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森の異界

ようやく魔物が登場します。


ホムンクルスに睡眠が必要ない設定を削除してみました。

 広場から離れ森を進むと、再び開けた場所に出た。

 モノクルに表示されている現在位置は所在不定となっている。異界に入った影響だろうか?少なくとも認識できる位置にはいないようだ。


 一応、相対位置でマッピングをしているし方角はわかるので迷うようなことは無いとは思う。


 少し心配になったので、その辺りに生えている花の情報をセントラルから取得してみたが問題なく行うことができた。セントラルのサポートの有無は各所に影響するので、これは地味に嬉しい。


「そういえば、異界の攻略って言ってたけど、何をもってそれを証明すればいいのかな?」


「は!? そんなことも知らねぇのか?」


 ジークが呆れた顔でこちらを見ている。うん、もちろん知らないけど。え、何か常識的な雰囲気……。


「探索者証を貰っただろ? あれに記録するんだよ。それくらいは探索者になるなら常識だろうが。詳しいことはわかんねぇけどな、あとは……」


 へぇ、このカードにそんな仕組みがあったのか……、気にしてなかったけどこれも魔道具だったのか。少しカードを調べてみるか。


「セントラル、カードをスキャンして」


『かしこまりました』


 ――つまりはこういうことらしい。

 異界の魔物はそれぞれ固有の魔力特性を持っていて、討伐時にその魔力が体内から漏れだす。この魔力と自身の魔力が混ざりあい探索者証に記録されることで、対象の討伐証明が行えるようだ。


 また、階層のガーディアンの討伐証明を行うことで、探索者ランクも上がり探索者ギルドが探索者証に記録する。今回のトライアルではこの森の異界最深部のガーディアン討伐が攻略の証明となるわけだ。うん、わかりやすくていいね。


「この先の道程がどれくらいあるかわからないけど、説明の時に数日掛けてって言ってたし、そう簡単に攻略させてはくれなさそうだね」


「そうだな、一層だけなのかそれとも天獄塔みたいに何層かあるのか、襲ってくる魔物も簡単にいかなさそうだ。ん、なんだありゃ?」


 そう言うジークの視線の先では、他のパーティが大きな魔物と戦っていた。一見大きな熊にも見えるが、腕には羽が生えていて、その爪は熊よりも遥かに鋭利だ。顔もフクロウのような顔をしている。


「外で見るより一回りくらい大きい気がするけど、アウルベアだね」


「アウルベアは比較的獰猛な魔物なので見つかったらまず襲われます。探索者三人に対してアウルベア一体……、割りと善戦しているのではないでしょうか」


「うん、でもちょっとだけ状況は宜しくないね」


 彼らが戦っている場所から右奥の方にもう一体アウルベアが見える。アリスが説明してくれた通りで、このままだとあのパーティーはアウルベアに見つかり壊滅するのはまず間違いないだろう。


 僕としては彼らがどうなっても知ったことではないけど、周りにはそれ以外の魔物は見当たらないので、ジークの実力確認を兼ねて、奥のアウルベアと戦ってもいいかもしれない。


「どうしようか?」


「どうもこうも、このままじゃあいつらがやべぇだろ。奥のアウルベアを仕留めるぞ!」


 言うやいなや、ジークは剣を抜き放ちアウルベアに駆けていく。……ちょっと意外だ。


 ジークはバスタードソードを持ち正面切って戦うオーソドックスなスタイルのようだ。盾は持っていないが、籠手にはこだわりがあるように見受けられる。

 修練場で見た時は片手剣だった気がするけど、こっちが本来のスタイルなのかな。


「アリス、いらないとは思うけど一応サポートしてあげて」


「かしこまりました」


 アリスも武器を抜き放ち駆け、ジークの後を追い……抜いた。ジークがビックリしている。その勢いのまま少し右に回りこみ木々を踏み台にし蹴り飛び上がり、アウルベアの目を狙い突く。


 アウルベアは紙一重で避けるも、慌てて姿勢を崩したせいで反撃はできないようだ。一拍遅れたジークの切り上げが右腕を切り飛ばす。


 腕の羽が飛び散り、狂ったように雄叫びを上げ残った左手を闇雲に振り回しているが二人には届かない。その膂力(りょりょく)と大きな爪は脅威だが当たらなければどうということは無い。


 初手で片手を失い怒り狂ったアウルベアと冷静な二人では勝負に成らず、一方的な展開となった。


「うおおぉ!」


 数秒後にはジークの上段からの一閃を頭に受け、アウルベアはその巨体を地面に沈めた。


 ジークは対人よりも対魔物の時に本領を発揮するタイプかもしれないな。相手に合わせて片手持ち両手持ちと切り替えて戦うんだろう。


 その破壊力も対人では過剰だが、対魔物として考えれば申し分ない。


 ジークの戦い方を分析しながら、視線をずらすと先ほどの探索者達の方はまだ終わっていなかった。うーん、アウルベアは決して弱い魔物ではないが、三人がかりで考えれば時間をかけ過ぎだろう。


 ジークが助けたそうにしていたけど、彼らから救援要請もないので、これ以上の介入はさけることにした。


 それよりも素材の採取を行ってしまおう。アウルベアの羽は軽くて丈夫なので、アリスの装備品強化に使えるかもしれない。


「お、魔石があった。ラッキー」


 魔石のストックがあまりなかったので、地味に嬉しい。


「異界の魔物は必ず魔石を体内に持っているぜ」


 え、そうなの?知らなかったから喜んじゃったじゃないか。ちょっと恥ずかしい……。




「おい、バーナード。お前もたまには戦えよ。俺より強いんだから楽勝だろ」


 先ほどアウルベアと戦った後も数回アウルベアに遭遇したが、その度にアリスとジークが切り刻んでいたので、僕の出番は未だに無かったりする。


「まあ、二人でも問題なさそうだし僕の出番は後でいいよ。それにしてもちょっと数が多いね。通常アウルベアは何体も発生するものではないから、やはりこれは異界がトライアル参加者数に合わせて生み出した魔物ということなのかな」


「そういうことなんだろうな。外でこんなに魔物と頻繁に遭遇してたら誰も旅なんてできないぜ。まあ、俺達みたいな探索者からすりゃありがたい話だがな」


「日々の稼ぎが全然違ってくるからね。さて少し日が落ちてきたから、今日の探索は終わりにして野営の準備でもしようか」


 全員の同意を得られたので、近くの少し開けた場所で野営の準備をすることにした。


「場所はともかく食料の確保は大変そうだな。魔物が多くて動物が狩れねぇ。魔物の肉なんてとてもじゃねぇが食えねぇしな」


「食料の調達はそうでもないよ、今日の探索で果実やキノコを収穫したから食べるのには困らないはずだよ」


 バックパックから採取した食料を取り出して並べる。


「戦わずに何をやってんのかと思ったら、そんなことしてたのか。まあ、助かるぜ。でもこれ食べられるやつなのか?」


「ああ、その辺は大丈夫。食べられないものは採取していないよ」


 こういう時にセントラルの鑑定能力は非常に有用である。さすがに食料のことなんてわからないから、セントラルのサポート無しに採取できる気はしない。


「それじゃアリス、料理をお願い」


「バーナード!」


「な、何? ジーク、急に大声出されるとびっくりするんだけど」


「あ、アリスさんが食事を作るのか?」


「そうだけど何か問題が? 悪いけど僕の料理はおすすめできないよ?」


「あ、いや! 問題は全くないぜ。てか、俺も食べていいのか?」


「一応ジークはパーティメンバーだから構わないよ。飢え死にされても困るしって聞いてないな」


「あ、アリスさんの手料理か……」


 アリスの料理を食べられる喜びで、意識が別の世界に飛んでいるようだ。わかりやすいなジーク。


「バーナード様、お水はどうしましょうか?」


「んー、ここの近くに川は無さそうだから、今日のところはバッグの水を使おうか」


 バックパックから容器に入れた水を取り出し、アリスに手渡す。


「料理できる水まで用意してあんのか、そんなに重い荷物で大丈夫か?」


「まあ、今日のところは問題ないよ」


 先ほどから食材も水も、バックパックから出しているふりをしているが、実際はバックパック内のアイテムポーチから出していたりする。


 食料を採取した際にも、そのままアイテムポーチに入れているので、重さの心配は全くない。




 ――ジークの懸命な火おこしを尻目に、見られないように手持ちの魔道具で火を起こす。

 少し待ったが、アリスの料理は順調に完成した。


「こ、これがアリスさんの手料理か……うめえ!」


 感慨深げに体を震わせながら、料理を平らげていくジーク。さすがに野営の料理だから簡素なものだが、確かに美味しい。少々うるさい奴が一名いるが、非常に美味しい食事の時間を過ごすことができた。

 ジークに至っては未だに感動から帰ってこない。魂がどこかに飛んでいってしまったようだ。結界張るなら今のうちかな?


 自分のテントの中に入り、バックパックから結界の魔道具を取り出し設置する。今日だけで結構な数の魔石が手に入ったので、楽勝で黒字運用が可能だ。


 カートリッジを取り出し、その中に水を入れ錬成粉を溶かす。一度撹拌(かくはん)した後、砕いた魔石を溶かし込み再度撹拌(かくはん)を行うことで、魔燃料(マジック・フュエル)の作成が完了する。


 カートリッジをセットし魔道具を起動すると、小さい唸り音をあげ結界が展開される。基本的に魔道具は魔力を使って動作する。


 例えば認識阻害のネックレスは使用者の魔力。この結界は魔燃料。他にも空気中の魔力を集めるタイプもあったりする。


 ちなみにこの結界、見た目にはわからないが、結界を発動すると、結界を中心としてわりと広範囲にわたり効果があり、魔物は不安を感じ結界の近くに寄れなくなる。


 結界を張り終え、テントから外にでるとジークはまだ復活していなかった。


「今日の見張りは三交代にしますか」


 ジークの復活を待ち、見張りの件を切り出す。


「そうだな、異界では何が起こるかわからねぇから、休んでる時も何かあったら遠慮しないですぐに起こしてくれ」


 まあ、結界張ったから万が一も起きないと思うけど。ただ結界の魔道具に関しては秘密なので一応見張りを立てる振りはしておかないといけないだろう。ひとまずはジークとパーティを組んでる手前、見張りのローテーションを組むことを提案してみるともともとそのつもりだったようですんなりと受け入れた。


 くじ引きの結果、見張りの順番はアリス、僕、ジークの順番になった。


 アリスとの交代時は案の定すぐに起きられずに、アリスと交代できるまで結構な時間がかかってしまったのは言うまでもない。




 翌日の探索も特に問題なく進んだのだが、昼を過ぎた辺りで少し変化があった。これまではアウルベア一辺倒だったのが、敵の種類が増えジャイアントスパイダーやキラーバイパーとも遭遇する事になった。


 強さで言えば、アウルベアには及ばないが、数体がセットで遭遇するためジークとアリスの二人では少し手間取るようになった。今回は五体なのでそろそろ手伝った方がいいかな。


 アイテムポーチから武器を取り出し、近くのジャイアントスパイダーに駆け寄り一閃する。うん、久しぶりだけどやっぱりこれが一番しっくりくる。


 ジャイアントスパイダーは僕の一()ぎで足と胴体を切り飛ばされ絶命する。


「何だそりゃ? 槍……じゃないな」


「薙刀……静型魔薙刀月詠、僕の愛用武器だ」


「すまねぇ、こっちから聞いといてなんだが長くて覚えられねぇ」


 元となる静型薙刀を考案したのはセオドールなのだが、それを魔道具化したものがこの静型魔薙刀である。


 この薙刀は振り回す都合上、軍などの集団行動には向かないが、個人が使う対魔物の武器としては非常に優秀で間合いも狭い範囲から広い範囲までカバーしており、槍ほどではないが突きの威力も高く、特に切りの威力が高い。セオドール曰く遠い東の国で使われているとの事だったが、そういえば世界中回ったつもりだったけど結局見つからなかったんだっけ。


 素材には鉄や鋼ではなく、妖精鉱を使用している。この妖精鉱はミスリルやオリハルコンと並んで有名な鉱物で、加工にはドワーフの秘術と近代錬金術が使われている。また魔道具化した際にいくつかのギミックを付けたのだが、それはまた別の機会に説明する事にしよう。


 一体目を()いだ勢いで、隣のジャイアントスパイダーの反撃を受け流し、そのまま切り飛ばす。


「とんでもねぇ切れ味だな」


「切る事を重視して作られているからね。こいつでドラゴンの鱗だって切れるよ」


「ド、ドラゴンの鱗!? あー、でもバーナードならやりかねねぇな」


 別に大げさに言っているわけではなく、本当にドラゴンの鱗くらいならスパッと切れる。


 賢者の石の素材にはドラゴンの鱗も使われている。そのドラゴンも普通のドラゴンではなく四神である青竜の鱗を必要としていたりする。


 あの時は青竜に至るまでの道のりもそうだが、もちろん青竜との戦いも魔道具満載でも本気で死にかけた。鱗を取ったらさっさと逃げ帰ったが最後まで戦っていたら間違いなく死んでいただろう。


 さすがに二度と戦いたいとは思わないが、今ならもう少し余裕をもって戦えたりするのだろうか?


 ああ、いけないな。ちゃんと目の前の戦いに集中しよう。




 最後の一匹を危なげなく始末し終えた僕たちは再び探索を始めた。


 あれ以降も幾度か魔物を討伐していたが、辺りが少し暗くなり始めた。そろそろ野営の準備をしないといけない時間かな。


 そう思い次の野営場所を探そうと思っていると木々が少なくなってきたところで、一段と広く開けた場所に出たが、そこには唯でさえ大きいアウルベアを更に大きくした魔物が強い殺気をまといつつこちらを見据えていた。


 これまでの魔物とは雰囲気からして大きく違う。あれがガーディアンだろうか?

戦闘シーン難しいですね。すぐに終わっちゃいます。^_^;

ガーディアン戦は頑張ります!

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