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「――つまり、明日の早朝に起きる交通事故で被害に遭う人を助ければいいんですね?」
エレンが昨日見た予知について話をするとメイが言った。
「俺もその事故のことは覚えてるよ。交通事故なんて今時珍しいし。どのループでもニュースになっていたから」
「そうですね。でも、前回のループでは報じられていなかったような……。今思えば、お姉さまたちがその被害者を助けていたからなんですね」
「そゆこと」マヤがふふんと鼻を鳴らして答える。「だからさ、前と同じムーブかませば、普通に事故回避できるっしょ? 理論上は」
「まあ、たしかに……。問題はイレイザーズだね。前回のループと違って今回は奴らが居る。まず間違いなく現れるだろう」
「だよねえ」とマヤが頷く。「でも、いざとなったら昨日みたいに諌山くんの能力で奴らを混乱させれば良くない?」
「もちろんそれもカードの一つだよ。でも、そんな簡単に行くかなあ。相手がどう出て来るかが分からない以上、それだけだと心許ない」
「じゃあ、エレンに出て来たイレイザーズ、みんなぶっ飛ばしてもらうとか?」
「それも相手の規模によるね。いくら日野森さんでも、もし、昨日と同規模のイレイザーズが現れたら、流石に対処に困るだろうし」
「じゃあ、どうするの?」
「逃げる」
「は?」
「今回は昨日と違ってメイが万全の状態で居られるから。イレイザーズが現れたら、メイの能力を使って速攻でその場から退散する」
「ああ、たしかに。それが一番現実的かも。でも、メイちゃん大丈夫? 昨日だってかなり疲れていたみたいだけど」
「そうですね……。正直、四人同時に停まった時間の中で動けるようにするのは、かなり負担が大きいです。イレイザーズから十分に逃げるだけの時間を稼げるかどうか……」
そう言ってメイが黙り込む。
おそらく実際にその状況をシミュレーションしているのだろう。
気付けば、話は三人だけで進んでいた。
エレンは何度か口を開きかけたが、結局、何も言えなかった。
これはあれだ。文化祭の出し物を決めるときのあれと同じだ。
エレンがそんなことを考えていると、「じゃあ、メイちゃんとエレンだけ動けるようにしたら?」とマヤが言った。
「エレンだったら、うちと諌山君を担いで走るくらい楽勝でしょ?」
「え? ま、まあ、何とかなるかと思いますけど……」
「じゃ、それで決まりね」
マヤがあっさりと方針を口にすると、ソウがそれを制止する。
「ちょっと待って。日野森さん、本当に大丈夫なの? 斉木さんはともかく、俺はそこそこ体重あると思うけど?」
「はい。普通車くらいの重さなら片手で持ち上げられますから」
「あ、そう……」
何だがソウがドン引きしている。
「ゴリラというか、もう普通に怪物ですよね」
ぼそっとメイが呟いたのをエレンは聞き逃さなかった。




