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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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翅をもぎ取る指先

術式名は適当につけてます

カサンドラの背から翅が拡がり、空色に透けたガラス細工のように繊細で美しい模様が浮かび上がる。目には美しいが、肌で感じる禍々しい圧は相当なものだ。


 「紫電の狩人とか言ったかな。 この距離でグール化しないとは、大したものだ。 あの白い光線を撃ってきた連中とは仲間では無いのだろう? あれらと比べて君は強すぎる」


 「……そいつはどうも。 月影をくらって生きてる奴は初めて見たよ」


 「電力による摩擦熱。 なに、最初から電気系の術式を打ち込んできたんだ。 想像に難くないさ。 随分と魔力を削られたけどね」


 手の甲の焼け焦げから赤黒い魔力の煙が立ち上ると、元通りに組織が再生している。


 (やはり頭をはね飛ばすしか無いか……。 しっかしよぉ、モーガン。 お前って奴はこんな化け物相手に肉弾戦仕掛けてたのかよ……ちょっぴり尊敬するぜ)


 「ストームコールだとか言ったかな。 まだ全力を出していないだろうし、見た感じは環境補正による能力の底上げかな。 足下に雲。 そして太陽との間にも雲。 自然じゃ起こり得ない事だ。 言わば、固有結界の広範囲版といったところかね。 翅を広げても魔力の戻りが悪い」


 カサンドラが指を鳴らすと共に太陽を覆い隠していた分厚い雲に穴が(ひら)いた。差し込む日光は異様に眩しく、そして輪郭が大きく膨れて揺らいでいる。


 「だが、広範囲故に脆い。 私の術式の開示をしよう。 陽光の術式。 光の操作こそ私の最も得意とする術式さ。 そして光ある場所はすべて私の結界内とも言える 〈第一(アインス)〉」


 大きく揺らいだ太陽が一瞬大きく光る。 ほんの一瞬だ。一呼吸にも満たない間に、ランディの左腕が切り飛ばされ、炭化した断面を見せつけながら雲へと落ちて行く。


 「そして、光によって生じる熱。 〈第二(ツヴァイ)〉」


 断面に浮かぶ赤熱模様が明るくなり、落ち行く左腕を消し炭へと変える。カサンドラの目線は腕の持ち主へと向けられ、少し感心した様に声を漏らす。


 「危ねえな……ったくよ」


 焼き切れた腕には瘤のように丸くゴツゴツした雷雲がまとわりつき、内側に雨を降らせている。滴り落ちる水に、気化した湯気が中から這い出て来る。


 「俺の友達に、お前らみたいな化け物に詳しい奴が居てな。 どうも上位種にまで至る奴ってのは妙にポジティブな奴が多いんだと。 あれだよ、漫画(コミックス)の悪役ってのは自分の理念があって、大虐殺だとかを引き起こす。 自分なりの正義感が強いタイプで頭がちょっとアレな奴らだと言ってたが、アンタはどうして "そう" なったんだ?」


 「さぁ、気がついたらこうなってたのさ。 それに、どうも人間ってのが好きになれなくてね。 まぁ端的に言えば、怨恨だねぇ。 弱い奴らは滅ぼさないとさ。 魔術師は殺したくないんだけどね。 そこを退きな、そうすれば命は取らない」


 ランディが残った腕で顎を撫でて、考えを巡らせている。


 「魔術師だけの世界ねぇ。 悪かねぇけど……イケメン選別理論って知ってるか? イケメン以外を殺して、さらにイケメンの中からさらにイケメンな個体を残して他を殺すってやつ。 そしたらどうなると思う? イケメンの基準が上がって、前までイケメンだったやつが醜悪と見なされ処刑される。 破綻してんだよ。 その他大勢を殺しても結局、残った少数で殺し合う羽目になるぞ」


 「それでこそ、理に適った世界だろ?」


 「ん〜この。 なんとも芳ばしい。 ……だとしてもヤダねぇ……。 …………この靴、ベグリモンティっていうブランドの靴なんだけど、これを手掛けているのは非術師の人間だ。 俺は好きなブランドの革製品が無い世界だなんて嫌だねぇ」


 「で、退くのかい? それとも退かないのかい?」 

 

 「今の話で判れよ。 嫌だっつってんだろ、頭が弱いのか? 察しろよ」


 「蒸発しろ、〈第三(ドライ)〉」


 ランディの肉体がくり抜かれる。顔面半分、胴体と腹部に穴が空き、向こう側の空模様がくっきりと見える。


 「口ほどにも無い……ん?」


 顔面半分、半身分の肉が蒸発したランディがニヤリと笑う。


 「口ほどにも? バカ言え。 俺ぁ、腐っても上澄みの魔術師だぞ? ナメるなよ」


 ぐずぐずと肉体が崩れるとともに色が抜け、輪郭が丸みを帯びる。崩れた肉体が雲に変化し、姿を消すのだ。


 「第三(ドライ)ねぇ、複数方向からの虫眼鏡攻撃か? 理屈は単純だが、この規模でやれるのは凄いよ。 普通、虫眼鏡で炙ったとして、水分があるから焼き切るなんざ出来ないもんだからなァ……!」


 カサンドラを取り囲む様にランディが何十人と現れる。上下左右、斜め方向。 視界内外全てに奴の魔力が満ちている。


 「アンタが太陽から魔力を取り込み、他人の魂を使って底上げしたとしよう。 マジで強くて、一見最強に見える。 なんせあの太陽を味方につけてるんだからな……けどよぉ、俺ぁこの星が味方についてるんだ、自然サイクルこそ我が家臣。 どこぞの遥か彼方に居る仲間とどっちが頼りになるか、ここで証明しようじゃねぇか」


 「紫電の魔術師。 的が多ければ勝てるとでも? 〈第一(アインス)〉!」


 「〈雷霆刃・星薙〉!」


 幾つかのランディがダメージによって雲へと還る。残った数十体の紫電の魔術師が放った弧状の紫電が幾重にもぶつかると共に、カサンドラの肉体に放電光が重なり、たちまち火の手が上がった。


 「……この威力……!」


 「的だとか言ったか? 違うね。 こいつらは全て俺だ。 同じ魔力出力、術式の完成度。 姿形、ニオイまでな。 お前は今、上澄み魔術師を数十人相手してるのさ。 多少の危機感は持って欲しいモンだぜ!」


 「〈雷霆刃・月影〉! 焼け崩れろ! カサンドラ!」


 カサンドラがこうべれ、力なく微笑んだ。 慈愛に満ちた笑いではなく、憎愛に歪んだ狂った表情を見せると、ポツリと呟くのだ。


 「〈熱無き太陽ブラックアウト〉」


 真夜中に照明を落としたかのように世界に暗闇が現れた。一切の情報が消え、不気味になり続ける風が耳元で騒ぎ立てている。


 「なんだと……」


 ランディの胸を黄金色に輝く刀身が貫き、凄惨な光景が暗闇に強調されて浮かび上がった。


 つづく

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