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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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下級吸血鬼

 「楽園からの調査依頼。 受注者モーガン。 クラス7へのブリーフィングメッセージを再生します。 再度閲覧の際は網膜投影後、再生済みのアイテムから本メッセージを選択してください」


 普段通りの服装をしたモーガンが馬車の中で揺られている。最近新調した愛銃のリボルバーへと弾薬を装填し、セーフティを掛ける。


 「干し草の中から針を探すみたいな……まぁ駄目で元々の依頼だしな」


 狩人が活動するのは大体、自然の中での仕事だ。人工物に囲まれた都市での仕事は珍しい。一般的にではあるが。


 この男が都市部で仕事をする際には大体大勢が死ぬか、都市機能が壊滅的被害を受ける。その点に関して自覚があるせいかもしれないが、視界に映る建築物の成れの果てが時折見える気がする。


 「……精神病のクスリでも飲んでおくべきだったか」


 瞼を下ろして見た荒廃した街並み。目を開けてもその光景が続いている。ブリーフィング音声が遠くに感じられ、外界からの感覚が戻って来たのはドアが開いた時になってからだ。


 「お疲れ様です。 ……お釣りは結構ですので、美味しいものでも食べて来て下さい……それでは」


 開業前の酒場へと入って手近な席へと腰掛ける。他にも魔術師である狩人が集められており、若干殺気立っているようにも見える。


 誰も知り合いは居ない。だというのに視線を感じる。誰か入ってきたなと目を向けたという感じではなく、そこからしばらく見られている様だった。


 「おい、前いいか?」


 「えぇ。 どうぞ」


 1人の男がモーガンの前へと座った。魔術師なのは判るが、どれほどに強いかは定かではない。


 「何しに来た?」


 「……と、言いますと?」


 「見た感じ、魔術師じゃないだろ? 一般人は入っちゃ駄目だ」


 「……えっと。 あぁ、狩人で魔術師ですよ? 一応……あはは」


 「うそつけ、魔力を感じない。 狩人証は?」


 「あっと……財布の中に……どうぞ。 モーガンと申します」


 「失礼しました。 てっきり」


 「あぁ、いえいえ! 良かった〜なんかやらかしたかなって? すぅ〜……あれぇ〜? ってメッチャ焦りましたよ〜。 ははは」


 「ふふ。 えぇ、すみません。 こちらもてっきり……」


 そんな社交辞令というか雑談をしていると奥から雰囲気のある男が現れた。訝しげな表情のまま低く力強い声を吐き出すのだった。


 「仕事の時間だぞ。 アイスブレークもその辺にしておく事だ。 お前もあっち行ってろ。 大人同士の話だ」


 「はい。 いますぐ!」


 「身分証ぉ! ……ったくよぉ……」


 断りもせずモーガンの前に座る大男。 随分と小さく見える狩人証を再度受け取り財布へと戻す。


 「お前がモーガンか。聴いていたよりも腑抜けた面してやがる」


 売られた喧嘩は買う。この状況に限ってはそうする事にした。例え店の列に割り込まれようが、そこいらのチンピラに貶されようが、わざわざ事態をややこしくする事は稀だ。


 同業者の前で示しのつかない事はあってはならないのだ。ナメられると今後に支障が出かねない。それに、団長ともあろう男が思惑も無くこんな下らない事をやってくるとは思えないのだ。


 「お。威圧してるんですか? そういうの古いっすよ〜? オジサン」


 「っは。 肝は据わってるな」


 「いいえ。 わざわざクラス7程度をイビる理由も無いでしょう? ってことは、タマ無しかを確かめるパフォーマンスかと思いましてね……あと、さん をつけていただいた方がよろしいかと。 オジサンさん?」


 結構根に持つタイプか……と内心めんどくさそうに眉間にシワを寄せた大男。気取られぬようにほくそ笑むと机に肘を置いて顔を寄せてきた。


 「ゾディアック。 それが名前だ。 まぁ、お前も偽名だろう。 今回は俺の団と協働し、目標を生け捕りにする」


 「お前ではなく、モーガンと。 ゾディアックさん」


 「さんは要らねぇ。 お互いにな」


 お互いにお上品なタイプじゃないだろう。そういった目線を感じ取り、俗っぽい返事を返す。


 「そっか、ゾディアック。 で、団長同士でこれと言って特徴の無い人型個体を追跡すると」


 「……お前と組むのは別の奴だ。 捜索開始は今日の夕方からだな。 俺は別の仕事がある。 部下を欠けさせたらタダじゃおかねぇからな」


 「あはは。 それって、自分の部下が死ぬ様な弱い術者って事の自白ですか?」


 「……あ?」


 「おぉ。 これはこれは、痛いところを踏まれたみたいだな。 教育係は外部委託かな? 不用心ですなぁ、己の部下を他所の組織に教育させるのは、術式情報の漏洩のリスクがありますよ?」


 周囲に居る団員が席を立って魔力を励起させている。モーガンを狙った感じではなく、団長であるゾディアックへと向けられている様にも見えた


 「……ははは。 物怖じしねぇ。 気に入った」


 「そいつはどうも。 部下の信頼がある団長とは仲良くさせていただきたい。 本日はよろしくお願いします」


 モーガンが手を差し出し握手を求める。ゾディアックはその手を取る素振りすら見せずに立ち上がると自分の部下たちへと目を向ける。


 「っは。 お前ら、後は任せた」


 背筋を伸ばした団員達が一斉に返事をしてゾディアックの姿が消えるまで背中を見つめていた。


 「すみませぇん……あの人ちょっとアレなので〜…。はいぃ……」


 「己の無礼を部下にさせるとは……大変ですね。 それなりにいい面もあるんでしょうけど。 多分2人1組で事に応るんでしょう……自分と組む方はどちらに」


 「あちらに……」


 「…………ん〜? 何処かで会ったことのあるような……無いような……あ。 フレッドのバディの方では?」


 「お久しぶりです。 と言っても、名乗ってはいないのですが。 ナタリアと言います」


 「……テレポート系の術者でしたよね……お久しぶりです。 って事は、今回組むのはナタリアさんと?」


 「えぇ。 そうなりますね」


 「よろしくお願いします。 フレッドも来てるんですか? 食事をご馳走したいと思ってたんですが」


 「あぁ……彼は殉職しました。 使徒の狩猟案件で」


 「そうでしたか……。 お悔やみ申し上げます……」


 「いいえ。 自身の術式を過剰に信頼した末路ですよ……。 よろしくお願いしますね、モーガンさん」


 「よろしくお願いします」


つづく

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