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八重咲の勇者たち ~最弱スキルで最強になれ~  作者: 賢河侑伊
第二部 2章 心髄共鳴 編
75/83

5-5

「諦めたら、そこで試合終了っスよ、ガク君」


 緊張感のない声がし、ガクは目を覚ます。


 目の前に、ニッコラがいた。そこは、稽古場だった。


「ソフィアが使った技を一部転用したのが《迅刀》なんスよ」


 ガクの脳裏に、骸骨のような顔が浮かび上がる。顔の一部を斬り落とし、人相を無くした男。個人のアイデンティティを無くし、悪そのものになろうとしていた敵。


「ソフィアに対し、有効な対抗策を考えられれば、《迅刀》の技術にも対抗できるっス。これから何日かに一回、訓練を行うっス」


 うつむくガクに、


「今日は、お姉さんが奢るっスから、元気出すっス」


 そう言い、二人は酒場に向かった。


「心髄共鳴、すごい力ですね」


 ガクは、ワインを渡しながら言う。


「そうっスね。相手にダメージを与える、と言う強いイメージを相手と共有できれば、物理的に触れなくとも相手を殺せる。すごい力っス」


 そう言って、ニッコラは、ワインのグラスを、ガクのグラスとぶつける。


 水面の波が大きくなり、揺れる。


「念じただけで殺せる……圧倒的な異能力」


 ガクが、ぼんやりと言う。


「とはいえ、デメリットもあるっス。心髄共鳴は、脳に強い負荷がかかるっス。心と心を無理やりつなげているようなもんっスから」


 ニッコラは、ワインをちびり、と舐め、


「それに、心髄共鳴には、解明されていない点も多いんスよ。例えば、今日、わたしが出した、ソフィア・アイメルトっスけど、あくまで今日のは、私が演じていた(アバター)っス」


 でもね、とニッコラは言い、


「再現度を高くするために、その人の記録なんかを読んでいくうちに、私のなかに、新しい人格が形成されてしまうこともあるんス」


「新しい人格……乗っ取られるという事ですか?」


「そうっス。過去にあった事例は、心髄共鳴をおこなった時だけ、と聞いてはいるっスが、本当の所は……」


 ニッコラは唇を吊り上げる。


 ガクは、ぼうぜんとそれを聞いていた。ビールがぬるくなっていく。

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