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 シュウジがイレイザーズ化することがほぼ確定的となり、その対処法についても一応の方針が決まった。

 役割分担は、はっきりしている。エレンがイレイザーズを食い止め、マヤがイレイザーズを無力化、ソウとメイは、状況が劣勢になったときのための逃走方法の確保といったところだ。


「お姉様、弟さんの事件が起きるまでに、あと二人、イレイザーズ化する人が出るんですよね?」メイが確認するように尋ねた。


「うん」


「……あの、言いにくいんですけど、その人たち、本当に助けないとだめですか?」


「どういうこと?」一瞬、マヤの声が冷たくなる。


「いえ……。お姉様の能力があれば、弟さんのイレイザーズ化を防ぐことが出来るんですよね? だったら、ここで無理をする必要はないんじゃないかって……」


「それはだめ。うちらはもう決めているから。前回のループと同じように人助けをするって。カレン姉がしようとしたことをなかったことには出来ない」


「でも、その人たちは、イレイザーズになるんですよ?」


「それも、うちの能力で無力化できるってことが分かった。イレイザーズになった人たちを、元に戻すことが出来るって。だったら、結局、やることは変わらないわ」


「メイ……。言いたいことは分かるけど、この件に関しては、俺たちも協力するって決めたはずだよ?」


「分かってます。でも……」


 メイの憂いの理由、それがエレンには分かる気がした。


「怖いんですね?」


 エレンが発したその言葉にメイの目がつり上がる。


「馬鹿にしないで下さい! 別にイレイザーズと戦うことが怖いなんてこと――」


「また、仲間を失うかもしれないことが」


「っ!? …………」


 図星だったか……。

 メイは、前もイレイザーズに仲間を消された時の話をした時、とても苦しそうな表情を浮かべていた。

 

 当然だ。

 きっとその出来事は、彼女にとって大きな心の傷になっているのだろう。

 閉口し、俯いたメイの肩は、もう二度とあんな目には遭いたくないと訴えているようだった。


 無神経だったかもしれない。 

 さっきの発言はメイの心の瘡蓋を無理やり剥がしたようなものだ。

 それでも……。


「それでも、俺たちはやるべきなんだ」


「兄さん?」


「日野森さんと斉木さんがこのループの中にやって来て、初めて何かが変わり始めている。ずっと謎だらけだったイレイザーズの正体にも、朧気ながら見え始めて来た。もし、俺たちがこのループから抜け出すチャンスがあるとしたら、今しかないと俺は思う」


「それなら、なおのこと慎重にことを運ぶべきです。自分たちからリスクを冒すような真似をしてどうするんですか?」


「それだけの価値がある」


「え?」


「斉木さんの能力なら、イレイザーズの記憶も読み取ることが出来る。上手く行けば、奴らの情報を丸裸にすることも出来るかもしれない。こんなチャンス、逃す訳にはいかない」


 ソウの意見は合理的だ。

 リスクとリターンを天秤に掛け、自分の目的を達成するために最善の選択をしている。

 それはエレンにとっても納得出来る答えだったが、メイにとってはどうだろうか?


「分かるだろ?」


 諭すように言ったソウに、メイは俯いたまま答える。


「兄さんは、いつも正しいことばかり……」


「なら残るか?」


「え?」


「迷いがある奴を、これから先の戦いに加えることは出来ない。そんな奴がいれば、それこそ仲間を失うことになりかねない」


 冷たく、突き放す様な物言いに、メイが怒りと涙に溢れた目をソウに向ける。


「……兄さんこそ、まだ、あの頃のことを引き摺ってるくせに」


「何?」


 ソウの硬質な口調にメイの小さな肩が震える。

 何、この空気?

 も、もしかして、私が余計なことを言ったから?

 

「あ、あの、ふ、二人とも、落ち着いて……」


 エレンがおろおろしながら仲裁に入ろうとすると、メイが椅子を引いて立ち上がる。

 そして、彼女は何も言わずに、図書館から出て行ってしまった。


「メ、メイさん!」


 エレンは慌ててメイの後を追う。

 それを見て、マヤは大きく息を吐くと、隣に座っていたソウの頭をパコンと叩いた。


「何か分からんけど、お兄ちゃんなら、もっと上手くやれし」


 そんな声が後ろから聞こえた。

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