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「――ごめん、日野森さん。また、メイが余計なことを言ったみたいで」
「い、いえ、私は気にしていないので……」
そう答えたエレンの正面には、ソウに叱られて半泣きになったメイの姿があった。
「空気、おっも……」と、アイスティーを飲みながらマヤが言う。
ちょうどその時、注文していたモーニングセットが届いた。食事中は、あまり会話は、弾まなかった。だが、あの地獄のような空気は少しだけ緩くなった。
「……しかし、こうもたて続けに、あんな強いイレイザーズが現れるなんてね」食事を終えた後、ソウが言った。
「今までは、そういうことなかったの?」マヤがソウに尋ねる。
「うん。まあ、俺たちもループを改竄するリスクは、極力控えていたってこともあるけど。ただ……」
「ただ?」
「いや。偶然で片付けてしまっていいのかなって思ってさ?」
「それって、この前、エレンが追っ払ったっていうショタやあの似非イケメンのこと?」
「そう」
「まあ、たしかに。大体、前回のループで助けた人が二人ともイレイザーズになってたとか、悪い冗談みたい……」
「お姉様?」急に口を噤んだマヤにメイが首を傾げる。
「え、ちょっと、待って。だとしたら、次は……」
一人、何かを呟くマヤを見て、エレンも遅れてその理由に気付く。
「マヤさん……。これ、もしかして?」
「分かんない。分かんないけど、もしそうならシュウちゃんは……」
「どうしたの、二人とも?」ソウがエレンたちに尋ねる。
「前回のループのことなんですけど……。私たちが次に助けたのが、マヤさんの弟のシュウジ君なんです」
「えっ!?」
「お姉様の?」
「はい」
エレンの返事に、ソウとメイは顔を見合わせる。
「それはつまり、次の被害者がお姉様の弟さんになるってことですか?」
「それだけじゃないんです」エレンが首を横に振って答える。
先日、マヤと人助けを継続しようと話をした時のことだ。
エレンとマヤは、シュウジが誘拐された末に殺害される未来についても話をしていた。
前回のループでは、何も出来なかったせいか、マヤの気合の入りようはハンパではなかった。
しかし、今日、あの青年が強力なイレイザーズとなって立ち塞がったことで、一つの不安要素が浮上した。
先日、エレンを襲ったあの男の子と今朝の青年、どちらも前回のループでエレンたちに命を救われていた。
これが、ただの偶然ではなかったら?
「もしかしたら、斉木さんの弟さんもイレイザーズになるかもしれない?」
「はい……」ソウの言葉にエレンが頷く。
現時点では、あくまで可能性の話でしかない。
しかし、もしその予想が当たっていたら、一体、どうすれば良いのか。
「最近、弟さんに何か変わったことは?」ソウがマヤに尋ねる。
「ううん、何も。いつも通り」そう答えるマヤの声には、いつものような元気がなかった。
それからもしばらく、ファミレスで今後のことについて話し合いをしたが、具体的な方針は決まらなかった。
ただ、一つだけ、
「シュウちゃんは、助ける」
それだけは確定事項となった。




