしまうほどひどかったので、これから先に対して希望が持てる気がする。。


 現状でも症状の緩和であればというかホムンクルスを大量に錬成すれば睡眠のサイクルを遅らせることはできるだろう。

 しかし短命のホムンクルスを目的もなくポンポンと産み出すべきではない事に関しては重々理解しているつもりだ。


 先日のアリスの涙が脳裏をよぎる。


 ……しばらくはこの生活を続けるほかはないだろうな。



 身支度を整えて部屋を出るとすぐにアリスと会った。彼女は家事の真っ最中だったようで、その小さな身体には洗濯物を抱えている。


「おはようございます。バーナード様、申し訳ありません。お目覚めした事に気付くのが遅れてしまいました」


「いや、不定期に目が覚めてしまうのは何ともならないからね。気にしないで」


 忙しそうなアリスが申し訳なさそうにしている。先程まで寝ていた身としては逆に申し訳なくなってしまう程だ。


「これから急いでお食事の用意をいたしますので、ダイニングでお待ちになっていてください」


「ありがとう。でも急がなくて良いからね」


「かしこまりました」


 アリスは軽く会釈をすると足早に離れていった。……それは急いでるんじゃないか?




 ダイニングで待っていると、程なくしてアリスが食事を運んで戻ってきた。


 相変わらず仕事が速い。まだあれから大して時間は経っていないのに、もう食事まで作ってしまったようだ。


「お待たせいたしました」


「いや、大して待ってないから気にしないで」


 そう言ってアリスと目が合うと、何かに気付いたように、でも首を傾げながらこちらを見つめてきた。


「……何か良いことでもございましたか?」


「ん、そんな顔してたかな? もしかしたら今朝はいつもよりも寝覚めが少しだけ良かったからかな?」


「それは何よりですね。そういえば確かによく眠っておられたようですので、そのせいかもしれません」


 アリスは胸のあたりで軽く手を合わせて嬉しそうに話している。

 あれ、もしかして僕が起きる前に部屋の片付けでもしてくれたのかな? ちょっとだけ気になるけどまあいいか。


 ちょっとだけアリスの言葉が気になったが、絶妙なタイミングでお腹の音がなってしまったので、目の前に並べられた食事を摂ることにした。


「くすっ、ごゆっくりお召し上がりください。それではわたしは家事に戻りますので、御用の際はまたお声を掛けてください」




 食事を終え食後の紅茶を堪能していると、アリスが姿勢を正してこちらに向き直った。


「バーナード様、本日は特にご予定は入っておりませんが、いかがなさいますか?」


「あれ、今日はプリッシラさんが訪ねて来ることになっているはずだけど?」


 アリスがいつもと同じように僕のやりたいことを聞いてくるが、珍しいな。いつもなら僕の予定はしっかり把握しているはずなのだが……。


「プリッシラさんなら、昨日いらっしゃいましたよ? バーナード様がお会いになることができないようでしたので、おもてなしだけさせていただきました」


「……昨日?」


「はい、昨日いらっしゃいました」


 ……ああ、朝は朝でもさらに翌日の朝だったということか。全然ダメじゃないか。


 どうりで寝起きが少しだけ良かったわけだ。


 プリッシラさんには後できちんと謝っておかないといけないな。


「プリッシラさんに申し訳ないからこちらから会いに行くことにしようかな……って、そういえばプリッシラさんがどこに泊まっているか知らないな」


「プリッシラさんが泊まられている宿は昨日ご本人から伺っておりますが、本日は仕事の予定があるようです。こちらにはまた明日いらっしゃるようです」


 プリッシラさんは今日も仕事か。

 あの人はその容姿も優れているが、さらに歌も上手いから非常に人気が高い。そう本人が言っていたが確かに間違ってはいないようだ。


「それじゃあ今日は、明日来るプリッシラさんに謝罪するために何か買いに行こうか。アリスも一緒に行くかい?」


「かしこまりました。是非ご一緒させていただきます。それでは残りの家事も急いで終わらせてきますね」


 そう言うとアリスは嬉しそうに足早に部屋を出ていこうとする。


「ああ、それなら僕も手伝うよ。何かできそうな事はあるかい?」


「いえ、すぐに終わりますので、バーナード様はこちらでゆっくりしていてください」


 ……以前からそうだったが、最近は特に手伝わせてくれないな。


 先日盛大にお皿を割ってしまって以来、特に顕著になった気がする。


 仕方がないので、アリスのお言葉に甘えてゆっくりさせてもらうかな。


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