10話
大陸全土を巻き込んだ大戦。それは、主に二つの派閥に分かれて行われた。北部同盟連合と、ガクとチユキが所属していたアイメルト家だ。
何度も休戦をはさみながら、散発的な戦闘が続いた。そして、アイメルト家は内部抗争により、壊滅的な被害を出し、覇権を北部同盟へと譲った。
アイメルト家の王家や政治家は粛清され、騎士団は解散し、国も新しく生まれ変わろうとしている。
ガクは、行き場を失った一人だった。何とか薬売りの家の転がり込み、老婆と暮らすに至ったのだ。ここに居続ける為には、かつての宿敵であることを、フェルグス達に言わなければならない。
ふと、フェルグスの声が脳裏に響く―
『お前は、出来損ないなんかじゃない。強力な異能も、高度な技術も、それらは強靭で柔軟な心あってのものだ。心は、全ての土台なんだ。それでいて、最も鍛えるのが難しい。ガク、お前には、素晴らしい心がある。それは誇って良いんだ』
僕を受け入れてくれる人が居る。そこで、もう一度、やり直したい。ふと、ガクは、ぎゅっと拳を握る。
「ここに居たい……」
ガクは寝付けぬまま、朝を迎えた。寝不足なのに、頭は妙に冴えていた。フェルグスのいる領主の館へ向かう。しかし、脚が動かない。
行きたくない―
ぐるぐると迂回し、やっと領主の館にたどり着いたのは、一時間後だった。運悪く、フェルグスは留守にしていた。
言えなかった、と言う気持ちと、安堵したような気持ち。
剣の稽古にも、気が入らない。
「どうしたんだよ、なんかいつも以上にナヨナヨしてんぞ」
エッカルトの指摘に、ガクはぎくりとする。
「ご……ごめん」
ガクは汗を拭い、立ち上がる。ふと、視線を感じる。遠くから、チユキが見つめていた。本当は、ガクも会いに行きたかった。だが、勇気が出ない。
ガクが、部屋に戻ると、桃色の花が机に置かれている。そして、添えられている手紙には、場所が書いてあった。
日が暮れる時間に、路地裏で待ってるね―チユキの文字だった。
ガクの心臓が締め付けられる。行ってはいけないのではないか、そんな事を考える。しかし、脚は自然と路地裏へ向かう。
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