天獄塔・第一層(一)
各話のサブタイトルが浮かばない。^_^;
ギルドからの事情聴取のような物を受け、解放されたのはそれから更に一時間がたってからだった。
ようやく解放されたので改めて気を引き締めなおして、再び第一層に移動することにした。
ポータルに入り、目の前の景色が先ほど同様石造りの構造物の中に変化する。
先ほど飲み込まれそうになった扉の方を見ると、これでもかというくらい厳重に封鎖されていた。
なんでもこちらの入り口は普段であれば、今見ての通り厳重に封鎖がされているらしい。
これには理由があって昔この塔を探索者に開放し始めた頃から、この扉を封鎖するまでの数年間に数多くの探索者がこの人喰い通路に飲み込まれたそうだ。
当初はこの前にすごい宝が眠ってるのではないか?と皆が噂していたらしいのだが、流石に数年間かけて誰一人として宝一つ見つけることができなかったため、次第に誰も立ち入らない場所になってしまったとのことだった。
しかし、それからも稀に事情をあまり知らない者が立ち入ってしまい、無事に帰ってくることができないといった事故が多発してしまったため、最終的にこのように封鎖されることになったようだ。
それ以来誰もこの通路には立ち入っていなかったのだが、例の探索者パーティがそれを悪用して時間をかけて封鎖を撤去可能にし、新人が異界に入ってくるのを見つける度に、罠に嵌めて楽しんでいたらしい。
罠に嵌めた後は毎回封鎖し直していたようで、ギルドとしてもまさか撤去可能になっていたとは夢にも思わず、これまで誰も気づく事ができなかったのだそうだ。
折角トライアルを抜けられるだけの素養があるにもかかわらず、才能の無駄遣いをしてしまうとは、何とももったいないことだと思う。
こんなことしても探索者としての利益なんて全く上がらないだろうに……。
しかしそういう話になってくると、通路の先にあった祭壇のことが俄然気になってくるのはしかたがないことか……、そのうち人喰い通路を何とかして祭壇の調査を行って見るのも有りかもしれない。
これまであの通路から宝を持ち帰ったものはいないらしいが、道に残された矢印が先駆者達が残した物だとすれば、その道標が示す先にあった祭壇にはかなり期待ができるかもしれない。
閑話休題、全員がポータルを抜けてきたので改めて状況を確認する。今日は想定外のトラブルのせいで余計な時間を食ってしまった。
流石に初日から野営するつもりは全くないので、今日の探索時間は更に少ないものになってしまうだろう。
「今日はもう一方の先を少し探索したら引き上げようか」
「かしこまりました。私は問題ありませんが、皆さんはお疲れではないでしょうか?」
「そうね、ホントはもう疲れちゃったから帰りたいところなんだけど、流石に探索初日に何もできないのはちょっとね……」
「お、俺は大丈夫! そうだなこのまま帰っちまうのは、なんか気に入らねぇからな!」
ひとまずは皆同じ考えのようだ、あのような邪魔が入ったとはいえ探索初日から成果なしなどと躓いてしまうのは、幸先がよろしくないのは事実だ。
せめてほんの少しだけでも成果を上げてから帰るべきだろう。
「それじゃあ、もう一方の探索を始めようか」
扉を開けて部屋から出ると、人喰い通路とは明らかに違う点が一つあった。
通路には窓があり外からの光が差し込んでいるのである。つまりここは地下ではなく地上であるということがわかる。
外を覗いてみるとこの建物が小高い丘のような上に建てられたものだということがわかる。
「まるでどこかの砦や城の中のような印象を受けるね……」
「私は初めて見ます」
「俺はそんなすげぇところには入ったことねぇからわかんねぇよ」
「私も人間の城には入ったことは無いわね。もともとエルフは城とか作らないし……」
確かに城などに縁がある方が珍しいのだしわからないのが当たり前か。例えがわかりづらくてすみません。
「でも、バーナード君は城にも入ったことがあるのね。大したものだわ」
「ああ、ごめん僕も数回しか入ったことは無いから何となく思っただけだよ。親友が王宮に仕えていたんで、たまにそいつの研究所に出入りしてたんだ」
「それはそれで若いのにすごい伝手ね、でも《仕えていた》ってことは、その親友さんは今はもう仕えていないということかしら」
「――そう、だね」
ふとした会話で半分自爆する形で、セオドールの事を思い出してしまった。
セオドールのことはまだ皆に話すべきでは無いだろう。皆に話すときは僕の事もきちんと話さないといけないだろうし……。
「あ、ごめんなさい。そんなどうこう追及するつもりはないの。今のは忘れて頂戴」
「いや、気にしないで良いよ……それよりも――」
それよりも今は探索だ。通路を抜けた先は建物のエントランスになっていた。つまり第一層の本番はこの建物の外だということになる。
「第一層は外みたいですね」
「ど、洞窟じゃなくてよかったぜ――」
「ジークは怖がりさんですものね」
「……エリーシャは黙ってやがれ」
「二人共漫才はその辺にしておいて先に進むよ」
エントランスを出るとそこは先ほど通路から見たのと同様の景色が広がっていた。
丘の上に居るせいか結構遠くまで見通せるが、驚いた事に森の異界と違い随分と広い空間であることが見て取れる。
またふと振り返って見ると、今僕たちが出てきた建物は小さな城のような建物だったことがわかる。
異界の中に存在する人工的な構造物――一体誰が作ったというのだろうか?
新しい発見をする度にこの異界と言うものの不思議さが際立つ。
セオドールは最後のメッセージで《深度は最大値で異界化する》という言葉を使っていた。つまりこの異界はセオドールが作ったのは間違いないが、セオドールが残した研究資料の中には異界に関するものは存在していなかった。
ということはセオドールは異界に関する研究は行っていなかったことになる。……ダメだな。考えるにしても今はまだ材料が少なすぎる。
道なりに丘を降りて行くと、視界の先で数体の魔物が争っているのが見えた。見たところ一体の熊のような魔物と、それを取り囲む五匹の狼のような魔物だが、まだこちらには気付いてはいないようだ。
「熊と狼の魔物が見えるわね。結構数が多いけどどうする? 互いに潰し合うのを待つのもアリだとは思うわ」
「見た感じそんなに強くは無さそうだぜ、全部殺っちまってもいいんじゃねぇか?」
「バーナード様にお任せします」
「了解。確かにそれほど強そうでは無さそうだし、まとめて殺ってしまいますか」
僕の言葉で皆が臨戦態勢に移行する。
アリスは懐から投げナイフを取り出し、エリーシャは弓を構え矢をつがえる。
ジークは剣を抜き放つと、いつでも飛び出せるように低く身構えた。
「アリスとエリーシャは遠距離から機動力を奪うことに専念して。僕とジークは左右に分かれながら突っ込んで挟み込むよ!」
「かしこまりました」
「任せといて、エルフの弓の腕を見せてあげる」
「わかったぜ!」
ある程度近づいてから、僕の合図とともに僕とジークが一気に駆ける。
魔物たちがようやくこちらに気付いたが、飛んでくるナイフと矢を避ける事ができず、数本が足に突き刺さり悶絶している。
ジークは弓なりに走りこみ一気に距離を縮めると、手前の動けなくなった狼を切り伏せた。
僕は少し大きく後ろまで回りこみ、魔物たちの退路を断ちながらジークから逃げようとする狼を切り飛ばした。
「《ヒル・ジャイアント・ベア》と《シャロー・フォレスト・ウルフ》! 特別に注意するべき点はないけど、ヒル・ジャイアント・ベアは力があるから受け止めるときは気をつけて」
「あいよ! ヒル・ジャイアント・ベアは俺が貰ったぜ!」
ジークが早々にタイマン宣言をしてしまったので、ジークのサポートをしながらシャロー・フォレスト・ウルフを倒すことにする。
魔物相手にタイマンをする必要は無いんだけどなぁ……。
第一層は魔化した野生動物にしようかと思っています。
某ゆで的には凶暴化したゾウとかアルマジロが強かったですね。




