表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/71

46

 女子三名からの軽蔑の眼差しに晒されたソウは、激しく危機感を覚えていた。早く話を切り替えなければならない。そう思ったソウは、わざとらしく咳払いをして口を開く。


「今度は、日野森さんたちのことについて教えてもらえるかな?」


 そんなソウの態度を見てマヤが嗜虐的な笑みを浮かべる。 


「ええよ。じゃあ、エレンのスリーサイズからでいい?」


「兄さんっ!」


「どうして俺が悪いみたいになってんの!?」妹の蔑視にソウが悲鳴のような声を上げる。


 その正面では、エレンもマヤに白い目を向けていた。


「っていうか、何で私のスリーサイズなんですか!? マヤさんが自分のを言えばいいじゃないですか!」


「ん? 別にいいけど? えっと、上から――」


 マヤがそう言い掛けた時、凄まじい速度でメイがソウの目に両手を当てる。


「おい待て、メイ! どうして俺の目を隠す!?」


「あ、ごめんなさい。気が動転してました。すぐに鼓膜を破りますね」


「やっべえ。この場に居る女子、みんなおかしい……」


「わ、私は普通です」心外だと思ってエレンが言う。


「いや、日野森さんが一番ヤバいでしょ? 転生した上に、メイの報告だとゴリラ並みの身体能力まで身に付けているんでしょ?」


「ゴリラ?」


 エレンが持っていたグラスから、ミシッと音が鳴る。


「に、兄さん、不用意な発言は控えて下さい! その人、本当に危険なんですから」


「……ごめん。俺の勘違いでした」


「いえ。分かってもらえたなら、いいです」


 エレンが不満そうに言うと、その肩をマヤがぽんぽんと叩く。


「まあ、悪ふざけはこの辺にして、うちらのことについて話そうか?」


「悪ふざけって言っちゃったよ……。斉木さん、今、実際かなりやばい状況なんだけど、分かってる?」


「分かってるよ? エレンの状況を要約すると、転生したら何故か超能力者になった私は、姉の死の未来を回避しようとしていたけれど、気付いたらループ世界に巻き込まれた上に、姉がいなくなっててマジぴえんな件、って感じでしょ?」


「何か超長文のラノベのタイトルみたいになってる……。あれ? でも、ちょっと待って。何かいま、さらっと重要なこと言わなかった?」


「お姉さんがいなくなったって……。それ、本当ですか?」


「はい」


 エレンはそう頷くと、ループしてからの出来事を諌山兄妹に説明した。

 目を覚ますと、姉のカレンがいなくなっていたこと。自宅にはカレンが生活していた痕跡は残っておらず、友人のマヤはおろか、実の母親でさえカレンのことを覚えていなかったこと。


「イレイザーズの被害に遭った人たちと同じ状況ですね。……兄さん、どう思いますか?」


「分からない。もっとも可能性が高いのは、メイが今言ったとおりイレイザーズが原因ってケースだけど、前回のループで奴らは現れなかったし……。日野森さんたちはどうだった? 奴らと遭遇した覚えは?」


「いいえ。私も、あの人たちに襲われたのは、今日が初めてです」


「うちも」


「となると、カレンさんは、イレイザーズとは別の理由で失踪した可能性もあるってことになる」


「じゃ、じゃあ、お姉ちゃんは生きてるんですか!?」


「断言は、出来ないけど……」申し訳なさそうにソウが答える。「あと、カレンさんが、どのループでも異なる亡くなり方をしていたのも気になる。このループ世界では、基本的にみんな同じような行動を取っているはずなのに」


「その前提が間違ってる可能性はないの?」マヤが尋ねる


「私たち、80回以上も同じループを繰り返してるんですよ? 絶対とは言えないまでも、かなり確度は高いと思いますけど?」


 メイが強い口調で答えると、リビングがしんと静まり返った。気まずい沈黙。それを嫌うようにソウが口を開く。


「今はこれ以上話しても答えは出なさそうだね」


「だねえ」とマヤが伸びをしながら答える。


「でも、取りあえず情報の共有できたと思う。そこで提案なんだけど、僕たちと一緒にこのループから抜け出す方法を探さないか? もちろん、カレンさんを探す手伝いもするから」


「うちはええよ」


「わ、私も……」


 エレンがそう答えた時だった。

 彼女のお腹が、ぐぅーっと可愛いらしい音を鳴らした。

 恥ずかしさでエレンが耳まで真っ赤にしていると、「ああ、そういえば」とマヤが口を開く。


「うちら、まだお昼も食べてなかったよね?」


「だったら、俺が何か作ろうか?」


「え、諌山君、料理できる系男子なの?」


「まあ、簡単なものならね」そう言って、ソウが腰を浮かせる。「ちょっと待ってて。すぐに用意を――」


「兄さんは座っていて下さい。私が作ります」


「は? メイが?」


「メイちゃんが作るなら、うちも手伝う!」


 マヤはそう言って立ち上がると、メイの背中を押してキッチンの方へと向かって行く。

 その二人の後ろ姿を、ソウは中腰のまま見送っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ