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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
近代錬金術復活編

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ブリジット

 ――翌日になり正午を少し過ぎた頃、部屋に設置してあるフラスコの状態は最終段階を迎えていた。

 アリスの時とは違いフラスコの透明度を上げているため、その中身はよく見えるようになっており、フラスコの中には紫色の髪の毛をした女の子が頭まで浸かっている。


 外見は十五歳くらいで、少し活発そうな顔つきをしている。髪の毛は肩の辺りの長さで見ての通りの紫色。少しくせっ毛かな?

 アリスの時も思ったのだが、どうもホムンクルスは美人が生まれる可能性が高いのかもしれない。

 とはいえサンプルとなるのがアリスとこの子だけなので、その仮説があっているのかどうかすらわからないが……。


 胸に関してはアリスとは対照的に小ぶりだが形の良さそうな……って何を見つめているんだ僕は……。

 とにかくあとは培養液を抜けば目が覚める予定だ。

 アリスの時は誰かが入ってこないかドキドキしながら作業をしていたが、今は誰も入ってくる心配は無いので安心して作業を行うことができる。


 前回同様、フラスコの下部にあるコックをひねり、培養液を別に用意しておいた器に排出する。

 少しずつ培養液が抜かれていき、最終的にフラスコ内には女の子だけが座っている。


「おはよう、そろそろ起きる時間だよ……」


 僕の声に反応し少し身動ぎすると、目をこすりながら一度大きなあくびをしてから、その大きな目を少し開け。

 辺りを少し見渡した後、その視線が僕の方に向くと紫色の宝石のような瞳が僕の目を覗きこむ。


 そして……その瞳をゆっくりと閉じた――。

 まさか、失敗したのか!?


「……zzz」


「こら、寝るんじゃない」


「ほぇ? もう食べられないよ……」


 何をだ?

 何だかアリスの時とはぜんぜん違うな……。

 アリスが特殊なのかこの子が特殊なのか?


「と、とにかく起きてこの服を着てくれないか?」


 僕の言葉に再び反応し、紫の髪の女の子は自身の身体を見た後に、僕に何やら含みのある顔を向けて口を開いた。


「……お父さんのスケベ」


 ……起きて最初の言葉がそれか。


「いいから服を着なさい。僕のことはお父さん以外の呼び方にして欲しいな。あと君の名前は……そうだなぁ、ブ……ブリジットにしよう」


「ブブリジット? 良い名前だね」


「いや、ブリジットだから」


「おお、もっといい名前だね。お兄ちゃんありがと」


「お兄……、はぁ、まあそれでいいか。じゃあ僕のことはお兄ちゃんって呼んでね」


「うん、分かった!」


 ブリジットは元気よく返事をすると、ようやく服を着てくれた。

 サイズはピッタリのようで、デザインが気に入ったのか鏡の前でくるくると身体を回している。

 お兄ちゃんと呼ばれたせいか多少の保護欲が出てくるなぁ。ブリジットは店番をこなせそうだろうか?

 今のところブリジットを探索者にする予定は無いので、基本的には広場で店番をすることになるのだが……。


「ねぇ、お兄ちゃん?」


 ふと困ったような顔で話しかけてくる。見たところサイズはぴったりだし似合っていると思うが、なにか問題があったかな?


「ん、どうした?」


「……ボクお腹すいた」


「……さっき、もう食べられないよ――とか言ってなかった?」


 ブリジットは首をかしげながら頭の上にハテナマークを浮かべている……、あ、そうかあれは寝言だ。


「ボクお腹すいた」


「ああ、うん分かった分かった。それじゃあ、今から昼食にしようか」


「やったぁ、お兄ちゃん大好き!」




 というわけで、部屋のテーブルにはアリスが作りおきをしてくれた料理が並べられている。

 ブリジットが目覚めることは事前に言っておいたので、ちゃんと二人分用意をしてくれていたようだ。

 僕も昼食を食べ忘れていたので丁度良かったかな。


「ちょっと飲み物用意してくるから、先に食べ始めていいよ。おなかすいてるでしょ?」


「うん、いただきまーす!」


 ブリジットは元気な子だな。場が華やかになるというか明るくなるというか、これは店番にあっているかもしれない。

 そう思いながら、果実のジュースを作り終わり振り向くと、すでにほとんどの食べ物がお皿の上から消え去っていた。

 あれ、料理って二人分なかったか?


「ブリジット、料理って二人分なかったか?」


「うん、まだ少し足りないけど美味しかったよ!」


 ……今夜から食費が激増しそうだなぁ。

 まあ、仕方がないか……、ひとまずアイテムポーチから他の食材を取り出してブリジットに食べさせることにした。




「というわけで、明日以降の食費を稼ぎに行ってくるよ」


「稼ぐって何処にだよ?」


 現在の時間は夕刻、鍛錬が終わり皆が戻ってきたのでブリジットを紹介しがてら、明日の予定を皆に告げることにしたのだが、ジークの機嫌があまりよろしくない。


「ちょっと第二層を下見がてら、食費を稼いでこようかなぁって思ってね」


「俺達は……足手まといってことか?」


 自分自身が発した言葉でジークの眉間の皺が更に増える。

 ……ああ、そういうことか。


「いや、そんなつもりは無いよ。明日は食費を稼ぎながら第二層の下見と地図作りかな」


「……そうか、だったら良いんだ。すまねぇな変なこと勘ぐっちまってよ」


 ジークは現状に少なからず焦りがあるのだろう。

 バツが悪そうにしているので、後でフォローはしておかなくちゃな。


「でも、この小さな子が大人よりもよく食べると言うことなのかしら?」


「昼には軽く大人の四、五人分は平らげていたね」


 エリーシャもブリジットの食欲に少し驚いているようだ。

 まあ、仕方がないかまさかこの体にそんな量が入るなんて、実際に見ないことには誰も信じられないだろう。




 話が終わったので、先ほどのジークのフォローをするために、一つの魔道具をテーブルの上に置く。


「ジークにはちゃんと期待してるよ。昨日のデザインは自信作だったんだけど評判が悪かったみたいだから、少し直してみたよ」


「……いや、余計に悪くなってんじゃねぇか?」


 えぇ~、これでも気に入らないのか……、仮面といえばこれくらいじゃないと足りないじゃないか。

 頑張って作ったデザインが何回も否定されると、流石にちょっとムカッとくるな……。


「じゃあ嫌なら使わなくていいよ。僕は仮面のデザインはこれ以上は譲れないよ」


「い、いや流石にこれは勘弁してくれねぇか? ま、前ので良いんじゃねぇかな」


「前の《で》?」


「いや、前の《が》良いなぁ……、な、なあエリーシャはどう思う?」


「そ、そうね私は前回のデザイン《が》良いと思うわ」


「はい、私も前のデザイン《が》良いと思います」


 なんだか皆の反応がわざとらしい気がする……。

 いつも皆こんな表情してたかな?


「お兄ちゃん、これ格好悪いよ?」


 そんな、バカな……。皆センスがおかしいんじゃないか?


「じゃ、じゃあ、もとに戻すよ。少し時間が掛かるから明日改めて渡すから」


「お、おう! 頼んだぜ!」


 お、ちょっと期待されてるかな?

 やる気が出てきたぞ。


「もしかして、前のに戻しても格好悪――むぐっ」


「私はブリジットに色々説明してきますね」


「うん、それが良いと思うわ。ブリジットちゃん、アリスちゃんに色々説明してもらうといいわ」


 アリスはブリジットを引きずるように部屋から出て行った。

 ……色々って何?




 翌日、僕は天獄塔の異界・第二層の下見のため広場に来ていた。

 今日も変わらずいい天気で広場はいつものように盛況に見える。


 あれ?今日はダニスさんいないんだな、てっきりいつもの感じで話し掛けられると思ったのだけど。

 まあ良いか、ダニスさんも探索者なんだから忙しい時もあるだろう。

 特に用事があるわけじゃないし、今日ここに来た目的にはまったく関係ない。


 ……さてと、第二層か。一体どんなところになっているのかな?

 異界は何が起こるかわからないから、一応気を引き締めて掛からないと……。

 一つ大きく深呼吸をしてから天獄塔の入り口を見据える。


 さあ、行こうか。

新キャラ、ボクっ子ブリジットは天獄塔には入らない予定です。


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