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 イレイザーズの青年が去った後、緊張の糸が切れたようにその場にへたり込んだエレンは、震える手でポケットからスマホを取り出すと、安全な場所まで移動しているはずのマヤに電話を掛けた。


「エレン!」秒も掛からずマヤが電話に出た。「大丈夫なの!」


 マヤらしくない取り乱した声色。

 だが、ここ最近は似たような声をよく聞く様になっている気がする。

 巻き込んでしまった。今更のようにそんな思いがエレンの中に去来した。


「大、丈夫です」


「あの似非イケメンは?」


「帰りました。どこにかは分かりませんけど。……それより、マヤさんたちの状態は?」


「私たちのことは気にしないで。皆、あいつから距離を取ったら元に戻ったから」


「そう、ですか……」


「すぐ戻る。エレンはそこに居て!」


 そう言って、通話が切られる。

 夏の朝、日差しがやたらと強く感じられた。

 さっきまでは何も気にならなかったのに……。


 やがて、マヤたちが駆け足でエレンの元へと戻って来た。

 最初にエレンの様子を見たソウは眉を顰めると、膝を着いてエレンの顔を覗き込む。


「おい、大丈夫かよ!? 顔が真っ青じゃねえか!」


「やっぱり、あの人、強かったんですね……。すみません、日野森さん。危険な役を押し付けてしまって」続いてやって来たメイが心底も申し訳なさそうに頭を下げる。


 そんな諌山兄妹に、「いえ、これは……」とエレンが口を開きかけると、一番遅れてやって来たマヤがエレンの目を見て言った。


「あー、何だ、そういうことか」


 安堵の息を吐いたマヤは、エレンの記憶を読み取っていた。

 あの後、ここで何があって、エレンがどうしてこんなに憔悴しているのかも。


「二人とも、大丈夫だよ。エレンが参ってるのは、ただ単にいつもの人見知りを発揮しただけだから」


「え?」

「はあ?」


 諌山兄妹が同時にエレンの方を見る。


「……あ、はは。まあ、何て言うか、日野森さんらしいね」


「まったく、人騒がせな人ですね。……本当に、もう!」


「ごめんなさい」


「でも、日野森さんが居なかったら、かなりやばい状況だった。ありがとう、助かったよ」


「い、いえ、そんな……」


 実際、自分はほとんど何もしていない。

 どういうわけか、相手が勝手に引き下がってくれただけのことだった。

 あのまま戦っていたら、どうなっていたか分からない。

 ただ、運が良かったとしか思えなかった。


 エレンが謙遜するように首を振ると、マヤが茶化したような口調で言う。


「まあ、エレンにとっては、イレイザーズと戦うより普通に話をすることの方が余程重労働ってことでしょ?」


「そう聞くと、イレイザーズが少し気の毒ですけど……」


 メイの言葉に場の空気が少しだけ弛緩する。


「気にしなくていいでしょ、あんな似非イケメンのことなんて。それより、エレンもかなり疲れたみたいだし、とりま、場所、移動しない。……あと、ぶっちゃけ、暑いし」


「だね」ソウは頷くと、近くのファミレスに向かうことを提案する。「この時間じゃ、まだ図書館は空いていないだろうしね」

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