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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
近代錬金術復活編

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情報共有

 宿に帰ると皆の思っていた通り、ブリジットがお腹をすかせて待っていた。


 まだ露店を任せていないので特にやることは無いのだが、驚く無かれ自主的に勉強をしていたらしい。


「ブリジットは偉いね、こんな時間まで勉強していたなんて」


「うん、美味しい食べ方の勉強をいっぱいしたよ!」


 ……何を食べるって?いや、多分ここは突っ込んではいけないところだ。そう思いながらアリス達を見ると、目で訴えていた。やはり同じ意見だったのだろう。


「皆おなかすいてるよね。今日は第二層の偵察で何匹か討伐したシャドウ・エッジ・グレムリンの肉があるから、皆で試食してみようよ」


「やったぁ、お兄ちゃん良い仕事してるねぇ」


「アリス疲れているところ悪いんだけど、こいつの調理をお願いしても良いかな?」


「いえ、問題ありません。それでは少々時間をいただきますので待っていていただけますか? 下で調理場を借りて作ってきます」


「うん、すまないね。 第二層の話もしたいから皆も一緒にどうかな?」


「おう、料理も情報も楽しみにしてるぜ!」


「それじゃあ、私もお邪魔させてもらおうかしら。アリスちゃんの料理は美味しいからいつでも歓迎よ」




 アリスの準備もそれなりに時間がかかりそうだったので、皆で食べるには部屋では狭すぎると思い、宿の人にお願いして食事用に一部屋用意してもらうことにした。


 流石は探索者用の宿といったところだろう。こういったことには慣れているようで、部屋の用意もすぐに終わって、ゆっくり食事を待つことができた。

 そうこうしているうちにアリスの準備も終わったようで、廊下の方から非常に食欲をそそる匂いがしてくる。


「おおぉ、料理だー。ボクもうお腹が空いちゃって死ぬかと思ったよ」


「確かにいっぱい待たせちゃったね。それじゃあ皆で食べようか」




「お兄ちゃん、ボクお腹いっぱいで疲れちゃったから先に部屋に戻ってるね。ふわぁ……」


「ああ、ごめんブリジット。先に戻ってて構わないよ。今日はお疲れ様」


 相も変わらず数人分の食事をぺろりと平らげたブリジットだったが、勉強し過ぎた為か疲労が溜まっているようで、満腹感も相まって眠くなってしまったようだ。


 ――ブリジットも部屋に戻ったので意識を切り替えて、今日調べた第二層の情報を皆と共有する為に、未踏地形探索魔道具を起動して地図を表示させる。


 全員が食い入るように地図を眺めながら、思い思いの感想を述べていく。


「それが第二層の地図ってことか、第一層みたいに岩山も川も無いみたいだな」


「そうですね、割りと平坦な地形だと思います」


「あら、この空白地帯はなにかしら? 故障でもしたの?」


「ああ、そこはよくわからないんだけど、何かしら遮蔽物があって中に入れなかったみたいなんだ。だから明日からはそこの探索に時間を使いたいんだ」


 今日の探索では時間が足りなかったため、空白地帯は残念ながら見に行くこともできなかった。まあ、それでも今日の目的は十分に果たせてはいるので、何ら問題はない。


 皆もこの空白地帯の事は気になったようで、特に反対意見が出ることは無かった。


 あ、そうそう。皆に重要な情報を伝え忘れてた。


「そういえば、いい忘れてたけど、第二層は朝に僕が入ってから夕方に出るまでの間、ずっと夜のままだったよ。もしかしたらずっと夜のままなのかもしれない」


「ずっと夜なのは結構大変ね。異界らしいといえばらしいけど。ジークは平気?」


「俺は別に夜は怖くねぇぞ」


「え、夜は?」


「夜もだ!」


「ああ、一応例の仮面のテストを第二層で行おうと思ってるから、楽しみにしててね。あと、明日は出発時間が遅くなるかもしれない」


 ジーク、その何とも言えない表情はやめてくれないか?




 翌日、皆の想定通り昼頃から行動を開始する。ブリジットを造ってから、さらに起きていられる時間が増えたので、次にいつ寝る必要があるのかわかりづらくなってきた……。


 天獄塔の広場についた所で、シェリルさんとばったり顔を合わせたのだが、何やらひどく疲れた様子で僕を睨んでいた。


「昨日はあの後、大変だったんだからね。彼ら全員から御礼の言葉を貰うだけでも大変だったのに、そのまま雪崩れ込むように飲み会が始まっちゃったのよ……」


 シェリルさんは話しながら昨日の事を思い出したようで、げんなりしてしまっていた。ダニスさん達はいったいどれだけ派手に騒いだのだろうか……。ニコラスさんも強壮万能薬で治ったとはいえ、一応病み上がりなんだけどなぁ。


「……それは災難でしたね」


「もう……、他人ごとみたいに言ってくれちゃって。貴方が私を生贄にしたんでしょう……、まあいいわ。今回のことは貸し一つだからね」


「わかってますよ。また今度、美味しい魔物の肉持って近代錬金術のお話をしにいきますから」


「そう言ってもらえると、私も頑張ったかいがあったというものだわ」


 その言葉でシェリルさんも満足したようで、ようやく機嫌を直してくれた。


 別に頑張ってくれなくても美味しい魔物の肉持って近代錬金術のお話をしに行っても良いんだけどね。アリスも多分喜ぶだろうし。


 ……うん、言わないでおこう。


「あ、そうそう。次に伺うときはもう一人連れて行ってもいいですか?」


 ブリジットが広場で露店商売する際に、トラブルに巻き込まれにくくするために、シェリルさんと面識を作っておいたほうが良さそうだからね。


「別に構わないけど……、ここにはいない人?」


「今日は連れてきていないです。先日造ったホムンクルスです。名前はブリジットと言います。いい子ですよ」


 シェリルさんはキョロキョロと周りを見回しているので、ブリジットを軽めに紹介してみた。


「そういうことなら別に今夜とかでも大丈夫よ。って、ところで今日も探索?」


「はい、これから第二層を探索してくる予定です。野営もする予定なので戻りはいつになるかわかりません」


「そっか、それじゃあ約束はまた後日にしたほうが良さそうね。貴方達なら大丈夫だと思うけど一応気をつけてね」


 シェリルさんは主にアリスの方を向きながら心配してくれているようだ。


「はい、それじゃあ行ってきます」




 シェリルさんと別れた後、そのまま広場を抜けて天獄塔の中に入る。

 そういえば、今日もダニスさんとは会わなかったな。まあ昨日はかなり派手に騒いだみたいだし、今頃寝ているのかもしれないな。


 受付を済ませてからポータルに向かう。


「一応説明しておくね。ポータルは行き先をイメージして入れば、行けるところに接続されるから。間違えても第一層をイメージしないようにね」


「う、そんなこと言われちまうと、うっかり想像しちまいそうだ」


 ああ、余計なこと言っちゃったかな、ジークが緊張してしまっている。


「まあ、間違えたら入り直せばいいだけから、慌てなくても良いよ。こういうのは慣れだからね」


「そうよ、もう少し落ち着きなさいな」


「よし、それじゃあ皆準備はいいね? ポータルに入るよ」




 ポータルを抜けた先は前回同様、日の差していない暗い世界が広がっていた。一応警戒しているが、周りにはシャドウ・エッジ・グレムリン達もいないようだ。

 あれに急に襲われたら厄介だから、いきなり遭遇しなくてよかった。


 ふと、気になったので後ろを見ると、ジークは無事に第二層に来れたようだ。エリーシャもいるし……あれ、アリスがいない?


 首を傾げていると、一拍置いて少し慌てた様子でアリスがポータルから出てきた……。


「アリス?」


「……だ、第一層に入ってしまいました」


「くす、アリスもそういう失敗するんだね。ちょっと安心したよ」


「す、すみません」


 顔を真赤にしながら恥ずかしそうに話すアリスなんてそうそう見れるものじゃないな。ちょっと得をした気がする。


なかなかブリジットが働き始めない……。

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