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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
探索者トライアル編

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魔道具のお披露目

朝ってなんであんなに眠いんでしょうね。

「それじゃあ、あのガーディアンを狩りますか」


「はい」


「……そうだな」


 昨夜のトラブルから明けて翌日、僕達の真上に到達した異界の太陽が、森の広場とガーディアン・レイジングアウルベアを照らしている。


 え、朝の間違いじゃないかって?そういえば昨日そんなこと言ってたね。うん、例によって例のごとく起きられなかったよ。おかげさまでジークの刺すような尖った視線が、僕のメンタルをリアルタイムに削っている。


 こんなことなら昨日あんな宣言しなければよかったなぁ。朝からガーディアン狩りだとか言っておいて、朝起きられないとかどこのコメディーだろうか。


 僕とは違いジークはガーディアンに挑む気満々で朝早く目が覚めて気力十分、非常に良い目覚めだったらしい。羨ましいね。


 準備万端で待っていたが、しかし待てども待てども起きてこない僕を待っている間に、数組の探索者パーティがガーディアンに挑んだらしい。しかも無事に討伐し先に進んでいった為、さすがに業を煮やしたジークが僕を引きずり起こすためテントに入ってきた。


 ところがアリスに怒られ、ジークはあえなく何も言えずに撤退。そうこうしている間に今の時間になってしまったというわけだ。


 ちなみに昨夜ガーディアンに負けた探索者パーティはリタイアする者、再挑戦する者とやはり意見が別れたらしい。そうなるとまともにパーティは機能しない、改めて態勢を整えるため、朝のうちに引き返したとのことだった。


 ところで、ガーディアンって討伐されても居なくはならないみたいだ。他パーティの様子を見ていたジークの話によると、ガーディアンが討伐されると一時的に討伐者以外は入れなくなり、数十分後にガーディアンが復活すると他の者も入れるようになるということだった。


 確かにガーディアンが一回討伐したきり出てこないのでは、一組しかトライアルに合格できないということになってしまうのでこちらとしては助かるんだが。


 異界というのは謎が多い。一体どういう仕組みなのだろうか?


「皆準備は良いかい?」


「はい、問題ありません」


「準備なら朝からできてるぜ!」


 ごめんなさい、もう聞くのはやめよう。

 気を取り直して周りの気配を窺うと、幸い今は周りに他の探索者はいないようなので乱入の心配は無さそうだ。


 ガーディアンと戦うなら今かな。




 僕らが広場に足を踏み入れると、ガーディアンは待ちわびたかのように唸り声をあげ、身体を震わせながら巨大化を始めた。


 昨日もそうだったが、身体からバキバキ音が聞こえるし牙とか爪とか伸び始めて凄いのでちょっと気持ち悪い。


 <<レイジングアウルベア+3>>


 昨夜と同じで人数分のプラスが付き強化されるみたいだ。つまり対ガーディアンに関しては少数精鋭で挑むのが一番良いということなのだろう。


 朝の間に抜けていったパーティは多くても六人パーティだったらしく、昨夜のような事件は発生していないようだ。


 巨大化が止まり更に大きな唸り声を上げると、ガーディアンがこちらに襲いかかってきた。


「アリス、ジーク、作戦は昨日の通りでいくよ」


「お任せください」


「任せとけ! おおぉぉぉぉ!」


 僕が左足側に位置取り、ガーディアンが上から振り下ろした大きな爪を、セントラルのサポートを受け、より体勢を整えにくい方向を意識して月詠で受け流す。


 アリスは足の速さを活かして大きく回りこみ、ガーディアンの左側面から背面を位置取り、両手に持った剣を構えガーディアンの攻撃を付かず離れずで避けながら牽制をはじめる。


 一方、ジークは右足側前面に位置取り、勢い良く振り下ろされた腕をバスタードソードでしっかりと受け止めた。って、受け止めるなよ。本当に話を聞いてたのか?初手でいきなり作戦破るなよ……。


「ジーク! ガーディアンの攻撃をまともに受け止めないように気をつけて。装備がトライアル終了まで保たなくなる可能性がある」


「すまねぇ。つい、いつもの癖で受け止めちまった。なかなか難しいもんだ……おっと」


 一回受け止めた後は、意識して受け流す方向に変えたみたいだが、ジークの戦闘スタイルは力でぶつかりあうタイプらしく、避けながら戦うことは慣れていない為、思うようには行かないようだ。


 むう、慣れないことをさせるべきじゃなかったかな。とはいえジークのバスタードソードは見たところ特別な素材を使っているわけでは無さそうなので、このまま受け続けたらトライアルの途中で折れてしまいかねない。


 いっその事、強化錬金でバスタードソードを強化するか?でも錬金術のことは話してないからなぁ。勝手に強化するわけにもいかないしどうしたものか……。


「おいバーナード気をつけろ!」


 ジークの大声で視線をガーディアンに戻すと、振り回されたガーディアンの腕が目の前に迫っていた。


「……大丈夫見えている」


 考え事をしていたのでちょっと注意がおろそかだったが、セントラルのサポートのお陰でちゃんと見えている。大振りな一撃を最小限の動きで回避し、死角からカウンター気味にガーディアンの左足を斬りつける。


 当たりは浅かったが、十分な痛手を与えることができたようだ。ガーディアンは低く鳴き苦しそうにしている。これで機動力は大きく落ち込んだはずだ。


「こっちも忘れんな!」


「グオァァァ!」


 ガーディアンが痛みのあまり僕に注意を向けたことで、ジーク側への注意がそれてしまったようだ。ガーディアンの右足にジークの渾身の一撃が見舞われた。


 両足の自由を奪ったことでガーディアンの怒りは頂点に到達したのか、闇雲に腕を振り回して近づかせまいとしている。


「動けなくなってくると羽を飛ばして来やがるぞ! さっきの奴らはこれでかなり痛い目にあっていた」


 事前に他のパーティの戦いを見ていたおかげで、どんな戦い方をするのか知ることができたようだ。確かにアウルベアは動けなかったり距離が離れると、羽を飛ばして攻撃してくる。


 昨夜の救出時にも視界が悪くなった時に羽を飛ばしてきていた。避けた後で回収した羽を見たところ、ガーディアンであるレイジングアウルベアの羽はかなり殺傷力が高そうだった。僕の防具を貫くことはできないだろうが、ジークとアリスの防具くらいなら平気で貫いてくるだろう。


 アリスは問題なく避けるだろうとは思うが、問題はジークだ。十中八九避けきれずに手痛いダメージを受けることだろう。対策は……アレしか無いか。


 ガーディアンが大きく振り回してきたので少し距離を取ると、ガーディアンは身体に力を溜めるような体勢を取り、羽が逆立っていくのがわかった。そろそろ来るか?


「くそ、来やがるぞ! あ、アリスさん気をつけやがってください」


「私の心配はいりません」


「――こんなこともあろうかと作っておきました。どん!」


 こんな時にまでブロークンな言葉を使うジークと、それをあしらうアリスを尻目にアイテムポーチから拳大の玉を取り出し、ガーディアンの頭を目掛けて投げつけた。


 放物線を描きながら飛んで来る玉を、ガーディアンは邪魔そうに腕を振り回し弾き落とそうとするが腕が玉に当たった瞬間、ボンッという音と共に玉の中から大量の白い網のようなものが振りかかる。


 白い網を身体に浴びたガーディアンがそれを振り払おうと暴れるが網が破れる気配は全くなく、余計に身体にまとわりつき暴れても暴れても振り払うことができずにいた。


 この網はジャイアントスパイダーの糸を素材にして作られているので、非常に丈夫且つ厄介な粘着力も持っている。またキラーバイパーの毒も使ったので時間が経てば経つほど身体が麻痺してきて余計に抜け出せなくなる。


 名前のごとく怒り狂ったガーディアンだったが、羽を飛ばそうにもあれだけの量の網が絡まってしまっては、まともに飛ばすこともできないようだ。


「うん、狙い通りだ」


「……いや、いやいやいや、ちょっと待てなんだありゃ」


 状況の理解が追いつかないのか、動くことがままならないガーディアンを放置して質問を始めるジーク。


「えっと、スパイダーネットボール?」


「なんで疑問形なんだよ。てか、あんなもんあるなら最初から使いやがれ」


「いや、そういえば名前つけてなかったなと思ってね。あれは僕が昨日作っておいたんだ。避けられると意味がなくなっちゃうから足を止めるまでは温存しておいたんだ。間違えてジークやアリスにあたったら困るだろ?」


「作ったって……お前、……はぁ、なんかいちいち驚くのも疲れてきたな。本当に何者なんだ?」


 まあ、さすがにあんなもの出したら気にならないわけがないか……、近代錬金術の魔道具なんて見たことないだろうし。


「ジーク、バーナード様の事を詮索する様な言動は控えていただけますか?」


「あ、アリスさん。い、いや詮索ってわけじゃ……」


 アリスに怒られてキョドるジークを見ているとちょっとかわいそうになるな。


 実際問題、必死になって隠すようなことでもないし、排斥派の魔術師連中がまだ存在するのかわからないが、そいつらの耳にさえ入らなければ何の問題もない。


 信用ってわけじゃないが、昨夜の一件といい、ジークは裏表無さそうだから別に説明しても構わないかもしれない。ジークが魔術師と懇意にしている姿なんて想像もできないしね。


 何よりも近代魔道具無しでは色々と不都合が出てきそうだ。


「いいよ、アリスありがとう。ジーク、そのことはあとで落ち着いてから話すことにするよ。ただ……、聞く以上は必ず他言無用でお願いしたいんだ」


「心配すんな、人の秘密を言いふらして喜ぶ趣味はねぇよ」


「わかった。さて、そろそろ可哀想だしとどめを刺そうか」


 話している間もガーディアンは必死に網から逃れようとしていたが、網の粘着力も相まって未だ抜け出せる気配はなく、麻痺毒が身体に回ってきたのかかなり大人しくなってしまっている。思ったより麻痺毒の効果も高くなっているようだ。


 これだけ大人しくなれば襲われる心配は全くないとは思うが、とはいえ誰かに見られる前に始末しておくべきだろう。のんびりしていたら誰かが広場に近づいてくるかもしれないし。スパイダーネットは他パーティに見られないようにしないといけない。




 ガーディアンに(とど)めをさした後、素材を回収しようとしたのだが、思いの外手こずってしまった。スパイダーネットが邪魔な上に粘着もすごかったので、のせいで質の良いきれいな状態で採取できた羽はわずかだったのだ。その代わり牙や爪、魔石に関しては十分満足できるものだった。


 ガーディアンと何度も戦えるのであれば、結構な数が手に入るのだけどなあ、それどころか数十人動員すればガーディアンも強化されて当然その素材もかなり期待ができる……ってさすがに無理かなぁ。


「そういえばガーディアンは何回も討伐できるのかな?」


「うーん、さすがに何回でもってのは無理じゃねぇか? 試すにしてもトライアルに無事合格してからで良いだろ。そんなことよりそろそろ先に行こうぜ」


 無理……か、まあ、確定情報ではないし必要ならその内また確認すれば良いから、今は後回しにしよう。


 それに数十人の動員なんてした日には近代魔道具を見られてしまうから、そのあたりも考えなければいけない。


 ああ、始末を忘れていたけどスパイダーネットが人目につくと困るので、死体ごとスパイダーネットを燃やしてからその場を離れ奥に進むことにした。




 一階層の森を抜けた先は、ところどころに大きな木は生えているものの非常に見晴らしの良い広い草原になっていた。


 これが第二層か……あの遠くに見える岩山の方に行けばいいのかな。


 この階層ではまだどんな魔物が出るかわからないので今日はあまり遅い時間まで探索せずに、早めに野営の準備を始めたほうが良さそうだ。


 結界さえ張ってしまえば安全に確認を行うことができるから、見通しの良い場所を確保できれば労せずに魔物の情報を集めることができる。


 うん、いい考えだ。本格的な探索はまた明日から行えばいいしね。


いつもより文字数が少ないので、後で少し付け足すかもしれない。

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