仲間の成長(二)
「こいつで終わりだ、くらいやがれ!」
ジークが必殺の気合を込めて、両手に構えた剣を上段から振りかぶると、黒い刀身から赤く光る一撃が放たれた。
その一撃は文字通り必殺の威力を発揮し、目の前に立ちはだかる二体のレアアース・エレメンタルを真っ二つに切り裂く。
「エリーシャ!」
「任せて、風の精霊よ力を貸して! サイクロン」
ジークに合わせて、エリーシャは腰から取り出した魔道具を起動させながら精霊魔術を行使した。
すると、レアアース・エレメンタルの周りに羽のついた刃物が展開され、ジークの一撃でむき出しになったコアをズタズタに切り刻んでいく。
見通しの悪い岩石地帯だが音の反響は大きいようで、レアアース・エレメンタルの硬い身体を切り刻む際に発生する掘削音を響かせた。
コアが破壊されたことで崩れやすくなった事もあり、エリーシャが作り出した小型の竜巻が収まる頃には、レアアース・エレメンタルの身体は跡形もなくなっていた。
あ、これ素材の採取出来なくないか?
少しの間、素材の採取が出来ないかと試行錯誤していた二人だったが、流石にどうにもならないようで、諦めてこちらに戻ってきた。
「二人共お疲れ様」
「おう。でもよ、なんだか最後の一撃以外は一瞬で終わっちまった気がするぜ」
「いや、そんなことはないよ。二人とも堅実に魔物と戦えていたよ」
それに時間はかかっていたが、決して苦戦していたわけではない。
ジークはエリーシャが精霊魔術の集中をしやすいように注意しながら戦っていた。
その上で、二体まとめて両断できる位置取りを取るためにはどうしても時間がかってしまうのは仕方がない。
集中したぶん早く感じるのだろうか?
「それにしても、エリーシャの最後の一撃は凄かったね。まさかあんなに凄い威力になるとは思わなかったよ」
「ああ、あれはすげぇな。間違って巻き込まれないようにしなきゃな」
「バーナード君にあの魔道具を渡されて提案を受けた時はびっくりしたけど、戦術に魔道具を積極的に取り込んでいくスタイルは、まさにバーナード君らしい考えよね」
エリーシャが今回披露した魔道具と精霊魔術の連携は、錬金術と魔術の新しい関係を生み出せる事も示しているように思える。
使い方次第ではより大きな相乗効果を生むことも十分に可能だろう。
「僕も提案しておいてなんだけど、まさかあんなに上手く行くとは思っていなかったよ。さしずめ複合魔術ブレードサイクロンってところかな」
「え、その名前はストレートすぎて微妙かも……、名前はまた今度にしない?」
え!? そ、そうかな?
皆の反応を見ると、賛同してくれているのはジークだけで、女性陣はあまりその名称は気に入ってくれなかったようだ。
「ま、まあ、名前は置いておくとして、今後も色々試せると良いかな」
時間はかかるかもしれないが、錬金術と魔術や精霊魔術との新しい関係を模索していこう。
……そうすればセオドールのような悲劇を新たに生み出すようなこともなくなるかもしれない。
とりあえず、これで全員が一通りレアアース・エレメンタルと戦ったことになる。
全員の戦い方を見た感じでは、やはりマリナさんが一歩遅れている印象を受ける。
「……意味深な目でこっちを見られると、は、反応に困るんだけど」
いや、そういう目ではないんだが。それよりも――
「これで全員が戦ったわけだけど、マリナさんは何か気づくことはありましたか?」
「え、貴方は戦ってないじゃない。……でも、皆の様子を見た感じでは相当強いんでしょうね」
「あ、そう言われてみれば、僕の番を忘れてました。ま、まあでも今日はもう結構時間も遅くなってしまったので、また次回にでも――」
「いえ、良いわ。多分私がこの中で一番弱いっていうことは十分にわかったから」
マリナさんは皆の戦い方を見て、少し自信を無くしてしまっているようだ。言葉の端々にそれが現れてしまっている。
「マリナさんも十分に強いとは思いますよ。ただ――」
「力で受け止める戦い方では、この先の階層で限界が来る、でしょ?」
……そう。
これまでに戦った下層のガーディアンもそうだが、階層を重ねれば重ねるほど魔物の攻撃力は、より強くなってきている。
それに関してはマリナさんも理解してくれているということだろう。
「マリナさんにはジークの戦い方を参考にして、避けたり受け流したりする戦い方にコンバートしていって欲しいです」
「そうね、この中で一番スタイルが近いのは先ほどの戦い方を見ても明らかね」
以前のジークはどうしても真正面から敵の攻撃を受け止めてしまう癖があった。
それが最近になってようやく、きちんと敵の攻撃を受け流す事ができるようになったのだ。
マリナさんの成長は今後に期待するとして、マリナさんにはもう一点言っておかないといけない。
「そういえば言い忘れてました。知っているかどうかわからないですけどあの光る剣、実はあれが本来の使い方では無いんですよ」
「え、どういうこと!?」
マリナさんの戸惑いが大きくなった所を見ると知らなかったようだ。
「あの剣には合わせて使うための魔道具があったはずですが……、手持ちの魔道具にそういう用途のものはありませんでしたか?」
「……ごめんなさい。少なくとも私が引き継いだ魔道具の中には、そのような説明を受けた物は無かったわ」
……もしかしたら失われてしまった可能性が高いというわけか。
仕方がないので、モノクル越しに見えるメニューを操作し、セオドールの研究資料に目を通しはじめる。
「え、何? どうしたの?」
「ああ、ごめん。対になる魔道具はまた調べておくよ。さてと、今日はそろそろ戻ろうか」
「よくわからないけど、急に手を動かし始めるからびっくりしちゃったじゃない」
そういえばマリナさんの前でメニュー操作したのは初めてだったか。
今回は第十八層のガーディアンを倒して攻略したわけではないので、帰りには入り口のポータルを使用して戻ることになる。
幸いポータルに戻るまで新たに魔物と遭遇することは無かったので、さほど時間も掛からずに戻ってくることが出来た。
当然の事ながら転送後に見える景色は広場ではなく、一階のフロアになる。
「ふぅ、無事に戻ってこれたわね。それにしても、一人で探索していた時と比べて、安心度も成果も比べ物にならないわね」
「それはそうですよ。これまでのマリナさんの単独探索がおかしかっただけです。これまでにグレゴワール司祭も何か対策を講じようとしなかったんですか?」
僕の言葉を聞いてから、マリナさんは少し難しい顔をしてグレゴワールとのやり取りを思い出そうとしているようだ。
「……無いわね。初めの頃にグレゴワール様にお願いしたことがあるんだけど、神託を理由に却下されたわ」
……神託ね。
なんとなく想像は付くが、恐らく神託で錬金術師とパーティーを組むことになってた位だから、単独探索でも問題が発生することは無いと踏んでいたのではないだろうか?
そういえば、先日マリナさんに確認したのだが、結局のところマリナさんも神託の内容を聞かされていないらしく、グレゴワールから聞いた以上の情報は得ることが出来なかった。
まあ、神託がどうあれ、僕は僕がやりたいと思ったことを続けていくつもりなので、神託の内容にはあまり興味は無かったりする。
神託に関して僕が興味あるのは、いつか会える予定のクローツをどうやればぶん殴ってやることができるかということくらいだろうか。
閑話休題、ひとまず整理を終え一階の扉から外に出る。
すでに日が暮れかかっており、広場は探索を終えた多くの探索者で賑わっていた。
今回はジークに、漫画などでよくあるサブキャラの行動が一コマで終わる的な演出をしてみました。
ちょっと書いてみたかったので、もし違和感があったらすみません。




