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 日を追うごとに五感が研ぎ澄まされていくのを感じる。

 その力は、エレンの人見知りを補って余りあるほど、カレンの予知を回避するのに役立った。

 身体能力も確実に向上し、先日なんかうっかりリンゴを握りつぶしてしまったほどだった。


 その現場を目撃したカレンは、「あはは。本当にゴリラさんみたいだね」と言った。


 悪気が無いことは分かっているのだが、だからこそ余計に胸に来るものがあった。

 もっとも、力を得たことでエレンが被った被害はそれくらいのもので、そのほかはただひたすら力の恩恵を受けるばかりだった。

 

 昨日も、新たにカレンの予知を回避した。

 エレンたちは、8月に入ってすでに十件以上の事件を解決していた。

 そして、カレンが予知した彼女の最期の日まで残すところ10日を切ろうとしていた。


 今のところは順調の様に思えた。

 カレンが予知する彼女の最期も日増しに解像度を増して行ったし、今日もカレンが新たな予知をしたというので、マヤを日野森家に呼んで話をすることになっていた。


「私が死ぬ時、私は一人きりになっていたみたい」三人がエレンの部屋に集まると、最初にカレンが言った。


 すると、「それ変じゃない?」とすかさすマヤが疑問を口にする。


「変って、何がですか?」


「現時点でカレン姉が誰かに殺されるってことまでは分かってるんだから、未来のうちらは当然、カレン姉と一緒にいるはずじゃないの?」

 

「……言われてみればたしかにそうですね」


「ってことは、何かうちらとカレン姉が別行動を取らざるを得ない状況が起こるってことじゃない?」


「おー、マヤちゃん、名推理だ!」ストローでアイスティーを啜っていたカレンが、パチパチと手を叩く。


「まあ、うちももう古参だしね。カレン姉の予知の読み解き方も分かって来たし」


「問題は、私たちが別行動を取る理由ですね?」


「それな。全然理由が思い付かないんだけど、カレン姉、何か心当たりある?」


「予知で見た限りでは、思い付くことはないかな。でも、今回の予知で私がどうやって死ぬのかは分かったよ」


「マジで? それかなり重要な情報なんだけど!?」


「お姉ちゃん、教えてくれる?」


「もちろん。……私の死因は他殺。後ろから刃物で刺されて殺されるみたい」


 それを聞いて、エレンとマヤが絶句する。


「……カ、カレン姉。淡々と話してるけど、うちはかなりショックなんだけど」


「私も……」


「ああ、ごめんね二人とも。私は、もう何度も同じような予知を見てるから、もう慣れちゃって」


「慣れるもんなん、それ?」若干、引き気味でマヤが言う。「前にカレン姉の予知を見せてもらった時、自分のことじゃないのにものすごく怖かった。そんなのをカレン姉は何度も見てるんでしょ?」


「まあねえ。そのせいでちょっと麻痺しているのかも……。それより、私が助かった方の予知なんだけどね。殺されそうになった私の所に間一髪でエレンちゃんが駆け付けてくれたの。それで犯人をやっつけてくれるみたい」


「何かそれ、エレン、ヒーローみたいじゃね?」


「うん。まさにそんな感じ!」


「わ、私がヒーローですか?」


 ……まったくイメージが湧かない。


「カレン姉、その予知、うちにも見せてもらってもいい?」


「うん、どうぞ」


 そう答えたカレンの瞳をマヤが覗き込む。


「……ああ、たしかにこれはヒーローみたいだわ」


「でしょ、でしょ! エレンちゃん、かっこいいよね!?」


 同じ予知を見たカレンとマヤは、大いに盛り上がっていた。

 だが、本当にそんなことが起きるのだろうか?

 自分が颯爽とカレンを窮地から救い出す姿が、どうしても想像できなかった。

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