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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
探索者デビュー編

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食事の約束

若者たちはそろそろ夏休みですね。

僕も休みがほしいです。


 その後は試食した肉を使った料理を幾つか食べ、非常に充実した食事を堪能することができた。


 一応ジークとエリーシャにも声をかけたのだが、料理が完成した頃には結構時間が遅かったので二人共食事をとった後だった。

 特にジークは非常に悔しがっていたが、二人には明日の探索中の昼飯で振る舞うことを約束しお預けすることとなった。


 そして翌日、僕たちは宿屋のロビーで集まったあと、ブラブラと街を散策しながら天獄塔に向かうことになった。


「そういえば聞くの忘れてたけど、魔物の肉はどんな味がするのかしら。昨日は気になっちゃってあまり寝れなかったわ」


「あ、俺もそれ気になっちまって昨日は夜も眠れなかったぜ」


 エリーシャはともかくジークは嘘だろう、さっきはよく眠って気力十分だから何時でも戦えるぜって言っていたじゃないか。

 まあ、でも気になるのは当然か……。おっと昨日の肉の味を思い出したせいか、口の中によだれが……。


「それは食べてからのお楽しみってことで。良い成果が出せたと思うから、今日の昼飯は期待してもらっても良いと思うよ。ね、アリス?」


「はい、初めての挑戦でしたが満足のいく結果が出せたと思います。昨日はシャロー・フォレスト・ウルフを捌いたのですが、今日はヒル・ジャイアント・ベアに挑戦しようと思ってます」


 珍しく上機嫌に語るアリスを見て、二人ともかなりの期待をし始めたようだ。

 多分その期待は大きく越えられると思うよ。


「よっしゃ、今日はいつもよりもっと頑張れそうだぜ!」


「ふふ、お昼が楽しみね。でもそんなに色んな魔物に挑戦して大丈夫なの? まずは昨日と同じ魔物に慣れたほうが良いんじゃないかしら」


「それなら心配には及びません。多少慣れていなくてもなんとかなりますから」


 セントラルのサポート使ったからね、とはいえアリスの調理とセントラルの相性は予想以上に噛み合っていたと思う。

 戦闘のサポートや錬成のサポートに使えるぐらいだから、確かに料理のサポートに使えても何もおかしくはないか……。


 僕が料理に一切興味がなかったのでそっち方面には今まで一回も試したことが無かったよ。これまでだって美味しい料理が食べられるチャンスはいくらでもあったということか……宝の持ち腐れだなぁ。




「おう、そこのにいちゃん。そんななりじゃまともに探索できやしないぜ?」


 ブレないなこの人は……、天獄塔前の広場につき塔に向かう途中にダニスさんに声をかけられた。

 相変わらず気持ちのいい笑顔でニコニコしている。この人が有名な探索者だなんて見た目からは全く想像できないなぁ。


「お早うございますダニスさん。朝早いんですねというか、いつもこの辺りにいる気がしますけど一体いつ探索しているんですか?」


「ん、だいたい毎日探索はしてるぜ。でも、確かによく会う気がするな。もしかしたら、にいちゃんたちとは何か縁があるのかもしれねぇな……。あ、そういや聞いたぜ。何か第一層で罠に嵌められたらしいな」


「はは、耳が早いですね。僕達もびっくりしましたよ、いきなりですからね」


「あいつらもあんなつまんねぇ事に力入れてねぇで、ちゃんと探索者をやってりゃ良かったのになぁ」


 《あいつら》というくらいなのでもしかしたらダニスさんの顔見知りだったのかもしれない。

 少し残念そうな顔をして何かを思い出すように独り言を言っている。


「知り合いだったんですか?」


「ああ、いや。にいちゃん達が気にすることはないぜ。あいつらが探索者に成り立ての頃に何度か装備を見てやったことがあるくらいだから、それほど接点があるわけじゃないんだ。ただ、あいつらも純粋な時期があったんだがなぁ」


 確かにほとんどの者は富を得る事を夢見て探索者になっているはずだ。

 もしかしたら異界という特殊な環境が、彼らをねじ曲げてしまったのかもしれない。そう考えると僕たちも気を付けないといけないな。




「それじゃあ僕たちは今から探索なので、これで失礼しますね」


「おう、頑張って稼いできな!」


 ダニスさんと少し話した後、気の良い笑顔に見送られ天獄塔の中に入ると、今日の受付はシェリルさんだった。

 この人は何処にでも現れるな……。


「あら、バーナード君じゃない。アリスちゃんもお早う」


「お早うございます。昨日はどうもありがとうございました。今受付中じゃないんですか?」


 早速こちらに気付いたのか声を掛けてきたのは良いのだが、今現在シェリルさんは別の探索者の対応中だったりするのだが、完全に手を止めてしまっている。新規探索者では無いように見えるので手続きは直ぐだろうに……。


「ああ、待たせとけば良いのよ、それより昨日は練習出来たの?」


 いやいや、待たせて良いわけないだろう。僕達が睨まれたじゃないか!?

 流石にシェリルさんはともかく、僕達の印象が悪くなっても後々困ることになりかねないので、そろそろ厳しく当たろうか。


「僕達のことよりも仕事をしてください。順番くるまで何も話しませんよ」


「えー、もう仕方ないなぁ……こんな奴らに時間食ってる場合じゃないか、それじゃあさっさと終わらせるわよ」


 シェリルさんや、心の声が漏れていますよ。全くこの人はなんでこんなに自由に仕事ができるんだろうか?




「それでそれで、昨日はちゃんと練習出来たの?」


 先ほどの宣言通りさっさと対応を終わらせたシェリルさんが、アリスに若干食い気味に問いかけてきた。


「は、はい。昨日はバーナード様に美味しく頂いてもらえました」


「へぇ、バーナード君に美味しく頂いてもらったんだぁ」


 シェリルさんがニヤニヤしながらこちらを見てくる。いや、そっちの意味じゃないぞまったく。

 意味深な言い方するもんだからアリスも赤面してしまって、ジークまで慌てて僕を見てるじゃないか。


「はい、美味しい魔物のお肉を頂くことが出来ましたよ」


「ちっ」


「ちっじゃないですよ、わざと誤解しやすく言いましたよね!?」


「ちょっとしたジョークよ、でもアリスちゃんすごいわね。いきなり上手く行っちゃうなんて料理の才能があるのね」


 どうも普通はかなりの練習をしないとそうそう上手くはいかないものらしい。

 ってそれはまあ当たり前か、そうそう簡単に上手く行くのなら誰も苦労などしない。

 アリスの場合は確かにもともと器用だけど、セントラルのサポートなしではやはり厳しかったということなのだろう。

 機会があれば僕も練習してみようかなぁ。


「昨日のお礼を兼ねて、今度ごちそうさせてくださいね。何か要望とかは有りますか?」


「え、本当!? 嬉しいっアリスちゃん大好き! そうねえ、やっぱり折角食べるなら、色々な部位のお肉が楽しめるようにバーベキューで串焼きとかどうかしら?」


「おお、そりゃ美味そうだな! バーナード、今日の昼はそれにしようぜ!」


 嬉しそうに話に花を咲かせる二人の話に急に割り込むジーク。ジークはジークであまり空気が読めないようだ……。シェリルさんに睨まれてるぞ。


「まあ今日の昼のメニューはアリスに任せればいいよ。それよりシェリルさんはいつなら都合が――」


「今夜で!」


「……あ、はい」


 シェリルさんと食事の約束をしてしまったので、今日は早めに探索を終えないといけないな。

 今日も昨日と同じように数回の戦闘で引き上げることにしよう。

 とはいえ、探索が日帰りばかりになってしまうと天獄塔の異界で野営する日は来るのか逆に心配になってくるなぁ。

 今日はともかく今後はなるべく長い期間探索できるように気をつけないと……。


シェリルさんは自由人ですよね。

次回は再び天獄塔第一層です。


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