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 謎の覚醒を遂げたマヤのことは一先ず置いておくとして、状況はまったく好転していないことにエレンは少なからず焦りを覚えていた。時間が経つにつれ、カレンの存在が遠ざかって行く。自分でも弱気になっているのが分かった。そんなエレンの心中を察したのかマヤが言った。


「次、どうする?」


「え?」


「いや、え? じゃないし。何、あんた? もうカレン姉を探すの諦めたの?」


「そういう訳じゃないですけど……。ただ、どうしたらいいか分からなくて」


「まあねえ。何の手掛かりもないわけだし。でもさ、それならそれで、ここでウジウジしてても変わらんくない?」


「それは、たしかに……」


「だったら、今日はいっそのこと、どっか遊びにでも行かない?」


「え、でも……」


 そんなことをしていてもいいのだろうか?

 エレンが躊躇っていると、マヤが強引に手を引っ張って来た。


「いいから、行くよ」


 エレンは小さく溜息を吐くと、「分かりました」と苦笑で答える。


「それで、どこに行くんですか?」


「とりま、何か飲みに行こ。うち、喉が渇ちゃって……」


 そういえば、マヤさんはいつから私のことを待っていたんだろう?


「何か、ごめんなさい」急に申し訳ない気持ちになってエレンが謝る。


「いいよ。一割くらいしか気にしてないから」


「九割、気にしてるんですね」


 どうしよう?

 お詫びに飲み物くらいは、ごちそうしてあげた方が良いだろうか?

 エレンがそんなことを考えていると、マヤが口を開く。


「そんなことより、さっきエレンの記憶を読んだ時、気になったことがあったんだけど」


「気になったこと?」


「うん。何かさ、エレンがエレンママと会った前後の記憶がぽっかり抜け落ちてたんだけど、何かあったの?」


 マヤの言葉にエレンは首を傾げる。母親と一緒に居た時以外では、エレンはほぼ電車の中に居た。その間はずっとぼんやりとしていたから、具体的に何をしていたのかと訊かれると答えようがなかった。


 ただ、考えてみると、たしかに違和感がある。電車に乗っていたとはいえ、結構な距離を移動したはずなのに、体は全く疲れていなかった。身体能力が向上した所為だろうか?


 結局、その答えは出ないまま、エレンはマヤと一緒に自宅の近くにある喫茶店に入った。そこでエレンはコーヒーを、マヤはオレンジジュースを頼んだ。


 注文が届く間、店の老婆の計らいでおみくじ機で遊ばせてもらうと、マヤとエレンは揃って大吉を引き当てた。


「エレンのおみくじは、何て書いてあった?」


「新世界の神になるでしょう……」


「ま? エレン、神様になっちゃうの? マジウケる。で、ルーレットの方はどうなの?」


「家族がヤバいことになるって……、もうなってるんですけどね」


「もしかして、このおみくじ意外と当たる?」


「どうでしょう? ……あ、そういえば、私が引いたおみくじは、ループする前の世界ではお姉ちゃんが引いてました」


「え、なに? じゃあ、エレンはこの店に来たことあったの?」


「はい。私とお姉ちゃんとマヤさんで」


「マジかあ……。何かあれだよね? 無意識に決められた時間の流れに乗って行動してるみたいな?」


「そうなんでしょうか?」


「知らんけど。でも、そういうのって、漫画や映画でよくあるじゃん」


「よくありますね」


「となると、次にうちらがやるべきことはあれだ」


「何です?」


「前回のループと違う点から問題解決の糸口を見つける、とか?」


 あ、何か、それっぽいとエレンは思った。もし、この世界が前回の世界と同じことを繰り返しているとしたら、マヤの仮説は検証してみる価値がある。

 

「だとしたら、これから私が取るべき行動は……」


「前回と同じ行動を辿ってみることじゃない?」


「ですね。……ああ、でも、私、最初からいきなり前回と違う行動を取っちゃってるんですけど」


「それって、昨日、うちに電話かけて来たあれ?」


「はい。前回の世界では、私、ちゃんと終業式にも出ていたし、母親のところに行ったりもしていませんでしたから」


「まあ、それくらいならセーフじゃない? エレンが終業式をぶっちしようが、母親に会いに行こうが、世の中には何の影響もないだろうし。大体、同じならいいんじゃない?」


「適当ですね」


「いいんじゃない? バタフライエフェクトまで考慮して行動するなんて、土台無理な話なんだから」


 たしかにマヤの言う通り、一挙手一投足を前回の世界を模して行動するなど不可能だ。実際、この後、自分がどんな行動を取っていたのかも、はっきりとは覚えていないのだから。ただ、大まかで良いのなら前回の世界の行動を辿ることは出来る。


 それから駄話をして時間を潰した後、二人は店を出ることにした。


「で、この後は、エレンはどうする予定だったの?」


「たしか、お姉ちゃんと隣町まで遊びに出かけたはずですけど」


「オケ。じゃあ、うちもついてくね」


「え? いいんですか?」


「何が?」


「だって、たしかこのあと、能力の実験台にした弟さんのためにケーキを買って帰るはずじゃ?」


「はあ? うちがシュウ君を実験台になんてするわけないじゃん?」


「え?」


 あれ?

 もしかして、すでに流れが変わってる?

 私が昨日、マヤさんに能力のことを話をしたから?


 エレンは早くも先行きが不安になって来た。

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