第十三話 地下倉庫には行かないで
第十三話 地下倉庫には行かないで
【地下倉庫には行かないで】
真っ黒なパソコン画面に、
その文字が浮かび上がる。
305号室の空気が止まった。
「……地下倉庫?」
俺が思わず呟く。
ひまりの顔が引きつる。
「え、このマンション地下あるの!?」
「あるわよ」
麗華が普通に答えた。
「古い備品とか置いてるだけ」
「初耳なんだけど!?」
「管理人なら把握しなさい」
厳しい。
でも。
問題はそこじゃない。
なぜ、
こんなメッセージが出るのか。
結衣が不安そうに聞いた。
「……危ない場所なんですか?」
その時。
三枝さんが少し困った顔をした。
「地下ねぇ……」
「何かあるんですか?」
俺が聞く。
三枝さんは曖昧に笑う。
「昔から、あんまり近づかない方がいいって言われてるの」
「理由は?」
「湿気すごいから」
普通だった。
だが。
ひまりは震えていた。
「いや絶対それだけじゃないよぉ……!」
すると。
榊がぼそっと言う。
「……昔、水漏れ事故あった」
全員が見る。
「地下の配管壊れて、一回かなり水溜まったんだよ」
「へぇ」
「その後から変な噂増えた」
やめろ。
ホラー補強するな。
その時。
カタカタ。
またパソコンが動く。
全員ビクッとなる。
新しい文字が打ち込まれていく。
【お願い】
【あの部屋を開けないで】
「……あの部屋?」
俺が呟いた瞬間。
ブツッ。
また画面が消えた。
静寂。
誰も喋らない。
怖い。
普通に怖い。
だが。
「……地下、見に行く?」
と言ったのは、
ひまりだった。
「え!?」
「いや気になるじゃん!」
さっきまで一番怖がってたのに!?
「怖いけど気になるの!」
好奇心が勝ったらしい。
麗華は頭を押さえる。
「馬鹿なの?」
「でも放置も嫌じゃない?」
それは確かに。
すると。
結衣が小さく言った。
「……私も気になります」
「朝倉さんまで!?」
結衣は少し迷ってから続ける。
「なんか……助けてって感じがするので」
その言葉で、
305号室が静かになる。
紗雪が窓の外を見る。
雨はまだ降っていた。
そして。
「……今から行くの?」
眠そうな声。
でも。
完全に止める感じじゃない。
つまり、
行く流れである。
俺は天井を見上げた。
なんでこうなった。
ただの管理人のはずなのに。
数分後。
俺たちは懐中電灯を持って、
マンション一階奥へ来ていた。
地下倉庫へ続く古い扉。
錆びた鉄製。
小さな札。
【関係者以外立入禁止】
「……雰囲気ありすぎ」
ひまりが俺の服を掴む。
結衣は緊張している。
麗華は冷静。
紗雪は眠そう。
榊はなぜか慣れてる。
三枝さんだけは来なかった。
「無理しないでねぇ」と言っていた。
優しい。
俺は地下扉を見る。
そして。
ゆっくりノブを回した。
ギギギ……
重い音。
冷たい空気。
暗い階段が下へ続いている。
その瞬間。
――ピチャ。
下から、
水音が聞こえた。




