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 マヤが渡良瀬の記憶を読むことに失敗した。

 それはエレンが知る限り、初めてのことだった。


「おかしいなあ? 何でなん?」マヤが釈然としない様子でエレンに言う。


「いえ、私に聞かれても……」


「精神系の能力は、イレイザーズに効きづらいって、前に仲間から聞いたことがあります。もしかしたら、お姉様もそうなんじゃ?」


 メイの意見にマヤは首を傾げる。


「でも、あのチャラ男の記憶はちゃんと読めてたよ?」


 マヤがそう答えると、全員が黙り込む。

 そんな中、ソウが手を挙げて言った。


「斉木さん、俺の記憶で、俺のじいさんの記憶を読むことが出来るか試してもらってもいい?」


「何、急に? どして?」


「ちょっと、気になることがあってね。理由は後で話すよ」


「はあ? まあ、別にいいけど」


 マヤは言われたとおり、ソウの記憶を読もうとした。

 すると、すぐに、「あれえ?」とマヤが声を上げた。


「何でだろう? 全然、上手く行かない……」


「やっぱりか!」


「兄さん、どういうことですか?」


 そう尋ねたメイにソウが仮説を口にした。


「おそらくだけど、斉木さんが人の記憶の中で、更に人の記憶を読むには、その対象が生きている必要があるんじゃないかな」


「でも兄さん。たしかに、おじいちゃんは随分前に亡くなっていますけど、あのイレイザーズの男は、まだ生きているはずですよ?」メイが反論を口にする。


「そうだね。でも、渡良瀬は、斉木さんにイレイザーズとしての記憶を消されてしまったんだろ? だったら、それはイレイザーズとしての渡良瀬が死んだようなものなんじゃないか?」


「うーん。何か強引な気がしないでもないけど……」


 マヤは懐疑的な態度を見せたが、エレンはその可能性は十分にあると思った。

 ただ、何だろう?

 何かが引っ掛かっている気がする。


 それを口にする前に、「まだ、憶測の域を出ない話だからね」とソウが言った。


「今のところ、はっきりした証拠もないし。このことは後で確かめることにしよう」


「兄さんにしては珍しいですね? こういうこと、確かめずにはいられない性質のくせに」


 メイの言葉に、ソウの視線が一瞬だけエレンと重なった。

 だが、ソウはすぐに視線を逸らすと、「優先順位の問題だよ」と言った。


「今は、次のイレイザーズにどう対処するかとか、いろいろ決めなくちゃいけないことがあるからね」


 なるほどもっともだと、エレンは思った。

 だが、どうにも話を逸らされたような違和感が拭えなかった。

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