蟻の洞窟
今回は文字数少なめです。
更新回数は増やせそうですが、読み手的にはどうなんでしょうか?
第三層の入り口は洞窟への入り口になっていた。
「洞窟か……。明かりはどうしようね」
「支給された荷物の中に松明がありますね。恐らくはこれを想定したものなのでしょう」
「そうね多分そうなんだろうけど……、バーナード君どうしようか?」
うーん、単純に明かりの事だけ考えるなら松明なんて面倒な物使うよりも、手持ちの魔道具使ったほうがよほど見やすいから解決するんだけど、……流石に洞窟内を魔導具の光で照らしてしまうと目立つよなぁ。
「エリーシャは光の精霊魔術は使えたりしないの?」
「あー、ごめんね。私はと言うよりエルフは風と水の精霊魔術しか使うことができないのよ。他の精霊は相性が良くないの。その代わり暗闇でも物を見ることはできるわ」
インフラビジョンか……、そういえばそういうのもあったな。インフラビジョンとはエルフやドワーフが持っている能力のことで、光のない暗闇でも熱を見ることで状況を把握することができるようになる能力だ。
この能力があることでエルフやドワーフは洞窟に入る場合でも、特に松明などの光源を必要としない。
……そうか、光を出す魔導具は目立つから使えないが、暗闇を見通す魔導具なら使っても問題は無いだろう。
僕はセントラルのサポートがあれば片目だけどモノクル越しに見えるし、アリスも同じようにして両目で見ることができる。エリーシャは先程の通りインフラビジョンで見ることが可能だ。
これで解決できないのは……、先ほどから一言も言葉を発していないジークだけだ。
ちなみにそのジークは今何をしているかといえば、暗闇が非常に苦手なようで後ろでガクブルしている。アリスにそんな情けない姿を見せて一体どうするつもりだというのだろうか。見せなくても変わらない可能性が高いが……。
「ジーク、どうも君以外は暗闇でも物を見る手段があるみたいだ。辺りを明るくする魔導具はあるにはあるんだけど、流石にジーク一人の為に使う訳にはいかない。申し訳ないが一人だけ松明の明かりで頑張ってもらえるかな」
「お、おおぉ、おう。俺のことは、きききき気にしなくて大丈夫だぜ」
いや、全然大丈夫じゃないだろう。まあでもジークには頑張ってもらうしか無い……か。
「一応カモフラージュとして皆各自一本ずつ松明をもつことにしよう。まあ最悪いざとなったら魔導具で光を灯すから。それじゃあそろそろ出発しようか」
「だ、だだ、だから大丈夫だって言ってんだろ!」
うん全然大丈夫じゃないよね。
洞窟の中に入るとやはり明かりは一切なく無く暗くじめじめしていた。しかしトライアルの攻略にはここを進まなければならないと言うことなのだろう。
出来ることならこの第三層でトライアルも終わってほしいところだ。そろそろ入ってから数日だしね。
そういうわけで第三層の探索を開始したわけだが、予想通りというか何というかジークが全く戦力にならない。
とはいえパーティである以上は一人置いていくわけにもいかないので、ジークにはゆっくり後ろからついて来てもらうことにした。
洞窟内では各所から戦いの音や叫ぶ声が聞こえているが、反響するせいで距離感は全くつかめない。
「さっきから魔物が多いね。ここはアリの巣だったりするのかな」
先ほどから何体か魔物と遭遇しているわけだが、その魔物は全てアリの魔物でそれ以外の魔物とはまだ遭遇していない。となると第三層のガーディアンは女王蟻の可能性が高い。
「そうねさっきから――って、また来たわ! 今度は三匹」
今度は三匹のアリが襲いかかってきた。モノクル越しに表示される名前は先ほどまでと同じく全て《メタルアント・マイナーワーカー》……ではない!?一匹だけ《メタルアント・メジャーワーカー》だ。
「奥の一匹だけ兵隊アリが混ざってる! あれは僕が受け持つから残りの働き蟻はお願い」
「かしこまりました」
「わかったわ」
「お、おう、わ、わかったぜ」
いや、ジークは後ろに下がっていてほしいな。ちらりとジークを見ると変わらずガクブルしているし……。
メジャーワーカーはマイナーワーカーよりも一回りほど大きく、その見た目も凶悪になっている。特に下顎の発達具合が凄く、まるでクワガタのように牙が伸びている。
あれに噛まれたらただじゃすまないだろうな。
アリスとエリーシャがマイナーワーカーと相対するために前に出て、注意を引きながら横によけて中央を空けてくれたので、僕は一拍遅らせて二体の間を通り抜ける。
メジャーワーカーは僕を待ち受けていたのか、僕を挟み込もうと下顎を突き出してきた。少し身体が浮き気味だったので、下から月詠の柄で殴り上げる。
「お腹ががら空きだよ」
顎を殴りあげられたことで完全にお腹を見せる形になったので、そのまま月詠を一閃し首もとから切り落としたが、すぐには死なないようで首なしで暴れたので少しの間受けに徹して死ぬのを待った。
一方アリスはと言うと、あくまで平面で襲いかかるマイナーワーカーに対して、アリスは立体的に戦うため相性は非常に良く。上から的確に関節を狙い足を一本ずつ切り落としている。
アリスの武器も強化しておいて良かった。トライアル初期のレイピアではメタルアントの身体を貫くことは不可能だったと思う。レイジングアウルベアの爪ってすごいんだね。そういう意味では非常にタイミングが良かった。
そしてエリーシャは自身の武器がメタルアントの装甲を抜くことができない事を理解しているのか、僕かアリスが終わるまで受けに徹していたようだ。
僕の方が終わったのを見ていたのか、エリーシャが相対しているマイナーワーカーから少し距離を空けたので、目の前のメジャーワーカーの体を月詠で刺し、マイナーワーカーに向けて丸ごと投げつける。
マイナーワーカーはこれには驚いたようで為す術無くぶつかってしまい。壁に衝突して目が回ったのか身動きが取れなくなってしまっていた。エリーシャも驚いていたようだがそちらは気にしないことにしよう。
挟まれ動けなくなったマイナーワーカーに止めを刺すと、丁度アリスの方も終わったところだった。
え、ジーク?お約束通り後ろでガクブルしていたよ。
「二人共すごいわね。あの硬い装甲を貫けるなんて流石に驚いたわ」
「第一層のガーディアン素材で強化しておいたからね。あれくらいの装甲なら貫くことくらい容易いと思うよ。機会があったらエリーシャの装備も強化してあげようか?」
「え、本当!? それはぜひお願いしたいわ」
パッと明るい表情をしたかと思ったら、また腕に抱きついてきた。やはりエルフの美貌でこの屈託のない笑顔は惹かれるものがあるな。ただ……。
「だから、その絶壁を離しなさい」
「ぶぅ……、邪魔な子ね。その内出し抜いてやるわ。あとその表現の仕方はやめなさい」
間にアリスが割り込みエリーシャを引き離した。そのままアリスが僕の腕に抱きつこうとしてくるが今回は華麗に回避、ちょっと恥ずかしいので頭を撫でて遠慮してもらった。
アリスは頭をなでられるのが大好きなようだ。幸せに浸っているような表情をして撫でられている。
確かにあの感触は素晴らしい破壊力を持っているけど、別に対抗はしなくていいんだよ?
どうもアリスは僕が関わると対抗したがるみたいだが、もしかしてファザコンだったりするのだろうか?
気を取り直して素材の回収を行ったが、さすがはメタルアント。なかなかの強度を持った素材を採取することができた。
これは今度の強化錬金が楽しみだ……。早く夜にならないかなって、洞窟の中じゃよくわからないな。まあ、洞窟抜けるまでは我慢するか。
このペースだとガーディアンと戦う前にかなりの回数戦わないといけなさそうだしなぁ。
ジークは暗いところが怖いらしいです。
第一話にコメディ要素が少ないなぁと感じたので、少しだけコメディ要素を足してみました。




