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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
探索者デビュー編

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それぞれの要望

この話から第二章 探索者デビュー編に入ります。


 トライアル終了から数日がたち、トライアル前と比べ大きく変化した日常に適応するために、目の回るような忙しい日々を送っていた。


 つまりどういうことが言いたいかというと、未だに天獄塔の異界に入れていない。

 トライアル以前はトライアル終了したらすぐに天獄塔に突入したかったのだが、何というかそれすらできていないのだ。


 何故そのような状況になっているかと言うと、トライアルで成り行きとは言え一度パーティを組んだ都合上、全部放り出して一人で突入とかできる空気では無くなってしまったからだ。


 アリスは多分喜んで僕に合わせてくれるだろうが、僕のわがままで負担を大きく掛ける訳にはいかないだろう。

 ジークに関しては数日の付き合いだが悪いやつじゃないことは分かったし、彼の目標に向かう行末を見守ってみたい気もする。

 エリーシャは目新しい物が見れれば満足するようで、僕が近代錬金術師である事が分かったせいか、僕についてくればまた面白いものが見れるかもしれないので、引き続き僕らに合わせるようだ。


 僕の直近の目標は勿論、家に帰って資産の回収を行うことと、完全なるホムンクルスの錬成だが、幸いなことに僕には時間があるのであまり急ぎすぎずに、皆のペースに合わせていこうと思っている。


 ちなみに何故こんなに余裕ができたのかというと、探索者ギルドで確認したところ現在の天獄塔の異界の踏破率は未だ半分にも到達していないことがわかったからだ。

 百年掛けてこの結果なのだから、この先しばらくは何の問題もないだろう。


 あ、そうそうトライアルの際に寝なくても大丈夫かもしれないと思ったのだが、実際のところは少しだけ違っていた。

 確かに一日二日であれば寝なくても問題ないのだが、三日目はとてつもなく眠くなってしまった。

 もしかしたらもう一人ホムンクルスを造れば、寝なくて良い日がもう一日増えるのかもしれない。

 この辺りは何度か試すことで傾向がわかってくるのだろう。近いうちにホムンクルスを増やそうか。


 まあパーティーメンバーの装備品を色々弄るのも楽しいしね。実験台がいるのは非常に有用だ。今まででは中々試せなかった物を色々と試していきたいところだ。


「また何かろくでもねぇ事考えてそうだな。なんか怖えんだが――」


「ジーク、バーナード様に失礼な言い方をしないでください」


「あ、いや! これは貶してる訳じゃなくて、その……なんだ、……そうだ! 激励しやがってるんだ!」


 また、妙な言葉を……、でも今そんなに分かりやすい顔してたかな?


「アリス、僕そんなに怪しい顔してたかな?」


「バーナード様はいつも凛々しいお顔をしています」


 アリスはアリスでこの辺りはまるで参考にならないな……。




 ――そんなわけで僕達が今行っているのは宿探しだ。生活基盤を整えるのがこんなに大変だったとは……。


 これまではトライアル以前の流れで各自別々に宿をとっていたのだが、パーティで行動をするのであれば部屋は別だとしても、せめて近い宿に泊まるべきだろうという話になったのだ。

 もちろん、近い宿に泊まるのであれば、各自の要望にあった物件を探せればと思い、今に至る。


 アミルトには探索者向けに多くの宿が存在しているので、すぐに見つかるだろうと高をくくっていたのだが、実際に探してみるとこれが中々条件に合う宿が存在しない。

 それこそ数日間探したのだが全く見つからなかったのだ。

 ちなみに、各々の条件というか要望は以下の通りだ。


 僕は錬金術の為に錬成道具を広げられる程度の部屋があれば問題ない。しかし貴重な道具もあるのでセキュリティの高い部屋が望ましい。


 アリスは特に部屋の要望はないが、怪我などをした場合の修復に使用するポッドの置き場所は必要である。あ、要望があったな。僕と同じ部屋か隣の部屋が良いらしい。


 ジークは日々の鍛錬の為に素振りができるように庭が広くて、できれば訓練施設が近い場所が良いらしい。


 エリーシャはなるべく綺麗で大きな部屋でセキュリティが万全であれば特に要望は無いそうだ。いや、十分要望があるじゃないか。


 さすがの異界都市でもこれは全部は難しいのかもしれない。




「お客様の条件に合う宿は無くは無いです。ですが……」


 現在僕たちは自分たちで探すのをすっぱりと諦めて、街にある探索者向けの情報施設で職員に宿の紹介をして貰っている。

 職員が少し渋い表情をしているがどうしたのだろうか?


「それではそこの情報を教えていただけますか?」


「本来ならば熟練の探索者用の宿ですので、他の宿と比べて格段に宿代が高くなってしまいます。こちらですが……よろしかったでしょうか?」


 ナニコレ?

 職員に差し出された紙に書かれている内容を見ると、そこには宿代としては目が飛び出そうになるような金額が書かれていた。


 熟練の探索者とやらは、こんなとんでもないところに泊まれるほど稼げるのか……。

 そういうことか、職員から見て僕らはお金を持ってい無さそうに見えるのだろう。確かあんな金額を払えるような持ち合わせは無いので間違えてはいない。


「あー、これはちょっと無理かなぁ。もう少し安い宿はありませんか?」


「そうですか、ではこちらなどはいかがでしょうか?」


 ……いや、ごめんなさいちょっとした見栄でした。これも高すぎます……。このままでは埒が明かないな、もう少し条件を下げるしか無いだろう。


「すみません、ちょっと条件を変更しても良いでしょうか、こことここの――」


 ――結果的に条件としてはセキュリティ関連が一番高いらしいので、この点を諦めることで、現実的な金額の宿を見つけることができた。


 僕は錬成用の道具が広げられる大きさの部屋で、セキュリティは自分のアイテムポーチに入れることで担保する。


 アリスは怪我などをした場合の修復に使用するポッドの置き場所を確保。


 ジークは訓練施設は近くにはないが、宿の庭で鍛錬をすることは可能とのこと。


 エリーシャはセキュリティが万全ではないことが気になったようだが、セキュリティの有無で比べた金額を見て無事に諦めてくれた。


 結論から言ってしまえば、このランクの宿はトライアルから上がりたての探索者が利用することが多い宿なのだそうだ。

 とは言え、各自がトライアル前に利用していた宿よりも十分に良い宿なので、ひとまずはこの宿から始めるしか無いだろう。

 これであの厳ついおっさんともおさらばだ。


「それでは簡易ですが、こちらがご要望の宿への案内地図になります」


 職員から案内地図を受け取りお礼を告げて施設を後にする。地図が思いの外わかりやすかったので、宿には迷わず着くことができた。

 僕とアリスは全部の荷物を持っているのですぐにでも移動が可能だが、ジークとエリーシャは宿においてある荷物も多いようで、今日いきなり移動することは難しそうだった。


 仕方がないので、今日のところは僕とアリスだけが宿を移すことになり、残りの二人は明日以降の移動となった。


 今日の一件でわかったことだが、どうもこの異界都市は探索者ランクの差によって加速度的に稼ぎが異なるようだ。


 その為、低ランク探索者は高ランク探索者とは都市内で自然と住み分けがされていくことになり、必然的に天獄塔周辺でしか交わることは無くなるというわけだ。


 僕個人で言えば、近代魔導具を売りさばけば容易に越えることはできるだろうが、流石にすぐにそれはできないので地道に稼いでいくしか無いだろう。

 ――探索中に発掘しましたとか言って、近代魔導具を少しずつ市場に流していくのも手ではあるか……、今度一回試してみようかな。


バーナードが余裕ぶっこきすぎというご指摘が多かったため、天獄塔の探索率に関する内容を追加しました。


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