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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
探索者デビュー編

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天獄塔・第一層(二)

今回で十万文字越えましたー♪


 ジークがヒル・ジャイアント・ベアとのタイマン宣言をしてしまったので少しだけ心配だったのだが、ヒル・ジャイアント・ベアの膂力に負けること無く攻撃を受けきり的確に反撃を加えていった。

 これは天獄塔に挑むために改めてジークの防具を強化した際に付加した《筋力強化》が効いているのだろう。


 ヒル・ジャイアント・ベアの初撃を受けきった時にはジークの表情にも少しの戸惑いが混ざっていたが、それにも慣れたのか今は自信を持って受けることで相手の隙を狙う余裕ができた分、反撃もより的確なものになっていった。


 ちなみに周りのシャロー・フォレスト・ウルフは僕達が近づいた時にはもうアリスとエリーシャによって機動力が奪われた後だったので、特に危ないこともなく始末することができた。


「これならっ! 大したことねぇな!」


「まだ第一層の初戦だからね、でも油断は禁物だよ」


「わかってるって、うりゃ!」


 そうこうしている間に少しずつジークの攻撃回数がヒル・ジャイアント・ベアを上回り始め、数分後にはジークの一撃が腕を切り飛ばしていた。

 ヒル・ジャイアント・ベアは腕を切り飛ばされたことで激昂するも、大振りによってより大きな隙が出来るだけだった。




「この層は最初の城以外は、森と草原だけで構成されているのでしょうか」


「今のところ視界にはそれ以外はないわね」


 素材の採取中に、ふとアリスがつぶやいたのだが、エリーシャが言うように今のところはそれ以外見えない。

 そのため第一層のどこをどう進めばガーディアンに到達できるのか、ということに関しては判断材料が足りていない。

 先を見てみたい気はするが、今日のところはあまり探索時間も取れないので、第一層の魔物に慣れる方が大事だろう。


「まあ、今日のところはこの周辺で少し狩りをしてから帰ろうか。他にどんな魔物が出てくるか全くわかっていないからね」


「俺は別にもっと奥に行っても良いぜ」


 先ほどの一戦で自信が持てたのか、ジークは探索を続けたいようだ。確かにあれならもう少し奥でも何も問題は無いとは思う。でもジーク、君は大事なことを忘れていないか?


「今日はすぐに帰る予定だったから食料とかあまり持ってきてないよ。さっきの魔物の肉でも食べるの?」


「それであればそれなりの準備が必要ではないでしょうか」


「どこかの体力バカと違って私は疲れてるからもう少ししたら帰りたいわ」


「ぐ、いや何か勢いで言ってみたかっただけなんだが、さっきの戦闘よりもダメージでけぇな……」


 実は魔物の肉は動物に比べて美味なものが多い。ただしそれはあくまで適正に処理を行うことが出来る場合に限定される。

 魔物の肉は基本的に魔化されているので、大なり小なり毒素が含まれている。

 つまり魔物の肉を食べるためには、該当する魔物の肉を適正に処理できる知識と技術が必要なのである。


 少なくとも僕にはできないのだが、先ほどのアリスの口ぶりからするともしかしたら処理ができるのかもしれない。

 今度アリス用に調理機材一式買ってみるのもいいかもしれない。


「ちなみに誰か魔物の肉を処理できるの? 僕はできないけど」


「私にもできないわ」


「俺も無理だな」


「私もやったことはありませんが、手順は調べられるので機材が揃っていれば可能かもしれません」


「へえ、アリスちゃんはすごいわね。魔物の肉を処理できるならそれだけで商売になるわよ」


「そういや広場の露店に魔物の肉を使った料理を売ってる店があったぜ。一回食べたんだが確かにあれはメチャクチャ美味かったぜ」


 おお、それは中々期待できそうだ。アリスは料理の腕前は高いしセントラルで処理方法は調べられる。

 アイテムポーチなら魔物を丸ごと入れても運べるし鮮度も保たれる。料理して広場で露店を開けばもっといい宿に泊まれるほど稼ぐことは十分に可能だろう。


 そういうことなら露店商売用にホムンクルスを造っても良いかもしれない。

 確か露店を開くことができるのは探索者だけだが、店番は探索者である必要は無かった気がする。戻ったら条件を確認してみよう。


「それじゃあ、ひとまずこの魔物たちは丸ごと持ち帰ろうか」


「アイテムポーチはマジで便利だな。俺達の分を作ってもらうことはできねぇのか?」


「作る分には構わないけど、素材が足りないんだよなぁ。揃えるのも面倒だし。ああ、素材揃えてくれたら作ってもいいよ」


「バーナード君がそう言うってことは、かなり手に入りにくい素材なのかしら?」


「少なくともレッサー級ドラゴンの鱗は必要だよ」


「……まだ遠そうだな」


「そうね、ひとまずは聞かなかったことにするわ」




 ――それから数回の戦闘をこなし、今日の探索を終了することにした。

 今のところ遭遇した魔物は代わり映えしなかったが、空を見上げると鳥も飛んでいたのでもう少し種類は多そうだった。


「やっぱり今日はあまり稼げなかったわね」


「まあしかたがないよ、トラブルに時間を結構割かれちゃったからね。そろそろ時間も遅いから戻って換金しようか」


「そうだな。早く戻って酒でも飲みてぇぜ」


「はは、明日も探索するからあまり飲み過ぎないようにね。ってアリスどうしたの?」


「あ、いえ、すみません。ヒル・ジャイアント・ベアとシャロー・フォレスト・ウルフの肉の捌き方を調べていました。わりと手順が多そうなのですが、バーナード様のためにも頑張って覚えます」


 先ほどからずっと静かだと思ったらもう調べ始めていたらしい。これは本当に期待できるかもしれない。


「調べてるって……、さっきから特に何もしていないように見えるのだけど?」


「それは秘密です」


 セントラルは最も重要なものなので僕と僕が造ったホムンクルスにしかアクセスさせるつもりはない。


 今のところセントラルにアクセスできるのは僕とアリスだけだ。

 僕が操作するときは音声かオーバーレイされたメニューを使うけど、アリスは直接アクセスできるから傍目には全くわからない。

 近くで見ているとはいえ、ジークとエリーシャから見ると何をしているのかさっぱりわからないだろう。


「エリーシャ、アリスさんのことを詮索してんじゃねぇよ」


「詮索って、また随分と人聞き悪いわね。体力バカが使う言葉じゃないわよ?」


「なんだとコラ!」


「まあまあ、二人共落ち着いて。漫才は戻ってからにしてよ」


「漫才じゃねぇよ!」「漫才じゃないわよ!」


 ハモる二人の時が一瞬止まった……。




 少し時間がかかったが二人の喧嘩が落ち着いたので、最初の部屋からポータルを使って戻り、外にでるとすでに夕方になっていた。

 ギルドに移動し今日の分を換金したが、それほど稼ぎには成らなかったのは仕方がないか……。


 換金窓口で聞いてみたが魔物の肉の買い取りは痛むのが早く保存が難しいため行ってはいないようだ。

 ということは広場の露店で売っている探索者も小型のアイテムポーチを持っているのかもしれないな。


 ちなみに露店に関しては探索者名義でギルトに届け出さえしていれば、店番を別の人が行っていても問題は無いらしい。

 ただ露店の規模で店番を使えるほど利益を上げるのは難しいだろうと言われた。


 店番を雇う場合は余程の信頼がない限りは高額の商品は扱えないし、かといって安い商品ばかりを扱った場合は店番の報酬分も稼げなかったりするからなのだそうだ。


 話を聞く限りでは僕の場合は問題が無さそうに思える。

 店番はホムンクルスに任せれば安心だし、一日に売る量を調整すれば魔物の肉が痛む前に売りさばくことは十分に可能だろう。

 もう一個アイテムポーチがあればなぁ。

 でも、ちょっと楽しみになってきたぞ。明日の探索は開始時間を少し遅くして調理機材を一式揃えに行ってみようかな。


次回は魔物の肉を味わう予定です。


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