探索者
第一層のクリアはまだ先の事になると思っていたので、想定していたよりも早かったが今回第一層のガーディアンを討伐したことにより、晴れてランク2に上がり第二層の探索が可能となる。
それにしても僕達が戦っている間も、その後もここに近づいてくる探索者がいなかった。
ポイズン・グリフォンは毒を持っているために、挑戦するには抵抗感が強いのかもしれない。
道中で会った友好的な雰囲気からすれば、探索者同士の情報交換で危険情報が共有されていてもおかしくはない。
この第一層で狩りをしているだけでも、魔物の素材や採取する素材の売値は意外と高い。
危険情報を共有し、安全マージンをとっても十分な生活できるのであれば、なにも無理に挑戦をする必要は無いということなのだろう。
誰しもが僕のように最上階を目指しているわけではないのだから、当然と言えば当然か……。
閑話休題、エリーシャも落ち着いたようなので、そろそろ移動をしないといけない頃だろう。
ポイズン・グリフォンが座っていた岩を見ると隙間から光が漏れているのが見て取れる。
少し狭いようだがあの隙間から中に入っていけるようだが、進んだ先に上層へのポータルがあるのだろうか?
「……そろそろ時間だから先に進もうか。皆は大丈夫かい?」
「ええ、迷惑かけちゃったわね。私ならもう大丈夫よ」
「だから迷惑じゃねぇって言ってんだろ」
「そうですよ」
「ふふ、ありがとう」
エリーシャは先程の怪我を気にしていたが、アリスやジークとのやりとりで普段の調子に戻ったようだ。
さてそれじゃあ先に行きますか。
岩の隙間から中に入るとすぐに階段になっており、階段はそのまま地下に続いているようだ。
つまりは洞窟のようになっているのだが、幸い階段も淡く発光しており暗くはなっていなかった……。
「ジーク良かったわね暗くなくて」
「ほっとけ、俺は別に怖くねえんだからな」
「そう言えばまだ暗闇対策の魔道具作ってなかったな。まあ、要らないなら良いか……」
なんか、すっごい顔でジークに睨まれた。だったら強がりなんかしなければ良いのに……。
ああ、そうだ一応何かに使えるかもしれないから光っている壁を少し削って回収しておこうかな。
アイテムポーチからピックを取り出し壁を少し削ってみると、削ったところの中もまだ光っているようだった。
触ってみても暑くないところを見ると、ちょっと特殊な素材なのかもしれない。
モノクルには《ライトストーン》と表示されているので、光の魔法現象か光の精霊に関するものなのかな?
「バーナード、何やってんだ?」
「ああ、いや何かに使えるかもしれないなぁと思ってね。一応研究用に採取だけはしておこうと思って……」
「ああ、それでそんなに活き活きとしてんのか。ホントにわかりやすいなお前は」
……はて、何か顔に出ていましたか?
途中で素材を採取しながら階段を降りたその先は少し広い部屋になっており、その部屋の中央でポータルが光を放っていた。
あれが上層へつながるポータルだろうか?
見たところ一つだけなのであれで間違いは無いとは思うが……、念のため部屋を見渡すが部屋にはこのポータルがひとつあるだけだった。
覚悟を決めてポータルに入ると目の前の景色が変わり、建物の中に移動することができたことがすぐに分かる。
これは間違いなく塔のワンフロアだろう。
ということはつまり、一層クリアする度に塔のワンフロアにつながるということか……。
フロアの中を歩きながら周りを見回していると、ポータルから皆が移動してきた。
「ここは何処かしら?」
「ここは座標から考えると塔のワンフロアのようです。各層の間にはこのような空間があるのでしょうか?」
「多分そうなんだろうね。一応このポータルを戻れば第一層か出口のポータルにも移動できるはずだよ」
「んじゃ、一回戻ろうぜ。流石にガーディアンとやりあうと疲れちまうからな」
ジークの意見に皆が同調したので、今回の探索はここまでにして第二層への挑戦はまた次回に持ち越すこととなった。
僕としても多少疲れてはいるので戻ることに不満は無い。
新しく色々な素材が手に入ったのでブーツへの付加等もじっくり行いたいところだしね。
あの光る石も何か使える物は無いか考えたいし、やることは多そうだ。楽しみで仕方がない。
「……」
――見ないぞ。皆の顔は見ないぞ。
ポータルで塔の外に移動すると、天獄塔の広場は相変わらず活気があり賑わっていた。
「おう、そこのにいちゃん。そんななりじゃまともに探索できやしないぜ?」
「……そろそろ新しいパターンは無いんですか?」
「ははは、お約束だから気にすんな。って何か良いことでもあったのか? 皆機嫌が良さそうだが……」
「ああ、先ほど第一層のガーディアンを討伐してきたんですよ」
「お前らもう第一層クリアしたのか……いくらなんでもちょっと早すぎねぇか?」
いつもの文句で声をかけてきたのは、もちろんダニスさんだ。相変わらず元気な人だ。……それにしてもそんなに早かったのだろうか?
ダニスさんの様子を見た感じでは相当早いという印象を受けているのだろう。
「普通はもっと掛かるものなんですか?」
「んー、そうだな。正確な数値目標は分からねぇが大体一ヶ月くらいが順当なところじゃないのか? まっ、何にしても第一層をクリアしたんなら本当の意味で探索者になれたってことだな。おめでとうだ!」
「ありがとうございます。でも僕はこの天獄塔を最上階まで登るつもりなので、これくらいで喜ぶつもりはありませんよ」
「はははっ、良いねぇ。その勢いで俺達を越えてみせな!」
ダニスさんは嬉しそうに大笑いをしながら、再び肩をバンバンと叩いてくる。ちょっと痛い……。
――第一層のガーディアンを討伐したことを申請するために、探索者ギルドの受付に向かうとそこにはシェリルさんが立っていた。
本当に何処にでも現れるなこの人は。僕達監視されてたりしないよね?
まあ監視者がいないことは確認できている為、そんなことはありえないので本当に偶然だったりするのだろう。
「あ、バーナード君! お帰り~、今日は素材の精算かな?」
笑顔で手をひらひらと振るシェリルさん。明るい対応が珍しいのか周りがざわざわし始めて遠巻きに周りから注目されてしまった。
初対面の時の愛想なしが普段の対応だとするとまるで別人だからなぁ。
ニコニコしてるときれいな人なんだけど、無愛想な時はちょっと怖いしね。
「あ、はい素材の精算をお願いします。あと、先ほど第一層のガーディアンを討伐したので探索者証の更新をお願いします」
「えっ!? もう第一層をクリアしたの? まだ探索者になって数日……流石はバーナード君ね」
僕達を見ていた他の探索者達もシェリルさんの言葉を聞いて、騒がしくなり僕達の様子を見ながら遠巻きに何かを言っている。
ちゃんとは聞こえないが、どうも余り信じてもらえていないようだ。
何だかそれは苛つくので、さっさとシェリルさんに探索者証を渡して手続きをお願いすることにした。
探索者証を受け取ったシェリルさんが何事もない様子で手続きを始めたことで、周りの目も疑いの色を薄めていく……。
「本当に討伐したのね。はい、探索者証返すわ。おめでとう!」
僕がシェリルさんから更新された探索者証を受け取ると、どっと騒ぎが大きくなり話が広がっていった。
僕達のランクが上がったのを確認した他の探索者達も次々と祝の言葉を投げかけてくれたので、その後はその勢いで飲み屋に向かい大騒ぎをしてしまった。
結局飲み会は朝方まで続いたが、大勢の探索者達が酔いつぶれてしまった為、自然とお開きになった。
大騒ぎのせいで魔道具は触れなかったが、こういう環境も悪くは無いな。僕も結構この探索者が好きになってきたかもしれない。
次話から第三章になります。
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