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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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雨水の溜まった鞄

 テーブルの上に荷物を広げ、当分の物資を確認する。負傷者1人を抱えて動き回るのだし、余裕を持たせたい。特に焼き菓子は使い勝手が良いと多めに詰め込み、肩紐に腕を掛ける。


 「……そろそろ出たいが、大丈夫そうか?」


 痛み止めの他にもまともな医薬品で処置した傷口を見せながら男が席についた。完全な病人を抱える必要が無くなった事に安堵し、別の鞄を投げ渡す。


 「っと。 あぁ、貰った薬が良く効いたようで良く眠れた。 先ずはどこへ向かう?」


 「……この状況じゃ望み薄だけど、11ブロック先の緊急避難所に立ち寄る。 そこが駄目なら東に逸れて教会に。 駄目なら外壁付近の建物で休息。 魔力は?」


 「2割ってところかな。 肉体の補助で使い切るだろうけど、まぁ やばい時は対消滅ビーム撃てば解決よ」


 何世代に渡って術式を挿げ替え続けており、かつて程の威力は無い。当時に生きる人間からすれば、あの光線ですら手抜きに見えるだろう。


 弱点とすれば火力が目減りして行くという点。短期決戦向けの術式だが、当たった相手はだいたい死ぬ。


 「燃費悪いんだから無茶しないでください。 グール十数匹殺しても焼け石に水です。 それに、建物の屋根伝いに行けば戦闘せずに移動できますし」


 「それもそうだな。 で、狩人サン。 道中生存者がいた場合、どうする? 危険を承知で助けに行くか、無視するか。 どっちだい?」


 「場合と状況によります。 見て決めます」


 屋根裏へと上がり、採光窓を通って外に出る。グールがうろついている中、わざわざ窃盗を働く人間が目に入った。グループ窃盗というやつだ。他所の街で売っ払う為の金品を漁っている。


 「……火事場泥棒か」


 下の惨状さえなければ美しい街だと思えたのに。そんな言葉が浮かんでくる。


 「私達もおんなじでしょう。 鞄に入ったビスケットも盗品ですし……。 ところで今回の上位者。 中々に厄介な個体ですね……これだけの人間を変異させた。 潜在的魔力の低い人間を片っ端から。 合ってますよね」


 「否定はしない」


 「あの水カビの様な繊維質。 強い魔力に当てられて変異した体毛。 フェイスレスとは系統の違うタイプだ。 動き回るだけで動植物を変質させ、こんな事に」


 「……なんでそんなに詳しいんだ? パパに聞いたのか?」


 「ははは。 施設育ちですから親の存在すら不明ですよ。 グルド人とオーク族の戦争。 オークを根絶やしにし、紅い目の悪魔と言われるようになった戦争。 厄災戦争の後、両軍が魔術を撃ちまくった地域の魔力汚染によって似た症状が出た獣が確認された事は知っていますか? それに似ていたんです。 膠着した前線で人間と魔物が8ヶ月ドンパチやったのをこんな短期間でやれるとくれば、推察できますよ」


 「そういう質問じゃない。 上位者に何故詳しいかと聴いてる」


 「何回か殺した事があるって言えば、説明になりますか?」


 朝焼けの太陽を背にしたモーガンが穏やかな目で見つめて来た。爽やかな風が耳の中で渦巻いて音を濁らせるのだ。


 「手の届く距離で戦ったんです。 なんとはなくわかりますとも。 さ、日のある内に移動しちゃいますか。 私も一度家に帰って調子を戻したいですし」


 「……そうか」


 それから数時間歩いた。何度か迂回する事になって思ったよりも進まなかったが、確実に目的地へと近付いている。


 グールが彷徨う姿を見下ろしながら屋根伝いに移動する。歩を進めれば進めるほど、モーガンの表情が良くなって行っている事に気が付いたウォルターが理由を問う。


 「良い兆候か?」


 「えぇ。 さっきから土系の術式による道の寸断があったので、それにあそこ。 目的地周辺なんですがね……白い煙が見えますかね。 物を燃やしてるって事は、人間がいる可能性がありますし。 良い兆候ですよ。 今日は見張りをせずに寝られそうです」


 「……眠ってないのか?」


 「なぁに、徹夜は得意です。 行きましょ……あと20分くらいかな? しっかし、いい人たちが生きてればいいですけど」


 「?」


 「もしかしたら、地元の武力団体が統治してる可能性もあるって事です。 であれば外の野宿の方がマシまである。 トゲトゲつきの肩パッド集団かもしれません」


 「やべぇな。 まぁ、冗談はさておき。 生存者が居たら先ずは何をする?」


 「通信設備が壊れてるっぽいので、修理できるなら人手を借りて、修理に向かいます。 ウォルターは警備の手伝いでも。 皮算用しても仕方無いですね……」


 「だな。 なぁ、好きな女のタイプは?」


 「……ん〜。 特に」


 「そ。 好きな酒は?」


 「強ければ何でも。 急にどうしたんです?」


 「真面目な話ってつまんねーからよ。 馬鹿な話でもと思っただけさ」


 「話し疲れても知りませんよ?」


 つづく

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