待ち合わせ
総合評価400pt達成しました。
この小説を読んでくださっている皆さんありがとうございます。
昼食も食べ終わり午後の探索を開始することにするが、夕刻辺りには外に出ないといけないことを考えると、あまりここから遠くに離れることはできなさそうだ。
そう考えながら川の上流と下流を見渡す。
見たところ下流には特に気を引くような物は見当たらないが、上流を見ると岩山らしき物が見えた。
気にはなるが今日の残り時間を考えるとあちらに向かうのは得策では無さそうだ。
「あっちに岩山が見えるね、次回の探索時にはあっちに行ってみてもいいかもしれないね」
「私はそれで問題ありません」
「岩山か、トライアルの時も岩山が正解だったしな、良いんじゃねぇか?」
「そうね。でもまた洞窟だとジークが役立たずになるけど……」
「ば! 馬鹿野郎! 俺は洞窟なんて怖くなんかねぇぞ!」
「あら? 強気に出るってことはあれから何か対策でもしたの? それなら期待できそうね」
「……」
「目を逸らすんじゃないわよ……まったく、アリスちゃんの前で見栄を張りたいのはわからなくもないけど、結局洞窟に入ったらバレるんだから何か対策しておきなさいな」
ジークが何かを訴えるようにこちらを見ているがひとまず見ない振りをしておく。
ジークの暗闇対策か……、確かにこの先の事を考えると洞窟に入る度に毎回戦力が落ちるのはあまりに非効率的だと思うし、そろそろ何か魔道具を考えたほうが良いかもしれないな。
「……まだ方向性は考えていないけど、ジークには何か暗闇対策の魔道具を作っておくよ」
「それが良いと思います」
「誰かさんと違ってバーナード君は本当に頼りになるわね」
「それは追々ってことで今日のところは残り時間の使い方なんだけど、この川と周辺を少し調べたいかな」
先ほど食事に利用する前に川の水に関しては安全であることは確認できてはいるので、休憩前に討伐したユニコーン・バッファローのように魔物が水場として利用している可能性は十分にある。
今この場所から見渡す限りでは何も見つからないが、魔物に遭遇しやすい可能性が高いのだ。
皆もその意見には同意してくれたので川の近辺を探索することにした。
――しばらく近辺を探索したが、午前中にもましてジークが疲労を溜め込む結果となった。
つまり簡単に言ってしまえばユニコーン・バッファローにしか遭遇しなかったというわけなのだが、問題はそれだけではなかった。
川の周辺で魔物を探索しているパーティが僕達以外にも数組いたのだ。
よくよく考えてみれば当たり前の話なのだが、天獄塔の異界に入って外に出るだけで見える場所なのだから、第一層で探索を行う探索者がそこに到達しないわけが無いのだ。
折角魔物を見つけてもすでに他のパーティが討伐中だったりするので少々効率が悪いことは否めないが、一応はちょっとした発見があったので意味がなかったというわけではない。
まず第一に他の探索者パーティが思ったよりも友好的だったのだ。
狭い狩場なので競合をつぶしに掛かってもおかしくはないと思うのだが、不思議と皆が友好的に振る舞ってくれた。
僕が想像していた以上に探索者は余裕が有るという事なのだろうか?
確かに森の異界もそうだったが、天獄塔の異界も同じように魔物が自然発生ではなく探索者数に比例して増えるし、リスポーンするため狩り尽くす心配もない。
しかもアイテムポーチが一般的ではないために、各自が持てる素材の量も限られてくる。
当然の事ながら、より多く稼ぐのであればより高い層を探索するべきなのだろうが、無理に奥に行かなくても第一層で採取できる素材だけでも十分な暮らしができるということなのだろう。
僕たちは第一層で停滞するつもりは無いが、そういった探索者が存在するということだ。
その探索者に聞いた話では、探索者には得意な層に停滞して狩りを続ける《停滞組》と、より高い層を目指す《攻略組》が存在するとの事だった。
新しい情報が得られただけでも今日探索を行った意義があるというものだ。
「そろそろ時間だから戻ろうか」
「かしこまりました」
「ぜえ、ぜえ、ぜえ、よ、ようやく帰れるのか……流石に疲れたぜ」
「そんなこと言って、途中バーナード君から体力回復ポーション貰って飲んでたじゃない。これがあれば何時間でも走り続けてやるぜって豪語してたの見てたわよ」
「体力的にはな……いくら体力が回復したって、ずっとユニコーン・バッファローに追いかけられるってのも大変なんだぜ」
「ジーク、ご迷惑でしたでしょうか?」
「あ、アリスさん!? そ、そんなことねぇぜ。いくらでも来やがれってもんだ」
「はぁ、まあいいわ。突っ込むのも面倒くさいし。そろそろ帰りましょう」
エリーシャは呆れた口調でため息をつきつつも、話題を帰る話に切り替えた。
「あまり遅くなるとシェリルさんを待たせちゃうしね。あの人のことだから出口で待ってるかもしれないよ」
「ああ、確かにあの人ならありえそうな話ね。その光景が目に浮かぶようだわ」
「しかも待たせると後が怖そうだよな」
帰りのポータルを抜けた場所では、やはりというかなんというかシェリルさんがスタンバっていた。
「……ああ、やはりここに居ましたね」
「あはは、バーナード君達の帰りが遅かったから、つい待ちきれなくなって……。まあ手間が省けて良いじゃない! ここに来てからはそんなに待ってないし」
それでも少しは待ったということだろう。まったく暇なことである。この人は本当にきちんと仕事をしているのだろうか?
そんな視線を向けたことに気付かれたのか、シェリルさんがジト目で睨んできた。
「バーナード君、今キミ凄く失礼なこと考えてなかった? もしそうなら燃やすわよ?」
「ハハハ、ソンナワケガナイジャナイデスカ」
「……心が篭ってないわよ」
「シェリルさん、今日の食事の準備は天獄塔の異界で済ませてきましたので、場所を確保できればすぐに用意できますよ」
「え、本当!? うれしー、アリスちゃん流石だねっ」
ふう、アリスよくやった!これで話が料理になったのでもう絡まれることはないだろう。あ、でも……。
「シェリルさんすみません。まだ今日分の素材精算が終わっていないので、もう少し待っててもらえませんか?」
「精算なんてまた明日でいいじゃない。ほら行こう!」
「え、ちょっ」
抵抗むなしくさわやかな笑顔で引っ張られていく僕達……。そのまま途中で馬車に乗せられ拉致されていく、ジークとエリーシャは途中で華麗にフェードアウトしていったため、馬車の中に残されたのは僕とアリスとシェリルさんの三人である。
アリスとシェリルさんはガールズトークに花を咲かせていて僕の入り込む余地は無さそうだし、馬車の外を眺めるしかやることが無い……。
改めて街並みを眺めているが、やはりこの街は栄えているなぁ。
天獄塔の周辺だけではなく、こうして通りすぎるだけの街並みも、僕の記憶にある王都に匹敵している。
あの建物もあの建物も……って、おいおい、先程から街並みがどんどん豪華になってきてないか?
この馬車はいったいどこに向かっている?
「シェリルさん? なんだか外の景色がおかしい事になってきてますけど……」
「え、おかしい!? って、別におかしくなんかないじゃない、びっくりさせないでよ」
シェリルさんが違和感を覚えていないということは、このあからさまに豪華な街並みが普通と仰る?
もしかしてシェリルさんってかなり身分が高かったりするのだろうか?
「いや、すみません。街並みがあまりに豪華だったので……この辺りは貴族の方が住んでいる区画ですか?」
「この辺りは探索者ギルドで業務に従事している魔術師が住んでいる区画よ。貴族が住むのはもう少し先」
……天獄塔の異界で命を掛けている探索者よりも遥かに良い暮らしをしていそうだ。
百年という時間が魔術師がこれほどまでに特権を得る時間を与えてしまったのだろう。
次回はシェリルさんとの食事会なのですが、書いててちょっと違う方向に話が行きそうです。
それにしても日間のランキングの壁は厚いですね。
全く届く気がしません。f^_^;




