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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
探索者デビュー編

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天獄塔・第一層(三)

今日の分の投稿忘れてました……。

 異界に入ると前回と同じく、石造りの構造物の中に移動していた。

 毎回この暗いところから始まるのは確定か……、ランダムとかじゃなくて良かった。


 それにしても、どうせ部屋を出て外にでるくらいしか使わないのであれば、壁でも壊して外に繋げるとか、次の通路壊すとかすれば良いのに……。


「やっぱ異界に来たって雰囲気が出るな」


「そうね森の異界は入り口がちょっと味気なかったもの」


「私はどちらでも特に気になりませんが……」


 ……アリスはなんでこっちを向いているのかな?君は心でも読めるのかい?

 僕は至って平静を装いながらアリスの視線を受け流す。

 それにしても、なんと効率の悪いことが好きな面々だろうか、転移した部屋から出たら外、それでも楽でいいじゃないか。


 もちろんそんな僕の祈りなど届くはずもなく、警戒しながら部屋を出ると通路を通りエントランスを抜け《ようやく》外にでる。

 今のところこの城の中で魔物をみたことは無いので警戒など必要が無いのかもしれないが、暫くは用心に越したことはない。

 何と言っても入り口から仕掛けられたわけだし、油断して他の探索者に襲われないとも限らない。


 さて今回はどこに行こうか。ジークとエリーシャには悪いが、今日はシェリルさんとの約束ができてしまったので、アリスの準備を考えるとあまり遅くまで探索することはできない。

 出来れば、なるべく近場で狩りを行いたいところだ。


 そう思いながら辺りを見回していると、前回彷徨いた場所と逆方面の少し離れたところに川が流れているのが見えた。


 川なら魚の魔物とか、水を飲みに休憩しに来た草食の魔物がいるかもしれない。って、草食の魔物っているのか?

 そういえば魔物って肉食しか見たこと無いな……、魔物の成り立ちに何か原因でもあったりするのだろうか?

 まあ分からない事をあまり考えても意味がないか。


「まあ良いか、今日はあっちの川辺に行ってみようか」


「何がまあ良いんだ? 川辺は別に構わねぇが、他に候補でもあったのか?」


「ああ、いやこっちの話だから気にしないで良いよ。ごめんごめん」


 独り言が少しだけど心から漏れてしまった。いけないいけない、これではシェリルさんの事をとやかく言えないじゃないか。独り言には注意しないと……。




 ――しばらく歩くと川が見えてきた。

 丘の上から見えたのでそう遠くは無いと思っていたのだが、歩いてみると思いの外、距離があったようだ。


 ん、水辺に魔物の群れが見える……あれは水牛っぽくみえるけどなんだろうか?

 頭に何かが付いているように見える。

 流石にこの距離ではモノクルでも名前は見れないか。


「水牛……のように見えますが、なんでしょうか」


 アリスもわからないみたいだ……。もう少し近づかないとわからないかな。

 数頭の群れなので、気付かれないようになるべく音を立てずに近づく。

 お、一頭が群れから離れたぞ。離れた一頭は川から少し離れたところで休憩を始めたようだ。


「あいつを狙おうか、名前は……分かった《ユニコーン・バッファロー》だ。ああ、こいつがそうか」


「バーナードは知ってるのか?」


「あの角が万能薬の素材になるんだよ。普通はユニコーンの角を使うんだけど、ユニコーン・バッファローの角にはそれ以外にも滋養強壮の効果が高いんだ。だから作成する万能薬の効果も、より高いものが出来上がるんだよ」


 賢者の石を作っている最中に病を患った時の事だが、手持ちの万能薬では病が治らなかったので一度取り寄せて試したことがある。

 その時は結局治ることは無かったんだが、飲んだ日は目が冴えて眠れなかったほどだったのを覚えている。


「折角だから今日の肉にはこいつを追加しようか。狼であれだけ美味しかったんだ、牛ならもっと美味しいかもしれない」


「かしこまりました」


「なんか異界探索って雰囲気じゃねぇな……、まあ美味いなら問題ないか」


「まあ、らしくて良いんじゃないかしら」


 全会一致したので群れから離れたユニコーン・バッファローを狙うことにして散開して周りを囲む事にした。

 反対側に回ったジークからも位置取り完了したようで準備万端の合図が出ている。

 一度全員に目配せをしてから左手を上げ、タイミングを見計らって手を振り下ろし合図を出し一気に取り囲む。


 ユニコーン・バッファローは突然近くに現れた僕達の姿に驚き逃げようとする。

 しかしその先もすでに囲んでいたので逃げることはできそうに無いとあきらめたようで、唸り声をあげつつ襲いかかってきた。


 ユニコーン・バッファローの動きは牛とは比べ物にならないくらいに機敏で、中々に激しい当たりをかましてくるようだ。

 特に角を使って襲ってくるのが厄介で、あまり激しくこちらの武器を当ててしまうと途中から折れてしまうかもしれない。


 素材として使える物は角の中身なので基本根本から折らねばならない。

 しかも困ったことに角は死んでから折るのではダメなので、生きている間に折ることが必要となる。

 つまりは加減をしながら倒さなければいけないのだ。

 そのことは先に皆には伝えているので、少々遠慮気味で攻めあぐねている。


「この角は厄介ですね」


「やべぇ、つい折っちまいそうだ」


「ジークは加減が下手なんだから特に気をつけてね」


「わかってるって!」


 エリーシャの注意に答えながらも、ジークはユニコーン・バッファローの体当たりをなるべくギリギリで躱しつつ、重点的に足を狙っている。

 先ほどから何故かユニコーン・バッファローはジークばかりを狙ってくる。何か狙われやすいものでも身につけているのだろうか?

 しかし、ぎこちなくはあるが少しずつ足を削っていき、ジークが数回攻撃する頃にはユニコーン・バッファローは動けないようになっていた。


 とはいえ足が動けないとは言っても全く動かないわけではないので、セントラルのサポートを受けながら月詠で根本から一気に角を切り落とすことにする。

 うん、無事に角は手に入ったわけだけど……。


「……タダでは終わらせてくれないみたいだね」


「あ? どういうことだ?」


「理由はわからないけどさっきからジークばかり狙われてたでしょ」


「ああ、なんかよくわかんねぇがそうだったな。でも、それがどうしたんだ?」


「うん、それを踏まえて後ろを見て欲しいんだけど……」


 ジークが僕の言葉の意図を図りかねているようなので、後ろを見るように促す。

 促されるまま後ろを見るジークの時間が一瞬止まる。

 意味もなくそういうことは言わないよ?


「……マジかよ」


「群れに気付かれたみたいだね。まさか逃げずに向かってくるとは思わなかったなぁ。とりあえず角は一本手に入れたから、無理に狙わなくても良いよ」


 そう彼の後ろには先ほどのユニコーン・バッファロー六頭の群れが構えていた。




「な! ん! で! 俺だけなんだよ!?」


「ジーク、そのまま逃げていてください。後ろから減らしていきます」


「あ、アリスさん!? ま、任せやがってください!」


 ユニコーン・バッファローの群れから逃げまわる様に指示を出すアリスと、無茶ぶりに律儀に従うジーク。

 アリスは角を全て回収したいようで、先ほどからジークに逃げさせながら後を追っている。




「ジーク、ご苦労様だね」


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、お、おう。ってかなんで俺ばかり狙って来たんだよ」


「うーん、多分なんだけどジークの髪の色かもしれない……。確か赤い色で興奮するって聞いたことがあるし。まあなんだかんだ言って全頭の角を無事採取できたから結果オーライってことで」


「てことは、これからも狙われるってことじゃねえか、マジかよ……」


「ジークお疲れ様です」


「い、いえ! アリスさんの為なら大したことないぜ」


 狙われるジークには頑張って逃げてもらいながら、アリスが一頭ずつバックスタブで角を切り落として行く作戦だが、これが意外と上手くいき全六頭分の角を手に入れることに成功した。


 後は角を折ったユニコーン・バッファローから順番に討伐していき、最終的にその場には死ぬほど疲れたジークと一仕事を終えて上機嫌なアリスと半傍観者だったため全く疲れていない僕とエリーシャが残ることとなった。

 他の材料はすぐに集まるから、折角だし今度万能薬作っておこうかな。


一日一回の更新だと全然ストックが出来ませんね。>_<

無理の無いレベルで頑張ってはいるつもりですが、ワントラブルで更新できない感じです。


※牛と赤い色

多くの方からご指摘を頂きましたが、実は牛は赤い色を判別できないらしいです。

闘牛において赤い布を使っているのは、闘牛士や観客を興奮させるためなのだそうです。

本作品に関してはもう書いてしまった話なので、《ファンタジー世界》のお話ということでご勘弁願います。m(_ _)m

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