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「諦めたら、そこで試合終了っスよ、ガク君」
緊張感のない声がし、ガクは目を覚ます。
目の前に、ニッコラがいた。そこは、稽古場だった。
「ソフィアが使った技を一部転用したのが《迅刀》なんスよ」
ガクの脳裏に、骸骨のような顔が浮かび上がる。顔の一部を斬り落とし、人相を無くした男。個人のアイデンティティを無くし、悪そのものになろうとしていた敵。
「ソフィアに対し、有効な対抗策を考えられれば、《迅刀》の技術にも対抗できるっス。これから何日かに一回、訓練を行うっス」
うつむくガクに、
「今日は、お姉さんが奢るっスから、元気出すっス」
そう言い、二人は酒場に向かった。
「心髄共鳴、すごい力ですね」
ガクは、ワインを渡しながら言う。
「そうっスね。相手にダメージを与える、と言う強いイメージを相手と共有できれば、物理的に触れなくとも相手を殺せる。すごい力っス」
そう言って、ニッコラは、ワインのグラスを、ガクのグラスとぶつける。
水面の波が大きくなり、揺れる。
「念じただけで殺せる……圧倒的な異能力」
ガクが、ぼんやりと言う。
「とはいえ、デメリットもあるっス。心髄共鳴は、脳に強い負荷がかかるっス。心と心を無理やりつなげているようなもんっスから」
ニッコラは、ワインをちびり、と舐め、
「それに、心髄共鳴には、解明されていない点も多いんスよ。例えば、今日、わたしが出した、ソフィア・アイメルトっスけど、あくまで今日のは、私が演じていた(アバター)っス」
でもね、とニッコラは言い、
「再現度を高くするために、その人の記録なんかを読んでいくうちに、私のなかに、新しい人格が形成されてしまうこともあるんス」
「新しい人格……乗っ取られるという事ですか?」
「そうっス。過去にあった事例は、心髄共鳴をおこなった時だけ、と聞いてはいるっスが、本当の所は……」
ニッコラは唇を吊り上げる。
ガクは、ぼうぜんとそれを聞いていた。ビールがぬるくなっていく。
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