洞窟のガーディアン
ここ数日、奇跡的に連続更新ができています。
ガーディアンを探す道中、メタルアントと遭遇した回数は実に二十回を越えた。
ジークは相変わらずのガクブル状態だが、足を引っ張るわけではないのでご愛嬌だ。
ただジーク本人はかなり気にはしているようで、この埋め合わせはどこかでしてくれるらしい。
「あっちに光が見えるね」
しばらく松明の光を頼りに歩いていたのだが、長い通路の先に光が見える。そろそろガーディアンかな?
そのまま光に向かって進むと奥に大きな空洞が広がっていた。
どうもこの空間だけは他と違い光源があるようだ……。壁や天井、果ては床まで淡い光を放っている。
幻想的な景色なのは間違いないのだが、如何せん多数の魔物がいるため台無しである。
奥に目を向けるとやはりガーディアンと思しき魔物が見える。
これまでと同様に道中の魔物と比べて大型な魔物のようだが、これまでのガーディアンと明らかに違う点がある。
それはガーディアン一体だけでは無さそうということだ。
ガーディアンと思われる女王蟻とその女王蟻を守るように待機している二体の蟻。
モノクルに表示される名前は、女王蟻が《メタルアント・クィーン》で二体の蟻は《メタルアント・ナイト》だ。
更にその周りに《メタルアント・メジャーワーカー》が五体と中々の面子である。
「やっぱりガーディアンは女王蟻みたいだね、流石に大きいなぁ」
「これだけの数がいると一筋縄ではいかなさそうね」
「そうですね、ここに来る間もこれ程の量は――」
「お、俺に掛かればこれくらいは大した事ねぇぜ!アリスさん!」
おお、ジークが非常に心強い言葉を発している。説得力はあまりないけど……。
明るくなったら急に元気になったね、でもここでジークが復活してくれて良かったよ。数が多いから守りながら戦うのは骨が折れそうだったし、探索者になる人間がガーディアン相手にも何もできないようでは流石に困るしね。
ジークも頭数に入れれるので戦略の幅は広がったが、どうやって戦ったものか……。
「とりあえずジークも元気になったみたいだから、そろそろ作戦会議といこうか」
とはいえ、作戦らしい作戦も無いのだが。相手の数が多いのであまりバラバラに戦わないことに気をつけるくらいだろうか。
話し合いの中でも結局それらしい作戦は浮かばなかったので、力押しで行くしか無いだろう。
作戦が決まったので各自装備の確認を行った後、領域に突入することになった。
全員がガーディアンの領域に入ると、いつものように唸り声を上げ大きく……ならない。あれ、どういうことだ?
いつまでたってもガーディアンが大きくならないので不思議に思っていると、突然の地響きと共に蟻達の足元に砂に渦が発生しどんどん大きくなっていった。
蟻達はその渦から逃れようと必死に抵抗するが、渦は空間の半分を占めるほどに大きくなり、渦の勢いには勝てずついには渦の中央に引き寄せられていく。
すると突如渦の中央から激しく砂を巻き上げて大きな魔物が現れ、一匹また一匹と蟻たちを食べていった。
……え、何この茶番劇?
「えっと、この演出必要だったのかしら?」
「いや、意味がわからねぇ」
「いらないですね」
やはり皆も同じ意見のようだ。いや、マジでいらないよね。これ毎回見せるのか……。
とはいえ、第三層のガーディアンはこの蟻地獄で決まりなようだ。モノクルには《デスアントリオン+4》と表示されている。
ガーディアンが予定と違ったことで先ほどたてた作戦は全部無かったことになってしまった。ってどうせ大して作戦にもなっていなかったのだが……。
デスアントリオンとは距離が離れているので今すぐに何かをしてくるわけではないが、注意深く見ていると巣が少しずつ大きくなってきていることがわかる。
つまり戦闘が長期化すると広場全体が巣になってしまうということなのだろう。これは足場を奪われる前に早めに対処が必要かな。
さて、どうしたものか……。
蟻達を食べ終えたデスアントリオンは再び砂の中に隠れて見えなくなってしまった。恐らくは近づいたときしか出てこないのだろう。
そうなると遠くから狙うことも難しいし、洞窟を壊すわけに行かないのでジークの剣も使えない。
どうしてもあれと戦うためには近寄る必要がでてくるようだ。しかし巣の中では踏ん張りも利かないしなぁ。
なんとか巣の外から戦えないかな。
……あ、そうだ。
ちょっと思いついたことがあったので、一人巣に向かって歩き始めた。
「お、おいバーナード! 下手に近づくと危ねぇぞ!」
「そんなに近づかないから多分大丈夫だよ」
ジークに返事しながら、アイテムポーチに手を突っ込みある魔導具を取り出す。
その魔導具とは簡易浴槽だ。僕が外にでる際に必ずアイテムポーチに入れている魔導具で、旅先でどうしてもお風呂に入りたくなり我慢ができなくなった時につかっているものだ。
この魔導具は水を発生させたり、火がなくてもお湯をわかすことができるので非常に重宝している。アイテムポーチに入れていればかさばらないしね。
取り出した浴槽を巣に向けて倒し最大出力にセットしてスイッチを入れる。すると間もなく浴槽から大量の水が巣に向かって放流されていく。
なぜこんなものを出したかというと、もちろんこのガーディアンと戦うためだ。
浴槽から流れ出した水がみるみるうちに巣に溜まっていく――。
数分後、浴槽のスイッチを切る頃には、目の前に大きな水溜まりが出来上がっていた。
最大出力にしたせいか、すごい水量だったな。
「……何だか可哀想になってきたぜ。こんな魔導具が作れる錬金術パネェな、いったいどんだけ水が出るんだよ。てかどこに入ってたんだ?」
「そうね……流石にちょっと可哀想ね」
「流石はバーナード様です」
――まさか、こんなに上手くいくとは思っていなかったのだが……。
僕達の視線の先では水溜まりに力無くプカプカと巨大な物体が浮いていた。
各自が思い思いの感想をボヤいているが、まあ偶然とはいえ上手くいったのなら何も問題はないだろう。
「多分仮死状態だから動き出す前に止めを刺さなきゃね」
デスアントリオンを岸辺まで引き寄せて止めを刺す。
洞窟内でも風の精霊は少しはいるようでデスアントリオンの死体を引き寄せるために使ってもらった。
近くに寄せたおかげで素材の採取もやりやすそうだ。後のこと全然考えてなかったよ。
素材の採取をアリスに任せ、僕は壁や床を調べ始めた。
目の前に広がる淡く光る石をいくつか採取しながら、おもむろにスキャンを行う。
どうもこの鉱石には妖精鋼が少し混ざっているのだが、採取できるほど無さそうだ。
「バーナード様、素材の採取が完了しました」
「うん、ありがとう」
アリスに感謝しながら頭をポンポンと撫でてみる。するとアリスは嬉しそうにうっとりしていた。
さてそろそろ先に進むか。そう思いながら奥を見ると、この空間の入り口と対面に奥に進む通路が見える。
あれ、まだ先があるのだろうか?
「まだ先があるのかな?」
「まだ道が続いてるってことはその可能性もあるな」
うへ、流石にトライアルにも飽きてきたぞ。
「まあ、そろそろ気が重いけど行くしか無いか……」
そう言いながら皆で広場を出ると、目の前には明るい森の景色が広がっていた。何か見覚えがあるので恐らくだが、森の異界のスタート地点だろう。
つまりは――。
「トライアル攻略おめでとうございます。これで貴方達は晴れて探索者として認められました。この後探索者ランクを上げる手続きが必要なのですぐには帰れませんが、お時間まで奥のテントで休憩してください」
ようやくトライアルが終了したようだ。
マリナさんは別件の対応中で、僕達の対応をしてくれたのは別のギルド職員だった。
天獄塔の探索者達もこのトライアルをクリアしたということだから、探索者は相当な実力者が揃ってるのだろう。
ってことは天獄塔の広場で露店開いていた人たちも皆、最低でもトライアルをクリアできる実力者という事になる。
それにはもちろん、あのダニスさんも含まれているということだ。装備のお礼も兼ねてアミルトに戻ったら一回くらいお礼に挨拶しておくか。
トライアル最後のガーディアンは女王蟻ではなく、蟻地獄でした。
ちなみに本当に蟻地獄が水で動けなくなるかどうかは知りません。w




