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エルフ=野菜

一話更新毎のPV数が少しずつ伸びてきましたが、戦場は遥か先ですね。

精進あるのみです。


一話毎の文字数はどれくらいが良いんだろう。

「バーナード、今日こそはちゃんと……って起きてんじゃねぇか。今日は槍でも降るんじゃねぇか?」


「ん、ああもう朝か……集中すると時間が過ぎるのが早いね」


 確かに起きられないから言われても仕方がないが現在、日が明けて翌日。昨日ジークとアリスの装備を受け取ってから、テントに篭って装備の強化を始めたのだが……、気がついたら朝になっていた。


 驚くことにかなり集中して徹夜をしたというのに、大して疲れていないのだ。正直なところ全く眠くない。


 亜神になってから昼夜が逆転することはあっても、徹夜は初めてだったので気づかなかったのだが、まさかと思うがこの体寝なくても大丈夫なのだろうか?


 長年の習慣で毎日寝るのが当たり前だと思っていたので、寝ないという選択肢を全く思いつきもしなかった。


 でも、もし本当に寝なくても大丈夫なのであれば、使える時間が大幅に増えるので異界を越えて家に帰った後にも研究が捗ることだろう。


 本当に寝なくていいかどうかは、とりあえず数日は様子を見たほうがいいが、寝なくて済むのであれば、寝起きの事を気にしなくて良いのだ。これは凄い、凄いぞ!


「なんかニヤニヤしてて怖いんだが……」


「ジーク、バーナード様に失礼ですよ」


 おっと、期待のあまりに考えを遥か遠くに巡らせてしまった。でもそんな引くほどニヤニヤしてたかな。ジークがアリスに怒られてヘコんでいる。ざまあみろ。


「久しぶりに色々弄っていたら楽しくなってね、頑張っちゃったよ。よいしょ」


 そう言いながら、出来上がった装備を床に並べていく。


 森の異界で手に入った素材縛りで強化したので強化素材が少なかったが、中々良い感じに仕上がったと思う。……のだが、ジークの反応がおかしい。


「バーナード、こりゃあ一体なんだ?」


「ははは、何って、ちょっと見た目は変わったかもしれないけどジークの装備じゃないか」


「……いや、ちょっとどころか原型を留めていねぇんだが。確かに好きにいじっていいとは言ったが」


「ん、そうかな?刀身にレイジングアウルベアの爪を錬成したから、ちょっと黒くなって刺々(とげとげ)しくなったくらいじゃないか。その代わりに強度はかなり上がって切れ味も結構増したと思う。他にもちょっとした細工をしたけどその辺りは追々説明するよ。防具関連は軽くしておいたから動きにくいってことはないと思う」


 説明にいまいち納得はしてもらえていないみたいだが、装備を手に取るとその軽さや硬さに驚いているようだ。


 まあこれで魔物の攻撃を受け止めても簡単に壊れるようなことはないはずだ。ジークは避けるのが苦手なようなのでかなり重宝してもらえるものだと思う。


「装備に関しては後で具合を確かめてもらうってことで、ひとまず朝ごはんにしようか」


「あ、はい。準備はできていますので何時でも大丈夫です」


 本当にアリスには毎日感謝だな、アリスがいなかったら調理済みの食料をアイテムポーチに入れて済ませたとは思うが、こういった満足感は得られなかっただろう。


 さて、今日は昨日に引き続き第二層の探索をするわけだが、昨日はトロールにしか遭遇しなかったから今日は他にどんな魔物が出るか調べられると良いな。できれば第二層のガーディアンまで辿り着けるといいんだけど。


 しばらく草原を歩いていると、正面の丘の向こうから必死に叫ぶ女性の声が聞こえてきた。


「誰か、誰か助けて!」


 声の限り叫ぶその切羽詰まった声に導かれて丘を越えると、その先で数体のトロール達が女性を縛り付けた棒を運んでいる最中だった。


 少し距離があるがトロールに捕まっている女性の特徴は非常にわかりやすい、金色の長い髪に長い耳そして淡麗な容姿とくれば誰でもわかるとは思う。


「エルフですね」


 確かにエルフなのだが森の守り手であるエルフがなぜこんなところにいるのだろうか?ここは探索者ギルドに管理された森の異界だ、偶然でもエルフが迷い込むことなどありえない。


 とすれば答えは一つだけになるのだが……、そうなると余計に理由が分からない。なぜ森の守り手であるエルフが探索者になる必要があるのだろうか?


「おい、バーナード助けるぞ!」


「いや、ちょっと待ってくれ。助けるかどうかは少し確認してからにしたい」


 運んでいる間はすぐに殺されるということは無さそうだから、助けるかどうかの判断はあのトロールが知能を有しているかどうかで決めようと思う。


 少々薄情に見えるかもしれないが、当然のことだが種族によって文化は大きく異る。


 昔世界を回っていた頃にトロールの集落を訪ねた時の事。集落のトロール達に親睦の証としていくつかの魔道具を贈り物として渡したところ、非常に喜んでもらえ歓迎されたが、その時にエルフを食べさせられそうになったのだ。


 実は彼らトロールにとってエルフとは栄養価の高い野菜である。しかし普段エルフは森の深いところに住んでいるため、トロールの領域では中々手に入るものではなく領域に入りこんだはぐれエルフは貴重であり高級食材になるというわけだ。


 もちろん僕は食べることはしなかったが、彼らの文化そのものを否定するわけではない。もしこのトロール達に知能があるのであれば、彼らが狩猟した獲物に手を出すわけにはいけない。


 種族間の文化を否定することになり、ひいては種族間抗争につながりかねない。捕まっているエルフには悪いがさすがにそれは避けるべきだろう。


 このことをジークに伝えた上で、このトロール達が知能を有しているかどうかを確認することにする。もし知能を有していなければ、それは文化ではなく野生動物の本能と違わないからエルフを助ける事が可能となる。


 なるべく友好的な態度で接しようと笑顔で近づいて様子を見てみることにする。


 僕が近づいた事に気付いたトロールが明らかにこちらを警戒をし始めた。確かに貴重な高級食材を運搬しているのであれば見知らぬ輩が近づいてきたら警戒くらいはして当然だろう。


「お、お願いします! 助けてください!」


 トロールが警戒しだしたことで捕まっているエルフもこちらに気付いたようだ。必死にこちらに訴えかけている。あまりに必死なのに綺麗に見えてしまうのはさすがはエルフだと思うが、まだ助けることができるかはわからないのであまり見ないようにしておこう。


 ひとまずエルフのことは無視してトロールに話しかけることにする。


「失礼。貴方達の獲物を盗るつもりはありませんので、武器を下ろしていただけませんか?」


「ちょ、なんで無視するんですか! ねぇ! 助けて下さい!」


「オオオォォォ!」


 トロール達は雄叫びを上げ棒を地面に突き刺し、こちらに一斉に襲いかかってきた。うん、こいつらも知能は無いみたいだ。異界のトロールは本能しか持ち合わせていないということなのだろう。


「アリス! ジーク! エルフを助けるよ」


「かしこまりました」


「待ってたぜ!」


 少し近づきすぎたので一旦距離を取るために後ろへ飛びながら二人に声をかけ、アイテムポーチから月詠を出し構える。


 トロールは三体、対してこちらも三人。一対一の構図が出来上がる。


 僕の目の前にいるトロールはこちらに駆け寄り両手で大きな斧を振りかぶり斬りかかってきたので、上段で受け止める。トロールの膂力(りょりょく)は人間と比較に成らないレベルで強大だが、身体能力が上がっているせいかそれほど脅威では無さそうだ。


 視線を周りに向けるとアリスは軽いステップで避けながら手や足を切りつけていて、ジークは受け流しながら反撃の機会をうかがっていた。二人共防具が軽くなったぶんこれまでよりも明らかに動きが良くなっている。ジークが少し心配だがこの調子なら大丈夫そうかな。


 目の前のトロールに視線を戻し、トロールを押し返す。さすがにトロールは驚きを隠せないようで、大振りな攻撃が増えてきた。我ながらこの小さい体のどこにこんな力が眠っているのか不思議になるが、これが亜神の力ということなのだろう。


 せっかくの力だから有効的に使わせてもらうとして、今回はなるべく力押しでどれくらい行けるのか試してみることにしよう。


 トロールの強烈な攻撃に対し正面から月詠を打ち当てると、斧は大きく弾き返されどんどん欠けていくのがわかる。あまりの衝撃に耐えられなかったのか、数合打ち合ったところで斧が柄の付け根からへし折れ、その勢いでトロールの顔面に向かって飛んで行くがトロールはギリギリそれを(かわ)した。しかし体勢が崩れ武器も失ったことで僕の次の一撃で脳天を真っ二つにした。


 ……仰向けに崩れ落ちるトロールを眺めながら一息つく。月詠のおかげでもあるけど人間の力じゃない。魔道具で身体強化していないのにトロール相手でも全然押し負けなかった。


 二人の方はどうだろうか、まずはアリスの方を見てみる。


 アリスの方はトロールの攻撃がかすりもしていないところを見る限り、全く危なげないがいかんせん一撃が軽いためとどめを刺すまでは時間が掛かりそうだ。あまり時間が掛かりそうならサポートが必要だろう。


 ジークの方は受け流す事に集中しているのか、なかなか攻撃側には回れないようだ。強化したバスタードソードに対してトロールの斧の強度が低いため、こちらの斧もじきに限界を迎えるかもしれないが、ジークがそれまで保つか怪しいかもしれない。


「ジーク、こっちは終わったから手伝うよ」


「も、もう終わったのか。さすがだな、くっ! こっちはなかなか反撃できねぇぜ」


「このカートリッジを柄にはめて手元のトリガーを握りしめて」


 ジークの前に出てトロールの攻撃を受けながら、アイテムポーチからカートリッジを取り出しジークに投げ渡す。


「おっとと、なんだよこれ。ここにつければいいのか?」


 ジークはカートリッジを受け取り損ねて落としそうになったが、なんとか受け止め柄の後ろのくぼみにカートリッジを差し込むと、持ち手のトリガーを握りしめた。次の瞬間黒い刀身から赤い光が漏れ始めた。


「よし、その場所からでいいからトロールを切りつけるつもりで全力で振りぬいて」


「よ、よくわかんねぇが食らいやがれぇぇ!」


 トロールの前から飛び退いてジークに指示を出すと、ジークは剣を横薙ぎに振りぬいた。剣が描く軌跡の通り赤い斬撃が空を切り裂きながらトロールに飛んで行く。


 トロールはその一撃を避けることができず斧で受け止めようとするが、斬撃はそのまま斧を切り裂きトロールの胴体を真っ二つにしたが、そのまま勢いが止まらず、アリスともう一体のトロールに向かって飛んで行く。あ、やべ。


 アリスは間一髪その斬撃に気づいたのか、トロールの腕を蹴りながら上空に飛び上がり斬撃を避けることができたが、トロールはその斬撃に気づかないまま斬撃によって真っ二つになった。


 よ、予定よりも威力が高かった。もしかして錬金術の腕も上がったのかもしれないな。スパイダーネットボムの時も少し多い気はしたけど偶然ではなかったようだ。


「きゃぁ! きゅぅぅ」


 ドスンという音と同時に聞こえてくる女の子の情けない声。目を向けるとそこに見えるのはジークの斬撃で切れた棒と縛られたまま地面にたたきつけられたエルフの姿だった。


 お、おうマジで危なかったかも……、もう少し高い位置だったら当たってたな。……ジークの視線が痛い。が、ジークはアリスの視線に気づくと突然慌てだした。


「ジーク、後で話があります」


「あ、アリスさん! いや、これはわざとじゃなくて――」


「後で話があります」


「……はい」


 アリスはジークに怒りをぶつけることに決めたらしい。ジークは正座をしながら力なく返事を返していた。


 ちなみにエルフの子は落下の衝撃で気を失ってしまったらしい。しょうがない、一旦この辺りで休憩を取ることにしよう。




 少し探したら手頃な場所があったので、テントを一つだけ設営しそこで結界を広げてエルフの子を寝かせる。


 男がいると目が覚めた時に警戒されかねないので、看病はアリスに任せることにした。


 あれからジークになにか言われるかと思ったが、ジークはジークでアリスに怒られる事が確定したショックで一杯一杯だったようで特に何も言われることはなかった。


 頼んだよジーク、君のことは忘れない。

知ってる人は知っている。エルフは野菜。エルフは野菜。

このネタって使っても問題ないネタでしょうか?

魔道具やり過ぎだったかも……、加減がわからない。w


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