天獄塔・第一層(五)
多めに書けたのでもう一話投稿してみます。
ストックすることも考えないとなぁ……。
「ようやく頂上に着いたね。やはりと言うか何というか、ガーディアンはグリフォンみたいだ」
僕達の視界の先にある大きな岩の上に佇む一羽の紫色のグリフォンが見える。色がおかしいから普通のグリフォンではなさそうだ。
見たところ身体も一回りか二回りくらいは大きいかな?
モノクルに表示された名前は《ポイズン・グリフォン》となっている。つまり奴は何かしら毒を持っているということになる。
「ポイズン・グリフォンか……、毒には気をつけないといけないね」
「はい、即死するような毒では無さそうですが激痛を伴う麻痺毒のようです」
「ってことは、なるべく近寄らずに戦えってことだな。中々厄介じゃねぇか」
「グリフォンは風の力が強いから、風の精霊の力では及ばないかもしれないわね。私の出番は少ないかも……」
ああ、そういえばそうだった。グリフォンは風のブレスが結構厄介だった気がするな。灼熱のブレスに比べればそこまで厄介ではないけど……って、あれ?
「もしかすると風のブレスじゃなくて、毒のブレスだったりしないかな? エリーシャはもしかしたら風の精霊の力が使えるかもしれない」
「そう言われてみればそうね。確かに風の精霊は興奮していないし大人しくしてるわ。これなら使えるかも」
ということは風のブレスでは無く毒のブレスなのは、ほぼ確定ってことかな……。
じゃああれを使っておくか。
アイテムポーチからポーションの瓶を人数分取り出し、皆に配る。
「それじゃあ皆このポーションを飲んでおこうか。これは毒の耐性を高めるポイズンレジストポーションなんだけど、飲んですぐに効果が出てその後三十分くらいは効果が続くから、今回はこれで十分だと思うよ」
探索者として戦う以上はこういう事も起こりえると思って、トライアルで討伐したジャイアントスパイダーの素材から作っておいたのだ。
まさかこんなに早く使うことになるとは思っていなかったが……。
「飲んですぐに効果が出るって凄いわ。これも古典錬金術では考えられないことよね」
「近代錬金術製の錬成物は例外なく即効性があるからね」
近代錬金術の基礎となる部分である錬成粉の効果だから、近代錬金術では当たり前のことなのだが、現在は錬成粉の製法自体が失われているので仕方がないことではあるか……。
錬成粉の製法が失われたことが、錬金術の衰退の主原因であると言っても過言ではないので、今度は何が起きても錬成粉の製法が失伝するようなことだけは避けなければいけないな。
その辺りはシェリルさんと相談する必要があるだろう。
ただシェリルさんは少々短慮なところがあるからしっかりと話し合う必要はありそうかな。
「おい、バーナード! 何ボサッとしてんだ!? もう皆ポーション飲み終わったぜ?」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してた」
ジークが待ち遠しくなったようで、怒り気味に呼びかけてきた。
いけないいけない。考え事は夜にでもすれば良いんだ。今は目の前のガーディアン討伐を確実にこなさなければいけない。
僕も手持ちの毒耐性ポーションを飲み干すと意識をガーディアン討伐に向ける。
「じゃあ、鳥退治と行こうか……」
各々が武器を握りしめ、気合を入れながらガーディアンの領域に足を踏み入れる。
全員が領域に入るとガーディアンが空に向かい咆哮し領域内の空気を震わせる。ガーディアンはトライアルの時と同様にメキメキと音を立てながら巨大化していく……。
《ポイズン・グリフォン+4》
巨大化が終わると、その大きな羽を羽ばたかせ空へと飛び立つ。
ストーン・ハーピー達に比べるとかなり速度が違うようで、簡単には近づかせてはくれなさそうだ。
「ポーションが効いてるから大丈夫だとは思うけど、一応念の為に風上から襲いかかるようにした方がいいかもしれないわね」
「いや、その必要は無いよ。僕の作ったポイズンレジストポーションの力を信じて良いよ」
「バーナードがそこまで言うならきっと大丈夫なんだろ? でもこいつも飛ぶのかよ剣が届かねぇし、魔道具も避けられちまいそうだな」
確かにポイズン・グリフォンが飛び回る速度はかなり速いので、遠距離攻撃も簡単には当てさせて貰えないだろう。
エリーシャも弓で矢を放ってはいるが、あれだけ大きな身体にもかかわらず当たる気配が全くしない。
まずはあの機動力を落とさないとな……。
「エリーシャは弓矢を諦めて、これまで同様に一緒に飛んでポイズン・グリフォンを囲んで」
「わかったわ、風の精霊よ力を貸して!」
エリーシャが叫ぶとともに、勢いのある風がエリーシャの身体の周りを包んでいく。
僕もブーツの魔道具を起動し空を駆けてポイズン・グリフォンを挟みこむように回りこむ。
ポイズン・グリフォンは僕達の包囲を突破しようと抵抗するが甘い。
僕もエリーシャもそれを上回る速さで包囲をする。
ポイズン・グリフォンは僕側ではなくエリーシャ側を抜けようと彼女に襲いかかる。
エリーシャは腰のレイピアを抜き放ち、ポイズン・グリフォンの羽を狙って斬り上げる。
ポイズン・グリフォンはエリーシャの剣捌きを辛うじて避け、体勢を崩しながらもエリーシャに鋭利な鉤爪で襲いかかる。
慌てたエリーシャはなんとか一撃は避けたものの腕に傷を負ってしまったようだ。
ちょっとエリーシャでは荷が重かったかもしれない。……それでも役割はきちんと果たしてくれたので及第点かな。
「くっ、速い!?」
「エリーシャ、後は僕に任せて!」
ポイズン・グリフォンは突然真上から聞こえてきた僕の声に驚きつつも、緊急回避の体勢に入る。でももう遅い!
ポイズン・グリフォンの右羽に月詠で切りつけ、その勢いのまま背中をブーツの底で蹴る。
僕の蹴りがポイズン・グリフォンの身体にめり込みながら、そのインパクトの瞬間、爆発を伴いながらポイズン・グリフォンを吹き飛ばし地面に叩きつける。
「アリス、ジーク! 両方の羽を切り飛ばして!」
「かしこまりました!」
「あいよ! オラァ!」
地面に叩きつけられたポイズン・グリフォンは死にはしなかったが、その衝撃からすぐには回復できないでいた。
その隙を狙って二人が羽を切り飛ばす。
羽を失ったポイズン・グリフォンは絶叫を上げながら、闇雲に前足を振り回が二人には当たらなかった。
しかし二人が距離を取ったことで、ポイズン・グリフォンは息を吸い込みその大きく開いた口を二人ではなく、上から斬りかかろうとしていた僕に向ける。ポイズンブレスか!?
直後、ポイズン・グリフォンの口から毒の霧が渦巻きながら放出される。
だけど甘い、僕は月詠を振りかぶりポイズンブレスを切り裂いた。
勢いを失った毒の霧が身体を包むが事前に飲んでおいたポイズンレジストポーションのお陰で全く効果を発揮しなかった。
ポイズン・グリフォンは、毒の霧の中を飛び出して来た僕を見て驚愕の表情をして身体を硬直させた。
僕はその勢いのままポイズン・グリフォンの首を刎ね飛ばす。
ポイズン・グリフォンを討伐して地面に降り立つとアリスが慌てて近づいてきた。
「バーナード様、毒は大丈夫ですか?」
「アリス心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
心配そうな顔をしているアリスの頭を撫でてあげる。僕の様子を見て安心したのかアリスはほっとした表情になり、一息つくと視線をポイズン・グリフォンに向ける。
「思っていたよりも動きの速い魔物でしたね。バーナード様はあちらでお休みください。素材の回収は私にお任せください」
「うん、それじゃあお願いするね。ジークもお疲れ様、怪我はない?」
「俺は何ともねぇぜ、それよりエリーシャを見てやってくれ。腕の怪我がひでぇ」
「そうだね、エリーシャ腕の傷は大丈夫?」
「……毒は大丈夫だったんだけど、結構深めに爪が食い込んじゃったから、ちょっとやばいかな」
「確かにちょっと傷が深いね。それじゃあ、あっちの日陰に座って治療しようか」
そう言いながら近くの日陰になっている場所に移動して、エリーシャを岩にもたれさせて座らせる。
エリーシャが座ったのを確認してから、アイテムポーチからポーションを取り出し瓶の口を開け口元に持っていき飲ませてやる。
するとみるみるうちに傷がふさがっていき、十数秒後には全ての傷が綺麗に無くなった。
エリーシャの様子を見ると傷は治ったものの少し落ち込んでいるように見える。
「……私もまだまだ修行が足りないみたいね。バーナード君がいないと第一層のガーディアンとは戦える気がしないわ」
「別に一人で戦う必要は無いから大丈夫だよ。エリーシャはエリーシャの得意なことで僕達を助けてくれれば良い」
「バーナードの言うとおりだぜ。俺達はパーティで探索者やってんだ。確かに今はバーナードに頼っちまっているが、だったら日々の鍛錬で鍛えれば良いんだ。なんなら鍛錬に付き合うぜ」
「ふふ、ありがと。ジークは意外と優しいわね」
「い、意外は余計だ。ったく、エリーシャがしおらしいと調子が狂うぜ」
ジークが顔を赤くして文句を言っている。あれ、意外と二人の相性良いんじゃないか?
ひとまず次話で第二章を終わる予定です。




