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マヤとメイがキッチンに行って数十分後。
その間、気を遣ってくれたのか、ソウが色々と話を振ってくれた。エレンは内心では、「この人ちょっと苦手なのよね」と思っていた。
ほぼ初対面の男子と二人きりなんて、エレンにとっては拷問に等しい。
でも、せっかく親切にしてくれている人に、変な態度を取る訳にもいかない。
葛藤の末、エレンは下手くそな笑顔を張り付けながら適当に相槌を打ち続けることとなった。
マヤさん、早く戻って来て!
地獄のような時間を耐えていたエレンが、いよいよ限界を感じ始めた頃、「お待たせしました」とメイの声が聞こえた。
両手に皿を持ったマヤとメイが、テーブルの上に皿を置く。そこには、所々、焦げ目のついた炒飯が乗っていた。
「……ごめんなさい。私がごはん、焦がしちゃったから」
そう言ったメイに、「やっぱりか」とソウが嘆息を吐く。
「だから、俺に任せとけばよかったのに。普段、料理なんてしない癖に、どうして今日に限ってでしゃばったんだよ?」
「だって、兄さん、料理が得意だから」
「だから俺が作った方が良かったんじゃ――」
「この人たちが、兄さんのこと好きになっちゃったらどうしようって思って……」
「え、何? 可愛っ!?」
「……可愛い」
マヤとエレンが同時に呟く。
気の強そうなメイが見せた弱々しい態度に、二人は無性に庇護欲を掻き立てられた。
「いや、これ、メイの方が二人の心を掴んでんじゃね?」ソウが釈然としない様子で呟く。
「ダイジョブだよ、メイちゃん。うちら、この人のこと、全然興味ないから。ねえ、エレン?」
エレンはコンマ数秒だけ考えて答える。
「まあ、あんまりグイグイ来る人はちょっと……」
「ほぼ即答!」
「あーね。うちも、あんまりしつこい男は嫌いだし。……あ、何か、元カレのこと思い出したわ。どうしてくれるん?」
「俺の所為なの!?」
「そりゃ、そうでしょ。元はと言えば、諌山君の無神経な発言が原因なわけだし。ほら、謝って。メイちゃんに謝って」
「……何か、ごめん」
「いいんです。兄さんは何も悪くありませんから」
「うわ、めっちゃ健気。ねえ、諌山君? この子、持って帰っても良い?」
「いいわけないだろ!?」
「だって。メイちゃん」慈愛に満ちた笑顔を浮かべてマヤが言った。「良かったね。ちゃんと、愛されてるじゃん」
「は、はい……」
「ねえ、もういいから飯にしようよ!」疲れ切った表情でソウが言った。
意外なことに、マヤとメイが作った炒飯は、多少の焦げなどまったく気にならないくらいの美味だった。そのことをソウが指摘すると、マヤが色々とフォローしてくれたのだとメイが言った。
「料理、上手なんですね?」
「まあ、いつも弟にごはんを作って上げてるから、これくらいはね」
「すごい……」
メイがぽつりと呟くと、彼女の隣に座っていたマヤが小声で告げる。
「メイちゃん、今度、料理教えようか?」
「え?」
「美味しい手料理作ったら、諌山君も見直すかもしれんよ?」
「お、お願いします!」食い気味にメイが答える。
その必死な様子にマヤは微笑を浮かべると、何の気なしにメイの頭をぽんぽんする。
「オケ。うちに任しとき!」
「……お姉さま」ぽーっとした表情でメイが呟く。「兄さん? 私、この人だったら構いませんよ?」
「何が!?」
「ああ、ごめん。それは無理」
日に二回、振られたソウは、それから全員が食事を終えるまで終始無言のままだった。
◆
「――とりあえず、当面の目標は、カレンさんを探すってことでいいかな?」
食後、仕切り直す様にソウが言った。
「え、いいんですか? このループから抜け出すのを後回しにしちゃっても?」
「まあ、事情を知っちゃったしね。……それで、一つ、訊きたいことがあるんだけど」
「何ですか?」
「前回のループで、カレンさんはどんな行動を取っていたのかな?」
「そんなこと聞いてどうするの?」マヤが尋ねる。
「カレンさんの行動をトレースすれば、何か分かることがあるかもしれないって思ってね」
「なる」
「それで、どうかな? 例えば、今日、前回のループでカレンさんはどうしていたか分かる?」
それならよく覚えている。
何といっても、今日は自分が転生して来た日なのだから。
あの日、私とお姉ちゃんはずっと一緒にいた。
私が転生して、マヤさんとお姉ちゃんが能力に目覚めたことを知って、それで……。
無意識にエレンの目が広がる。
「あっ!」
エレンは突然、声を上げると、リビングの時計に目を向ける。
その様子を見て、マヤも何かに気付く。
「エレン、もしかして今日って……」
「はい……。早く助けに行かないと、あの子が危ない!」




