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「え!? ちょっと、何で切ったの!?」勝手に電話を切ったソウにマヤが抗議する。


「いや、だって、電話しながらだと動きづらいし」


「そういう問題じゃないじゃん! エレンにこっちの居場所を教えて、助けに来てもらえば良かったじゃん!」


 マヤたちの背後からは、まるでゾンビのようにイレイザーズが押し寄せて来ていた。

 彼らの動きは先程、遭遇した奴らと比べると明らかに遅かった。

 それでも、能力を除けば女子高生の平均的な身体能力を下回るマヤにとっては、十分に脅威だった。

 このままでは、一分と持たずに追いつかれてしまうだろう。

 そんな不安を抱えながら走っていると、前方の曲がり角から十人以上のイレイザーズが姿を現わした。


「終わった……」


 マヤが泣きそうな顔でそう言うと、「大丈夫ですよ」とメイが告げる。

 

「兄さんに任せておけば問題ありません」


 その声はとても弱々しかったが、確信と信頼に満ちていた。


「……そういえば、諌山君も能力者なんだよね?」


「うん」


「その能力で、この状況をどうにか出来るの?」


「出来るよ。っていうか、もうやってる」


「え?」マヤが間の抜けた声を出す。


 すると、後ろから迫り来るイレイザーズの集団から四人の男性が飛び出して来た。

 彼らは常人離れした速度でマヤたちに追いつくと、そのまま前方から来た別のイレイザーズに襲い掛かって行った。

 マヤの横を次々と通り過ぎていくイレイザーズを前に、気が付けばマヤはその場で棒立ちになっていた。

 

「な、何!? 仲間割れ?」


「いいえ。あれが兄さんの能力なんです。他人の認識を誤認させる。それは相手がイレイザーズであっても例外ではありません。兄さんに掛かれば、どんな相手でも正しく過ちを冒す、ザ・ブランダー」


 うわっ、めっちゃ厨二っぽいネーミング。

 そんな感想を呑み込んだマヤは、認識を誤認させるという意味について少しだけ考える。


「え、じゃあ、何? つまり、あの人たちは、今、仲間をうちらだと思って襲っているってこと?」


「理解が早くて助かります」少しつまらなそうにメイが答える。


「……うん。っていうか、何でメイが説明してるの?」


「私が説明した方が、兄さんのすごさが伝わるからです」


「そうかなあ……」


 首を傾げるソウでぶつぶつと呟くメイを見て、マヤが苦笑を浮かべる。


「まあ、とりあえず、助かったってことでオケ?」

 

「そうだね。でも、またいつ奴らが出て来るとも限らないし、早く集合場所の図書館に向かうとしよう」


「りょ」


 凄惨な同士討ちを繰り広げているイレイザーズを尻目に、マヤたちはその場を後にした。


     ◆


 イレイザーズから逃げ延びてから数分後。


「もう、無理、だ。流石に、疲れた」ゼイゼイと息を吐きながらソウが言った。


「う、うちも……」と、マヤが同意する。


「ちょっと……、あそこの公園で、休憩しよう」


「さんせー」


 そこは小さな公園だった。

 向かいには準備中の札が出ている居酒屋と自動販売機があった。

 ソウは一旦、メイを公園のベンチに座らせると、自動販売機で人数分の飲み物を買った。


「スポドリでいい?」


「あ、うん。ありがと」ペットボトルを受け取りながらマヤが礼を言う。「……あ、バック、諌山君ちに置いて来たままだ。ごめん、お代は後で良い?」


「ここは兄さんのおごりですから気にしなくていいですよ」


「え、何でメイがそれ言うの?」


「兄さんが気遣いの出来る男だとアピールするためです」


 メイが胸を張ってそう言うと、「ああ、そう……」と、疲れた様子でソウが頷く。


「まあ、メイがそれでいいなら俺は構わないけど」


 正直、メイの行動は、何のアピールにもなっていない。

 だが、今のソウには、そんなことをツッコむ気力もないらしい。

 そしてそれはマヤも同じだった。

 ペットボトルの半分まで、一気にスポーツドリンクを喉に流し込むと、マヤは大きく息を吐いた。


「うち、こんなに走ったの体育の持久走以来かも……」


「俺も……」


「二人とも、運動不足なのでは?」


「いや、否定はしないけどさ。でも、俺の背中に引っ付いていただけのお前には言われたくない」


「仕方ないじゃないですか? 私は病人なんですから」


「その割には、さっきより顔色が随分良くなっているみたいだが?」


「ええ。休憩だけでなく、図らずも兄さん成分の補給まで出来ましたから」


「え、何? お前、俺の生気でも吸ってたの?」半歩後退しながらソウが言う。


「まさか。そんなことが出来たら兄さん、今頃、ミイラになってますよ?」


 怖いことを真顔で言う妹にソウが呆れていると、頭上から声が聞こえて来た。


「――マヤさん!」その声の直後、豪快な着地音が響き渡り、土煙が濛々と上がった。


 現れたのは、言わずもがなエレンだった。


「あ、エレン、お帰りー」


 一服して落ち着いたマヤがそう言うと、「あ、ただいまです」とエレンが答える。


「良かった。みんな、無事だったんですね!」


「まあ、何とかね。それより日野森さん、今、どっから飛んで来たの?」ソウが尋ねる。


「え? あそこからですけど」


 エレンが指差したのは、いまマヤたちが居る公園からずっと離れた病院の屋上だった。

 話を聞いてみると、どうもエレンはここまで道を使わず建物伝いに一直線に向かって来たらしい。

 その途中で、マヤたちを見つけたそうだ。


「話には聞いてたけど、本当に出鱈目な身体能力だな」病院の屋上を眺めながらソウが言う。「それで、日野森さんは例の男の子を助けることは出来たの?」


「えっと、それなんですけど――」 

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