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ドケチ=キタネーゾ子爵

「ドケチ様、ライト―ン男爵様からお手紙と果実が届いております」

「何!?ライト―ンだと!」


イケメン秘書長から、手紙を奪い取った男こそがドケチ=キタネーゾ子爵。できるだけ出費をしないように工夫し、民のことは塵芥だと思っているので税金はむしり取るアーク教の教えを忠実に守る典型的な貴族だった。


ライト―ンのごろつきを押さえつける手腕を買ってスカウトした騎士団長ハゲス=ハエナスギ卿、平民ながら類まれなる商才を買ったザマス=ルッセーナ夫人、そしてライト―ンの賢者、デブス=フケンコウス卿の三人がライト―ンに行くと言って消えたのだ。


「三人は見つかったのか!?」

「いえ、それがまだ・・・」

「このカス平民が!」


イケメン秘書長は火属性の魔法をぶつけられた。その端正な顔にやけどの跡が付いてしまった。


「さっさと探してこんかい!見つけるまで帰ってくるんじゃない!」

「は、はい!」


イケメン秘書長は顔を抑えながら部屋を出ていった。


「全く!これだから平民は!」


ドケチはイライラしながらもノルからの手紙を見た。内容は贈られてきたカンミという未知の果実の商売をさせてくれというものだった。一方的な要求に対してさらにイライラがMaxになる。


「ド、ドケチ様、騎士団とお得意様方がいらっしゃいました」

「っ!ふう~待たせておけ」

「は、はい」


━━━


「皆の者、良く集まってくれた」

「いえ!ドケチ様のためなら槍が降って来ようとも参る所存です!」

「ふふ、ありがたいことを言ってくれるじゃないか。モブ=エー騎士団長」


そして、ドケチの親戚も皆集まっていた。今日は有識者会議だった。最近、平民たちの税収が減っており、それをいかに解決するかという論点で話し合いが進んでいった。


「━━━ここらで一旦休憩にしよう。今日はカンミというエルフの聖樹になると言われている果実が手に入った」


おお~


ライト―ン領主からの贈り物だということは伏せていたが、エルフという単語一つで神聖な食べ物だということが分かってくれたようだった。このまま縁者や騎士たちに食べさせて評判が良ければ自分たちで商売をしようと考えていた。


「ほ~これは中々絶品っ!」

「?どうした、モブ=エー?」


評判の良い言葉から一転、様子が変わった。


「うっ、くるしぃ・・・っ!」

「う・・・・」

「ぐ・・・なん・・・だ」

「喉が・・・焼け・・る」


口々に床に倒れ伏し、そして、息絶えていった。残ったのはたまたま口にしなかったドケチと少々の人間だけだった。


「な・・・な!」


原因は明らかだった。ライト―ンから贈られてきたカンミ。そして、これがライト―ン側からの宣戦布告だと悟った。おそらくだが、ゴミ騎士を送ったことへの意趣返しといったところか。


「許さんぞおおおおおおおお!ノル=ライト―ン!!!!!」


今ここに勘違いの戦争が決まった。


━━━


あれだけ僕が丹精込めて選び抜いたカンミだ。絶対に気に入ってくれるに違いないよなぁ。外交まで完璧にこなしちゃうノルさん最強じゃない?


途中で盗賊や魔獣に奪われても困るから、フィーアに頼んで騎士団に持って行ってもらった。これで落とされることなくちゃんと渡されているだろう。


「ふんふふ~ん」

「どうかしたんですか?ノルさん」

「ん?ああフィーアか。フィーアが運んでくれたカンミが今頃届いているのかなぁって思ってさ」

「ノルさんが丹精込めて選び抜いたカンミです。美味しすぎて今頃天にでも昇ってしまっているんじゃないですか?」


そこまで褒められると悪い気はしないな。はっ!危ない!こうやって安心させて僕を粛清する気だったんだ!油断も隙も無いな!


「失礼します!ドケチ=キタネーゾ子爵より緊急伝令です!」


バンと扉が開かれて騎士が入ってきた。


「何事だ!重役の会議中に乗り込んでくるほどの事態なのだろうな!」


会議してないよ?ただの雑談だよ?だから、騎士くんも怯えなくていいよ~


「それで何があったの?」

「は、はい!キタネーゾ領の密偵、アーチャー8から報告が届きましたが、団長が通信を切っているので自分が代わりに伝えに来ました!」


密偵までいるのか。そういうのを創設するときは僕に伝えるものなんじゃないのかねぇ。


「アーチャー8から・・・だと?」

「はい!宣戦布告です!明後日に他の領主も巻き込んでライト―ンに攻め込んでくるそうです!」

「なっ!本当か!」

「アーチャー8並びに、他の領地に向かっていた密偵たちも口を揃えて言っております!」

「こうしちゃおれん!全『毒滅の騎士団』団員に告ぐ!ただちに緊急会議を開く!」


フィーアも部下を伴って鬼の形相で部屋を出ていってしまった。


それにしても戦争かぁ・・・え?なんで?


◇ ◇ ◇


「キチーク団長の読み通りになりましたね!」

「私ではない。我が伴侶のご決断だ。先日、ついにこの国を獲りに行くと宣言されてらっしゃった」

「なっ!ついに!」


報告に来た騎士は涙が出そうになっていた。そして、自分の部屋に戻りながらフィーアはアーチャー8との会話を思い出していた。


━━━


「すまんな。アーチャー8、貴様にばかり負担を押し付けてしまって」

『いいですよ。姐御。俺がキタネーゾ子爵の懐に入れると腕を買ってくれていたからでしょう?』


フィーアは通信魔法でアーチャー8、ドケチのイケメン秘書長の本当の正体だ。


ノルが世界を獲りに行くとなったら、ドケチを攻略することが第一関門だった。そこで、フィーアは密偵を送ることにした。しかし、ドケチの傍で重要な情報に触れることができるほど、中枢に近付くことができる人材。


それがアーチャー8だった。


「ああ・・・だが、私は貴様を再び地獄に送り込んだも当然だ。恨むなら恨んでくれ」


アーチャー8は元々平民ながら学業に優れており、役所仕事のエキスパートだった。しかし、ドケチの怒りを買って顔を焼かれて、ライト―ンに流れ着いたという過去がある。


『姐御、そして、ノル様は地獄に落ちた俺を拾いあげてくれた恩人なんですよ。恨むなんてお門違いですよ。それにドケチには一発やり返さないと気が済まない。姐御だってそうでしょう?』

「・・・そうかもな。アーチャー8。貴様は最終任務を与える。今夜の未明にライト―ン領主からドケチ子爵に当てた手紙とカンミが届く。それを無事運搬したら貴様の任務は終わりだ」

『っ!つまり、宣戦布告というわけですね・・・』


画面の奥でアーチャー8の喉を鳴らす声が聞こえて、緊張が伝わってくる。


「その通りだ!そして任務完了の暁にはその類まれなる事務能力を活かした領主の秘書に命じる。途中で投げ出すことは許さんぞ?」

『!サーイエッサー!』


そこで通信は終わった。

『重要なお願い』

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