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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
神託編

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天獄塔・第十五層(一)

活動報告には書いたのですが、仕事の都合で執筆が遅れてしまいました。

 塔の広場につくと、既に様々な露店が開かれており、いつものように非常に活気づいていた。


「相変わらず早い人は早いなぁ」


「基本的に場所は早い者勝ちですからね」


 実はアリスの言うように、露店を開く場所は基本的に早い者勝ちとなっている。

 その為、露店商売に力を入れているパーティー等では、条件の良い場所を確保できた際には、交代制で場所を確保し続けるケースもあったりする。


 ……流石にそこまで行くと探索者としては本末転倒な気もするが、それぞれ抱えている事情も違うし、露店商売込みで生計を立てているパーティーも、わりと存在しているくらいだったりする。


「それじゃあ、ボクも露店の準備するね」


「今日から数日頑張ってね。僕達もなるべく早く戻れるように頑張るよ」


「お兄ちゃん、ボクいつも頑張ってるよ?」


「うん、わかってるよ。今回もがんばってねって意味だから、……ってこのやり取り何回目?」


「うーん、忘れた」


 ブリジットの頭を撫でながら、何回目になるかわからないお約束のやり取りをする。……絶対わざとだよな。まあ良いけど。


 しばらく撫でているとブリジットも満足したのか、いつもの場所に向かって元気よく走っていった。


 先ほど露店の場所は早い者勝ちと言ったが、実は特例が存在する。それは露店責任者の力関係だ。

 似たり寄ったりの実力差なら早い者勝ちとなるが、この力関係が大きく異なる場合はこの限りではない。


 例えばダニスさんが良い例だろう。あの人はどの時間に露店を開くとしても必ず、出口のポータル付近を選ぶ。

 時折、その暗黙ルールを知らない探索者が、空いていると勘違いして露店を開いてしまう事がある。僕のことだけど。


 そのときは場所を移動するまでは、見事なまでに人っ子一人近づいて来なかった。つまり売上ゼロだ。

 しばらく経ってから親切な探索者が教えてくれたのだが、あの時は本当に驚いたものだ。


 ブリジットの露店、というか僕の露店も僕の探索層が上がるに連れて場所が移動し固定化されていった。

 最近ではなかなか上等な場所が確保できているので、ブリジットのキャラクターも相まって人気が上がってきたようだ。


「まだ集合時間には少し早いので、露店設営の手伝いをしてきますね」


 そう言うとアリスもブリジットの後を追って、設営の手伝いに向かった。そうだな、今日は良いことがあったし、時間も早いことだから久しぶりに手伝うか。




「おう、待たせたな。って、バーナード何やってんだ?」


「時間が少し早かったから、待っている間だけ露店の手伝いをしていたんだよ」


「珍しいな。最近は時間があってもあまり手伝って無かったじゃねぇか。何か良い事でもあったのか?」


 ……失礼な、僕だってたまには手伝ったりするぞ。あれ? たまにとか言っている時点でダメな気がするな……。


「そういえば、エリーシャは?」


「私もいるわよ。すぐ後ろにいるんだから見えてるでしょ。唐突に話題を変えても効果ないわよ?」


 バレてーら。ひとまず知らないふりをして押し通そう。


「それじゃあ、皆揃ったみたいだね。アリス、そろそろ切り上げて中に入るよ?」


「あ、はい、かしこまりました。それじゃあブリジットがんばってね」


「はーい」




 今回の探索目標は第十五層の基礎探索と、月虹花の群生地における月虹花の採取だ。

 一応シェリルさんからは依頼という形で月虹花の採取を引き受けているので、優先度はそれなりに高い。

 とはいえ、採取の傍らであわよくば一発攻略も視野には入れていたりもする。まあ、そんなに都合良くはいかないだろうけど。


 ポータルを抜けて第十五層に入る。


「本当にこんな所に月虹花が群生している場所なんてあんのか?」


 ジークのつぶやきが、もっともらしく聞こえる。

 まあ、それもそうだろう。なんといっても第十五層に入って初めて目にはいるのが、見渡すかぎり果てなく続く砂漠なのだから。


「シェリルさんに上げられた報告資料によると、ここから南に進んだ辺りにオアシスがあるらしい。月虹花の群生地はその周辺に見つかったみたいだ」


 アイテムポーチから、毎度お世話になっている未踏地形探索魔道具を取り出し起動させる。


「さてと、地図情報も集め始めたことだし、ひとまず南に向かおうか」




「なあバーナード、一つ確認していいか?」


 しばらく歩いていると、唐突にジークが話を始めた。深刻そうな顔をしているがどうしたのだろうか? あまりに深刻そうに見えるからエリーシャも心配そうにジークの顔を見つめている。


「ん、どうしたの?」


「ああ、いや。ここは間違いなく砂漠だよな?」


「うん、僕の見た限りでも砂漠で間違いないね」


 ……これが砂漠じゃなかったら何だというのだろうか?何を当たり前の事を聞いてるんだ?


「なんで俺達は汗一つかいていねぇんだ?」


「え、ジークも知ってるよね? 身に着けている防具に温度調節機能を付加してあるって」


「……あの温度調節機能ってそこまで極端な性能だったのな。ちょっと過小評価してたわ」


「本当の事を言うと昨日の強化時に追加したんだけどね。ほら、異界産の素材で強化すると効果が上がるから」


 僕の一言で、アリス以外の皆の時間が凍りついたように止まる。


「……昨日はバーナード君に会った記憶が無いんだけど、私の勘違いかしら?」


「そうだね、会ってないね」


「ば、バーナード君、流石に勝手に人の家に忍びこむのはどうかと思うのだけど……」


 ……いや、流石にそんな犯罪じみた行為はしていないぞ。何のために前回……ってあれ?


「ほら、皆に前回の探索素材で作った、装備収納用のストレージ渡したよね?」


「ああ、装備とかしまうには最適なんで、きちんと使わせてもらってるぜ」


「説明するの忘れてたんだけど、実はあのストレージに入れておくと、うちのストレージから繋いで取り出せるんだ」


「取り出せる……だと?」


 その言葉でジークの顔色が明らかに悪くなる。

顔面蒼白とまではいかないが、今にも倒れそうだ。


「ば、バーナード? 俺のストレージは装備以外見てないよな?」


「ああ、あの――」


「わー! わー! ストップストップ!」


「……冗談だよ。大丈夫、装備指定で取り出すようにしているし、中に何が入っているかは確認していないから安心して良いよ」


 実は装備しか入っていないと思って、最初は適当に取り出したら、何やらポエムみたいなものが出てきたから慌ててしまったんだ。……言わないけど。

 もちろん中身を読んだりはしていないぞ。




 それから少し歩いていたら、遠くの方の地面が何やら蠢いているのが見えた。魔物かな? この距離であれだけ動いて見えるという事は、結構大物かも知れない。


「前方に魔物らしき物を発見しました。本体は見えませんが、地面の具合からすると十メートルくらいの大きさが予想されます」


 アリスの警告で皆が警戒を始めた。


 魔物もこちらを発見したのだろう。地面の隆起がこちらに向かって動く。凄いスピードだ!


「すぐに来るぞ! 皆、散開して突撃を回避しながら取り囲んで!」


 皆が弾けるように散開すると、魔物は目標を定めたのだろうか、エリーシャに向かって行く。


「エリーシャ、ひとまず空に飛んで避けろ!」


「大丈夫わかってるわ、風の精霊よ力を貸して!」


 元から飛んで避けるつもりだったようで、ジークの警告に合わせ、エリーシャは助走を利用して素早く飛び立った。

 すると直後魔物が地面から飛び出した。でかい!? エリーシャは間一髪、ギリギリで魔物の突撃を回避できたようだ。エリーシャの速度が無かったら避けられなかったかもしれない。


《サンド・ワイバーン》


 モノクル越しに表示された名前を見る。……翼竜か、流石に第十五層ともなると、ガーディアン以外の魔物も強力になってくるな。

 そろそろガーディアンにドラゴンが出てきてもおかしくないかもしれないな。


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