ジークの魔道具
先ほどの投稿からもう少し書けたので投稿しました。
連続投稿だと三千文字くらいが書きやすいですね。
エリーシャの体調も特に問題は無さそうなので第二層の探索を再開することにしたのだが、エリーシャは僕の近くを歩いて離れようとしなかった。
「改めて助けてくれてありがとう、バーナード君」
「……助けたのは僕じゃなくて僕達だよ」
「あら、アリスは従者なんでしょ? それならバーナード君にまとめて言うわ。ジークには殺されそうになった記憶ならあるけど感謝は必要?」
エリーシャの言葉を聞くなり呻きながらジークが膝から崩れた。アリスに怒られたことを思い出してしまったようだ。心が折れなければ良いけど……。しばらくそっとしておくかと思ったが、なんとか持ち直して僕を呼ぶのでエリーシャから離れジークに近づくと小声で耳打ちしてきた。
「そういやエリーシャのドタバタで聞き損ねてたが、あの剣から出たあぶねえやつはいったい何なんだ? マジで怖ぇんだが」
ああ、あれは僕もビックリした。いつもの感覚で作ったのだが、想定していたよりもかなり威力が高かったのだ。これも僕の能力が高くなった影響なのだろうか?何にしてもちょっと危ないから調整したほうが良いかもしれない。
「思ったより威力が高かったから慣れないなら夜にでも調整しようか?」
「あー、いやこのままで構わねぇぜ。要は使い方だろ? あの変なカートリッジだっけか? あれがなけりゃポンポン撃てるもんでもねぇし。あの威力が必要な場面がねぇとも限らねぇ。撃つときは気をつければ良いだろ?」
「変なカートリッジじゃなくて魔燃料。簡単に言えばあの魔道具を動かすための燃料だね」
「……ちょっと待て、それ聞いてねぇぞ。アーティファクトじゃあるめぇし、あんなバケモンみたいな威力出せる魔道具なんてそれこそ聞いたこともねぇ」
魔道具という単語が出た瞬間にジークが固まる。あれ、言ってなかったっけ?刀身を強化した事で魔道具のエネルギーに耐えられそうだったので、魔力波を飛ばせるように付加しておいたのだ。
ジークの認識ではと言うより現在の常識では魔道具は低出力高燃費なので当然といえば当然か。
「あれが錬金術の本当の姿だよ。魔道具のことはなるべく広めないようにね」
「え、あれってアーティファクトじゃなくて魔道具なの!? もしかして近代錬金術?」
え、聞かれた!?そう思い驚いて振り返ると少し離れたところでエリーシャがびっくりしていた。う、声が大きかったか?いや、違うな多分精霊魔術か……。これは全く警戒していなかった。
「盗み聞きは趣味が悪いよ……。はぁ、聞かれたなら仕方がないか。そうだよ、ジークの武器は近代錬金術製の魔道具だよ」
「なんか男二人でこそこそ話してるから色恋ネタかと思って、つい聞き耳たてちゃったのよ。本当ごめんなさい。話を聞く限りだとバーナード君が錬金術師ってことなのかしら。まだ生きてたなんて驚きだわ」
エリーシャは近代錬金術の存在を知っているようだ。確かにエルフは長命な種族し世界中を旅していたなら知っていてもおかしくはないか……。エリーシャは何歳なんだろうか。
「すまないけど、このことは魔術師連中に漏れないようにお願いしたいんだけど良いかな? トラブルはなるべく避けたいんだ」
「ふふ、もちろんよ。エルフは命の恩人を売るような真似は絶対にしないから安心して。それよりその魔道具を見せて欲しいんだけど構わないかしら」
エリーシャはジークから剣を受け取ると、真剣な眼差しで見始めた。えっと、そろそろ出発したいんですが……。結局それから三十分近く時間をロスしてしまった。
魔道具を眺めながらその作りに感心しているところを見ると、結構錬金術のことを知っているのかもしれない。
「なあ、さっきからずっと蚊帳の外なんだが、その近代錬金術ってのはいったい何なんだ?」
「近代錬金術っていうのは今から約百年前に世界中の構図を塗り替えた奇跡の如き技術のことよ。錬金狩りのせいで錬金術は絶滅したと思っていたのだけれど、まだ生きていたみたいね非常に興味深いわ。それにこんなすごい技術は初めて見たわバーナード君は一流の錬金術師ね」
「すげぇなそりゃ、まあ只者じゃねぇとは思っていたが……いまさらか。それよりもそんな昔のことを知ってるエリーシャは一体何歳――」
「それ以上言ったらタダじゃ置かないわよ」
「……す、すまねぇ」
ジーク、女性に対してそれを口にしてはいけない。それにしてもエリーシャの説明を聞いてもジークは耐性が付いてきたようでそれほど驚くことはなかった。ここ数日の実体験がものを言ったようだ。
……それよりもそろそろ先に進みたいんだけど良いかな?
エリーシャがトロールに捕まった際に幾つか荷物を落としてしまったようで、その荷物を回収するために少しだけ寄り道をすることにした。
エリーシャの荷物はわりとすぐに見つかったのだが、その荷物から少し離れた木の根元にも荷物が落ちていた。恐らくエリーシャのパーティメンバーだった者達の荷物だろう。
しかしその死体は見当たらない。はて、エリーシャが捕まったのはまだそれほど時間は立っていないはずだが……。そう思いエリーシャの方を見ると、エリーシャもまた狐につままれたような表情をしていた。
「そんな……、死体が消えてる」
「別のトロールが持ち帰ったのか? それともそこのトレントが犯人か?」
荷物近くの木を見てみる。モノクルに表示されている名前は《マンイータートレント》。
「死体はそこのトレントが食べたみたいだね。マンイータートレントらしいけど、どうしようか? 見た感じは動けないようだし近づかなければ無視できるけど」
「探索者証くらいは回収したいわ。裏切られたとはいえ一応パーティメンバーだったわけだし。それに残った荷物の中に何か使えるものがあるかもしれないでしょ? 問題はどうやってあのトレントを倒すか……ね」
確かに探索者証くらいは回収しても良いだろうし、荷物も放っておけばどうせここで朽ち果てていくだけだ。であれば有効に利用させてもらおう。
しかしエリーシャはパーティメンバーが殺される現場を見ているので少し恐れを抱いているようで、かなり警戒をしている。
「エリーシャどうしたの?」
「トレントの射程内に近づくと大量の枝が四方八方から襲いかかってくるのよ。あんなの絶対に捌き切れないし、人間が肉塊に変わるのも一瞬だったわ……。とはいえ離れて遠くから精霊魔術で攻撃してもレジストされてしまうの」
「すでに試したわけか、了解。ジーク、早速出番だよ。はいカートリッジ」
「あいよ。皆離れてな」
ジークはカートリッジを受け取り僕達が離れるのを確認すると、早速柄に取り付けトリガーを握りしめた。
先ほど同様刀身から赤い光が漏れ始め次第に大きくなっていく。
「食らいやがれ!」
ジークは掛け声とともに剣を横薙ぎに振りぬく。すると再び赤く光る斬撃がトレントに向けて飛んで行く。
マンイータートレントはまるで慌てるように大量の枝で斬撃を防ごうとするが、斬撃に触れた枝は例外なく切り裂かれていき斬撃が幹に到達するとその勢いのままぶった切っていった。
哀れマンイータートレント、向こうからすれば相性は最悪だろう。
魔燃料は必要だが一体につき一回分なら非常に安上がりだ。何より安全だし魔石がマンイータートレントから取れれば魔燃料を数回分作れるしね。
マンイータートレントを倒したことで安心したのか、エリーシャは自分の荷物を確認し始めた。
素材回収はアリスに任せ、荷物の選別は後回しにしてアイテムポーチに放り込んでいく。
「おお、容赦ねぇな。全回収かよ」
「いや、中身の選別は夜にでもやろうと思ってね」
荷物の中に要らないものも多いとは思うがアイテムポーチを持っている身としては、わざわざ危険な場所で選別をする必要など無い。
ジークもそれを聞いて納得したようだ。興味を失ったのか今度はアリスに近づき手伝いをしようとするが断られ、ついには素振りをし始めた。いやそこは休憩しておいてくれ。




