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「どこに行くつもりですか?」リビングの扉に手を掛けようとしたエレンにメイが言った。


 ついさっきイレイザーズに狙われたばかりなのだ。メイが止めるのも当然だった。エレンは前回のループで男の子を交通事故から助けたことを説明した。その事故まで、もう時間があまりないことも。それを聞いたメイが険しい表情を浮かべる。


「……まかさ、助けに行くつもりですか?」


「ええ。放ってはおけませんから」


「やめておいたほうがいいです」


「え?」


「さっきも説明しましたけど、ループの流れを阻害するような行動を取ると、イレイザーズに襲われる可能性があるんです。今回の場合、人の生き死に関わることだから、十中八九、奴らは現れると思います」


「メイちゃん、まるで見て来たみたいな言い方じゃん?」


「経験者ですから」


「経験者?」


 首を傾げたマヤに、「メイも同じだったんだ」とソウが言う。


「こいつも、このループ世界に巻き込まれた当初は、君たちと同じように人助けをしていたんだ。救える命があるのなら、自分がなんとなしなくちゃって――」


「結局、全部徒労でしたけどね」ソウの言葉に被せるように、メイは硬質な口調でそう言った。


「メイ、そんな言い方……」


「事実ですよ。子供っぽい義憤に駆られて、その挙句、兄さんまでこの世界に引き込んでしまった……」


「あの、それって、どういう……」


「ああ、ごめん。こっちの話。それより、今はその子供を助けに行かないといけないんだよね? いいよ、俺も協力する」


「兄さん!?」


「メイ、俺たちも前に進まないといけない時が来たんだと思う。日野森さんたちが現れて、これまでとは状況が一変した。もしかしたら、本当にこのループから抜け出せるかもしれない。……そうなったとき、俺は後悔しない選択をしたいし、お前にも後悔をして欲しくない」


 ダメかな? と、苦笑を浮かべたソウに、「ずるいです」とメイが呟く。


「そんなこと言われたら、私、断れないじゃないですか……」


「ちょっと、お二人さん? 兄妹で良い雰囲気作ってるとこ悪いけど、マジで時間ないから。ほら、見て? エレンが今にも飛び出しそうになってる」


 いや、本当に時間がないのだ。

 ここからだと、エレンがそのポテンシャルを全開にしてどうにか現場に間に合うかというタイミングだった。


「大丈夫だよ、そんなに焦んなくても。なあ、メイ?」


 ソウに視線を向けられて、メイが大きく嘆息を吐く。

 

「分かりました。私が、どうにかします」


「え、どういうこと?」


 マヤの問いに、「忘れたんですか?」とメイが答える。


「さっき私があなたたちを助けたときのこと」


「あ、そういえば、あれってどうやったの? 気づいたら、いきなり裏路地から移動してたんだけど?」


「メイの能力は二つ。一つは周りから姿を隠す(ハイド・)(アンド・シーク)。そしてもう一つが、時間停止――タイムストップなんだ」


「は? 二つも能力あるの? 何それ、ずるくない!?」


「今から、私の能力でこの世界の時間を停めます」


 メイはマヤの批判を無視してそう言うと、パチンと指を鳴らした。

 すると、ほんの一瞬だけ、エレンの視界が真っ暗になり、再び、諌山家のリビングが映し出された。

 ただ、少しだけ様子がおかしい。ソウもマヤも、リビングにある電化製品も動きを止めていた。


「この停まった時間の中では、私と私が決めた任意の人間だけが動くことが出来ます。ただ、問題もあって、あまり長い時間を停めていたり、大勢をこの停まった時間の中で動けるようにしたりすることは出来ません。だから、今回はあなた一人だけ動けるようにしました。……理由は分かりますよね?」


「私なら、すぐに現場に駆け付けることが出来るから?」


「はい。でも、あまり長くは持ちません。だから、出来るだけ早くカタを付けて来て下さい」


「うん。大丈夫。すぐ終わるから」


 そう言って、エレンは諌山家を飛び出した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

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