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 皆が一休みをしている間、エレンは先程、遭遇した男の子のことを話した。


「氷を操る能力者ですか?」と、メイが尋ねる。


「ええ。でも、本人は、自分のことを能力者だとは言わなかったけど」


「どゆこと?」


「分かりません」


「兄さん、これって」


「ああ……」


 視線を躱し頷き合う諌山兄妹に、エレンとマヤが訝しげに見つめる。


「何? 二人とも何か知っているの?」


 そう尋ねたマヤにメイが頷く。


「おそらく、その男の子はイレイザーズです」


「は? イレイザーズって、さっきのゾンビみたいな連中のことじゃないの?」


「ええ、そうです」と、メイが答える。「ただ、彼らとは別に自我を持った個体も存在するんです」


「それがあの男の子ってこと?」


「十中八九、間違いないかと。私たちも、過去に遭遇したことがありますから」


「よく無事でしたね」


 そう言ったエレンに、「無事じゃなかったよ」とソウが答える。


「奴らに遭遇した時に仲間を大勢失ってるし」


「そう、ですか……」


「諌山君の仲間も能力者だったんでしょ? どうにもならなかったの?」


「やりようがなかったわけじゃないんだ。ただ、奴らの能力は戦闘特化型でね。当時の仲間とは、とにかく相性が良くなかったんだ」


 淡々と話すソウを見て、メイが悔しそうに呟く。


「あの時、日野森さんみたいな人が、一人でも仲間に居たら……」


「メイ」


 窘めるように言ったソウにメイは、「だって!」と反発する。


「みんな、あいつらにやられたんですよ! 兄さんは悔しくないんですか!?」


「悔しいさ。でも、いくら嘆いたところで、みんなが戻って来るわけじゃない」

 

 感情を見せずにソウが答える。

 それを見て、メイが珍しくソウに噛みつく。


「兄さんは! ……兄さんは、いつもそうですよね。達観したようなことばかり言って」


「そんなつもりはないよ。まあ、何度もループを経験した所為で心が摩耗している感は否めないけど」


「嘘ばっかり」皮肉っぽくそうメイが呟く。


「……え、何? 何でいきなり修羅場ってるの?」マヤが小声でエレンに尋ねる。


「私に訊かれても」


「ねえ、メイちゃん、どしたん?」


「別に、何でもありません」


 不貞腐れたように答えたメイに、マヤが露骨に動揺する。


「ちょ、ちょっと、どうしようエレン!? うち、もしかしてメイちゃんに嫌われちゃった?」


「さ、さあ?」


 諌山兄妹とは、今日が実質初対面のようなものなのだ。ついこの前世(まえ)まで絶賛引き込もり中だったエレンに、彼らの心の機微が分かるはずがない。だが、あれだけブラコンをこじらせているメイがソウに噛みついた理由は気にならないではなかった。

 

 これ、どういうこと? 

 そう問いかけるようにエレンが目を向けると、ソウが困ったように肩を竦めた。


「ごめん。メイの言う通り何でもないから……。だから気にしないで」


「そう、ですか? まあ、それならいいんですけど……」


「それより悪かったね。まさかいきなりこんな状況になると思わなかったから……。先にあの特殊個体についても説明しておくべきだった」


「それな」と、マヤが頷く。「今のエレンが取り逃がすって相当だし。まだ、何か情報があるんだったら、今のうちに教えてもらってもいい?」


「そうだね。ただ、それは場所を移動してからにしよう。また、奴らが現れないとも限らないし」


「あーね。ぶっちゃけ、次に襲われたら、うち逃げ切れる自信ないし」


「俺も」


「元気なのはエレンだけかあ」


「いえ、私だって、ちょっとは疲れてますけど?」


 二駅分をあっという間に移動して疲れているのはちょっとだけって……。

 自分で言っておきながら、おかしな体になったものだとエレンは思った。

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