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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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泥水の中

 暖炉の前には食事が入った皿がいくつか置かれており、そのうちのいくつかを負傷した男へと手渡す。


 しっかりと香辛料で臭みを消した野生肉の大ぶりなステーキに野草と屑肉のスープ。穀物は無いがこの状況では最善で最良なごちそうである。


 「……すまないな。 調味料、どっから持ってきた。 酒まであるが、ははは。 店をやってる奴が居たのか?」


 下らない冗談に興じる元気も無くなっている様子でモーガンが返事をする。彼の傍には同じ食事とボトル入りの強い酒、新品のタバコが何箱か置いてある。タバコが多いのは、こういう状況で通貨代わりになり得るからだ。最悪の体調不良であっても食料と交換できる。


 「略奪にあった店の前に転がってたんです。 非常事態だし、仕方の無い事でしょう。 それとも、倫理について説教をするつもりで?」


 一切愛嬌のない表情。相当な疲労が蓄積しているのが見て取れた。彼が出かける以前より雨が強まり、落雷まで起こっている。そんな中で魔物を狩り、解体して帰ってきたのだ。仕方の無い事かと男は額を掻く。


 「いいや。 気にするタチかと思ってな……気にしてないなら、まぁ良いか。 そっちはどうしてここに?」


 「仕事でね。 知り合いの手伝いついでに厄介事に巻き込まれたってだけで。 それがまた、別の厄介事に繋がったってだけ。 そっちは上位者出現で討伐に来たんでしょう?」


 モーガンがタバコの封を切り、男へと促す。 さっきから落ち着かないのはニコチン切れだろう? モーガンがそう言い何人か引き出して寄越してくる。


 「お近づきの印に」


 「コイツはどうも……」


 咥えると共にモーガンが指先に火を漂わせ、先端を炙る。 ライターで火をつけた時の味とは違った味が広がり、この銘柄にしては喉に来る感覚が強かった。


 「良く吸うのか?」


 「魔力切れに効くんで極稀に吸うだけです。 吸わなくても死にはしませんし。 寧ろ、こっちはしょっちゅうね」


 モーガンが1口吸うと、もう十分だと言い、暖炉に投げ込んだ。


 「……さっきの話だが、内情を知ってんのか?」


 「まぁ結構同じ現場になることも多かったですし。 一度入ろうとした事もあったんですが、条件がハイリスクでね、諦めたんです。 術式を剥がして、対消滅の術式を移植される。 致死率が極めて高い施術ですし、上れるキャリアも現場の実働員までが良いところ。 選択肢が狭いと……すみません、本人の前で。 昔は人をこき使う立場に憧れてて、そういう判断をしたってだけです」


 「いいや、実際そうさ。 こうやって死にかける仕事だし、まぁ良い選択をしたと思うよ。 ……俺はウォルター。 上位者殺しのモーガンと食事が出来るとは光栄だ。 先のフェイスレス事件、ありゃスゲェ術式だったよ。 あの豆粒ほどの玉がアレ程の破壊力だとは」


 術式の炸裂前の姿を知っている様子だった。騙して情報を抜いてくるような奴では無さそうだと、いくつか浮かんだ生返事を消して正直な返事をする。 この状況で嘘を言うとは考え難い。


 「あの現場にも出てたんですか」


 「まぁ、他と変わらず鉄砲弾としてだけどな。 トドメ刺してくれなかったら俺も死んでたよ。 今回はソレが使えずにこうなったのか? モーガン」


 「……地下室でしたからね。 概ね、原因は特定出来てるんでしょう?」


 「君が居た場所から現れた。 それは知ってる。 狩人協会の回収部隊が出ようとしてたから止めたのも我々だ」


 「容疑者が偶然目の前に現れたと」


 「いいや、おそらく君は死んだんだろうとされていたよ。 言っただろう回収部隊だと。 何があったんだ?」


 モーガンの表情が少し強ばり、顎を少し引いて拒絶的な態度を見せる。


 「いいや、先ずは狩人協会介して情報の開示を待って欲しいですね」


 「お堅いねぇ。 残念。 同じ国のよしみで教えてはくれないか? ちょっとだけ」


 食事をしていた手を止めて腕を組む。こういった状況になったのは何かの縁だとは思っているが、どうやら魔術師協会に良い印象を持っていないのは明白な反応を示す。


 「そりゃ、上位者の力を利用してやろうって集団に教えはしないですよ。 一度、討伐した使徒のサンプルを破壊された事もありましたし。 ファットボーイ。 存じている筈でしょう?」


 「さぁ、どうかな。 これは尋問かい?」


 「……いいえ、ただの世間話ですよ。 そちら様も、あくまでも世間話でしょう? 会って直ぐにトモダチって感じの根明では無いのでね。 味付けはどうです?」


 「悪くは無いな。 外はどうだった。 生存者は居たか?」


 「グールばかりですよ。 動ける人間は今の自分達と同じで家に籠もってるでしょうね。 それか避難した後か。 ……1日はここに滞在して魔力が戻り次第移動します。 ついて来られそうですか?」


 「あぁ、ここにいても死ぬだけだろう。 こんな惨状じゃ、狩人協会とて救助活動に何日かかるか」


 「封じ込めも失敗してますからね。 それに元々狩人協会の権力が弱い場所です。 余計に時間が掛かるでしょうね。 取り敢えず、雨が止むまではこの家で凌ぐしか無いでしょう。 食べ終わったら言ってください。 上の階にベッドがあるのでそちらまで移動する手伝いをしましょう。 その方が傷の治りも早い筈です。 あと、服と包帯も変えましょう、感染症が怖いですし。 ……上の部屋から手頃な服が無いか探して来ます。 ごゆっくり」


 空になった皿を置きモーガンが姿を消した。


 「……あれがモーガンねぇ。 予想とはだいぶ違う奴だな」 


 つづく

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