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 ファミレスに入ったエレンたちは、案内された席に着くと、早速、机の端にあったタブレットからメニューを選ぶことにした。

 エレンは最初、フリードリンクのみにするつもりだったが、他の三人がモーニングセットを注文することにしたので、自分も同じものを選んだ。

 それからソウが、全員分のフリードリンクを取りに席を離れると、マヤが口を開いた。


「うち、朝食抜いて来たから、お腹空いちゃって」


「私たちもです」マヤの言葉にメイが相槌を打つ。


「へえ。メイちゃんは、いつも朝食は取らないの?」


「そう、ですね。……以前は、取るようにしていたんですけど。ただ、今日は単純に朝早かったので、兄さんが淹れてくれたコーヒーで済ませてしまっただけですが……」


 以前は。メイの言ったそれは、きっとこのループに巻き込まれる前のことを指しているのだろう。

 メイの食生活が変わったことにどんな意味があるのかは分からないが、何となく触れない方が良いような気がした。


 それはマヤも同じだったようで、「甲斐甲斐しいねえ、諌山君」と、ぽつりと呟く声が聞こえた。


「そんなことより、私、日野森さんに聞きたいことがあるんですが」


「何ですか?」


「あのイレイザーズは、どうしてあの場にやって来たんですか?」


「分かりません」


「じゃあ、どうしてあの人は、引き下がってくれたんでしょうか?」


「分か……、りません」


「そ、そうですか。何か情報があればと思ったんですが……。振動を操る能力だってことは、お姉さまに教えてもらいましたけど、流石に弱点とかまでは分からないですよね?」諦めたようにメイが言う。


「あ、それなら分かります」


「分かるんですか!?」


「はい。たしか、標準的な精神構造をした、人間にしか、作用しないって……」言いながら、エレンは少し悲しくなって来た。


「標準的な……」


 はい、そうですね。

 言いたいことは分かります。

 だから、メイさん。そんな憐れむような目でこっちを見ないで!

 年下の美少女から、そういう目を向けられるのは、地味に刺さるんです。


「ま、まあ、そのおかげでエレンもあの場を優位に進めることが出来たんだし、結果オーライじゃね?」マヤがエレンに気を遣う様に言う。


「そうですね。私もあの時、日野森さん一人をあの場に置いて来ちゃって、責任を感じていたので本当に何もなくて良かったです」


「あ、あれは私が言い出したことですし、気にしないで下さい。それに、あの人、見た感じ、逃げるだけならどうにでもなりそうでしたから」


「そんなの、見ただけで分かるものなんですか?」訝しげにメイがエレンに尋ねる。


「わ、分かるっていうか、感じるっていうか……」


「おお、何か達人っぽい!」


「い、いえ、そんなすごいものじゃなくて。……ほ、ほら! 腕相撲とか、握った瞬間、相手の強さが分かるって何かで聞いたことがありますし、それと似たようなものかも……」


 まあ、私は腕相撲をするような友達は今まで一人も居なかったので、その話の真偽は分からないけど。

 ただ、メイさんは今の説明でも、一応は納得してくれたようだった。


「そういうものですかね?」メイはそう言うと、ソファに深く背を預けた。


「まあ、何にしても、エレンはよく頑張ったよね」


「そうですね」


「ほんと、初対面の相手と二人きりでよく耐えきったよ」


「え、あ、そっちですか?」


「そりゃそうでしょ? エレンにとっては、かなりの高難易度クエストだったはずだから」マヤはうんうんと頷く。


「……それで、よく、相手の能力の弱点なんて聞き出せましたね?」


「ああ、あれは、あの人が勝手にしゃべってくれただけで……」


「ぶっちゃけ、エレンがあの似非イケメンと話したのって、会話無しで戦いましょうって提案だけだしね」


「はあ!? 何ですか、それは!?」メイがぐいっと体を前に出して言う。「あなたって人は、本当にどこまで……。いいですか、日野森さん。会話って言うのは、相手が敵でも見方でも、等しく重要な情報交換ツールなんです。それが苦手だと自覚しているのなら、少しな克服する努力をして下さい。そもそも――」


 それから、人数分のドリンクをトレーに乗せてソウが戻って来るまで、メイのお説教は続いた。

 年下の女の子に正論でビンタをされ続ける時間は、控えめに言って地獄だった。

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