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やっと見つけた

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします。

 皆が戦闘準備を済ませた事を確認し、メタル・ミミックへと歩をすすめる。


 金属塊に擬態していたメタル・ミミックは三体。大きいのが一体と小さいのが二体。まあ、小さい方でも三メートルは有にありそうだが。


 既に僕達を認識しているのか、こちらに向かって駆け始めた。小白虎というだけあって移動速度はなかなかのようで、瞬く間にその距離を詰めようとしている。


「随分と速えな。見た目よりもかなり軽いってことか?」


「いえ、足元の沈み具合から考えると、軽いということは無いようです」


「マジかよ」


 ジークの言葉を受け、アリスが即座に訂正する。一見軽やかにも思えるが、アリスの言うとおり重量は外見通りか、それ以上は想定しておくべきだろう。軽いと思い込んで受け止めたら大惨事だ。


「皆、初撃に気をつけて」


「重いなら、あの勢いで体当たりされると危ないわね。まずは私に任せて」


 そう言ってマリナさんは数歩前に飛び出た。そして、手元に生成された空間へ右手を突き出すと、その手には光盾が握られていた。


 光盾を両手でつかみ真正面に構えると、腰を落として大きな声で気合を入れる。次の瞬間、光盾の下部から飛び出た数本の光が地面に突き刺さる。そして――周囲に大地を揺るがしそうな程の鈍い音が響きわたった。


「おお、凄いなあ」


「その程度で光盾を抜けると思わないことね」


 突如現れた光の盾に激突したメタル・ミミック達は、その形を歪めながら数メートルの距離を弾き返されていた。既に盾というよりも壁のようだ。


「すぐに形は戻るようですね」


「自由に形状を変化できるみたいだからね。痛みも感じていないんだろうなあ」


「だったら戻れないくらいに叩き潰してやるわ」


 マリナさんが物騒な発言をしているが、確かにそう思いたいくらいにウネウネと形を変えている。恐らくだが核のような物が何処かにあるのだろう。しかしながら核の場所はわからないので、徹底的に叩き潰すという選択肢もありなのだろう。……そんな武器はマリナさんしか持っていないけどね。それに――。


「一人で全部は無理でしょ」


「あっ、ずるい!」


「早い者勝ちですよ」


 武器を持ち替えようとするマリナさんの横から飛び出す。一番大きいメタル・ミミックへ接近し、その勢いのまま下から顎を蹴りつける。


 爆音とともにメタル・ミミックが更にのけぞる。さすがに重かったのか、思っていたようには吹き飛ばなかったようだ。……ダメージがあるのか無いのかよくわからないな。


 そう思った瞬間、メタル・ミミックが体勢を崩したまま前足を振るってきた。


 少しだけ驚いたが、慌てずに半歩後ろに下がって一撃をやり過ごす。


「はは、重心とか完全無視か。って、え!?」


 僕の目の前を通り過ぎたはずの前足が、そのまま形状を変えて切り替えしてきた。慌てて月詠を構えて受け止めるが、メタル・ミミックの攻撃は更に追いすがる。


 数回は受け止めたがこのまま受けてもキリがない。仕方なしに大きめに後ろへ飛んで距離を取らされてしまった。


「バーナード様、大丈夫ですか?」


「当たってはいないから大丈夫。でも、わざわざ白虎に似せてるのに、動きはデタラメなのか。それはそれで厄介だなあ」


「まあ、見た目に騙されんなってこった」


「みたいだね」


 しなりのある動きだが、月詠で受け止めた時の音と衝撃は確かに金属だった。それも相当に硬いので、いつもよりも一撃一撃をきちんと処理する必要があるだろう。


「随分と硬いみてえだが、これ剣で戦えんのか?」


「んー、戦えない事は無いと思うよ」


「まあ試せばわかるか」


 ジークが半信半疑といった様子で笑みを浮かべていると、右手から小さいメタル・ミミックが飛びかかってきた。その一撃を受け流しつつ、カウンター気味に横一閃に薙ぎ払うと、その一撃がメタル・ミミックの一部をすんなりと分断した。


「全然硬くねえな! ……マジで切れたな。これなら行けそうだぜ」


「硬くなるのは衝突部分だけで、しなっている部分は柔らかくしてるのかな?」


 まあ、今の武器なら硬いところでも切り裂けそうだけど。




 乱戦になってしまったので、特定の一体と相対する事にこだわらず戦闘を続ける。少し時間が経過したが既に小さい二体は弱り始めていた。


「くらいなさい!」


 マリナさんが大きく飛び上がり、白虎に擬態したメタル・ミミックの頭(?)に向かって光槌を振りかぶる。


 動きが相当鈍くなっていたのか、避けることもままならないようだ。渾身の一撃がそのまま核ごと叩き潰されたのか、これまでのように形状を維持することは無いようだ。


「――やっと見つけた」


 もう一体の小さいメタル・ミミックを観察しながら動いていたアリスだったが、何かを見つけたようで薄っすらと口元に笑みを浮かべる。


 それに呼応したのか、アリスのレイピアが輝きを増した。エリーシャの精霊魔術によって刀身の周りが小さな竜巻のようになる。


 メタル・ミミックの繰り出す連撃を紙一重で避けつつ距離を詰めると、そのままレイピアをメタル・ミミックの身体に突き入れた。


 すると、メタル・ミミックの身体にまるで渦のようにねじれながらえぐれていく。その渦はそのまま反対側へと貫通した。


「アリスちゃん、油断しないで」


「大丈夫、もう終わりました」


「え?」


 サポートしていたエリーシャが警戒を促すが、アリスは既に勝利を確信している。それもそのはず、アリスの一撃はメタル・ミミックの核を見事に貫いていたからだ。小さかったからエリーシャの場所からは見えにくかったかもしれない。


「残り一体だ。バーナード、気合い入れるぜ!」


「慌てない慌てない」


 立て続けに二体が倒された事で、ジークが若干焦りを感じているようだ。いつもの仮面をしているので、その表情からは読み取りにくいが、声からは十分に伝わってくる。


「そう言えば、ジークは仮面外さないの?」


「仮面外すと気の感覚が全然慣れねえんだよ!」


 最初に感覚を掴んだ記憶が邪魔をしているのだろうか、相変わらずジークはいつもの仮面を付けていないと上手く気を循環させることが出来ないようだ。


 ……まあ、誰かに見られているわけでもないからどうでも良いけど。それに仮面格好良いしね。


「それじゃあ、サポートするよ」


「頼む!」


 そう言って、一旦足を止めてモノクル越しに見えるメタル・ミミックの身体を隅々まで観察する。


「……見つけた」


 見つかったのは、もちろんメタル・ミミックの核の事だ。


 なかなか小さい上に、身体の中を目まぐるしく動き回っているので、見つけるのに手間取ってしまった。


 動きが不規則ではあるが、注意深く見れば把握しきれない程でもない。魔物の核がメタル・ミミックの前足に到達した瞬間を見計らい月詠を一閃、前足を切り飛ばした。


「それじゃあ、後は任せたよ!」


「任せときな! くらいやがれ!」


「あ、ちょっと待――」


 そうやって叫ぶジークの既に腰を落として構えを取っていた。その黒い刀身からは赤い光が漏れている。ジークが剣を振り抜くと、その軌跡をなぞるように赤い斬撃が発生した。


 放たれた斬撃はそのまま、切り飛ばした前足を巻き込んで遥か彼方まで飛んでいった。


「よっしゃあ!」


「み……」


「み?」


「皆、全速力で逃げろ!」


 首を傾げるジークを尻目に、皆へ全力退避を促す。


「馬鹿! ジークの馬鹿!」


「な、なんだ?」


 ジークが、エリーシャから馬鹿呼ばわりされた事にさらなる戸惑いを見せたが、その困惑はすぐに凍りつく。理由は簡単、聞き覚えのある咆哮が周囲の空気を震わせたからに他ならない。


 皆、派手な攻撃は控えてたのだが、ジークは今ようやく気が付いたようだ。


 ……逃げ切ったら後で正座って事で。

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