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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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祖先の契約

 あれ程に金のかかった食事はいつ以来だろうか。口の中に残った味が考えを引っ張ってくる。そんなモーガンがカイルへと声を掛けた。


 「ところで私の事を何処で知ったんですか?」


 日光が弱まった夕暮れ時。 涼しげな風が肌を撫でる。


 「狩人協会はお得意様でして。 昔から狩人の話を耳にしやすい環境で育ったんです。 その中でも貴方は特に興味を唆られた」


 良い庭園だ。そう言って柵へと体を預ける。祖先が代々手入れしてきた自慢の庭だと伝えると、そりゃあ良い。とても素晴らしい庭だと言って、考えに耽っている様だった。


 「……唆られた。 災害クラスの化け物を相手取って単身でブチのめす狩人は他にも多い。 それとも、誰かれ構わずに同じ事を言っているんですか?」


 「まさか。 あれだけの事をした後に、ずっと個人でやってる人も少ない。 普通はどこかのお金持ちお抱えの用心棒だとか、広告塔としてモデルに起用されるのが多いでしょう」


 それよりも、あの夢のことがどうしても離れない。見覚えのある男。あの大惨事を引き起こした女と関連があり、妙な夢だと只の夢だと捨てるは惜しい。


 「金持ちの用心棒と企業のモデルやってれば害獣被害が減るのならそれも良い。 延長の選択肢であるだけで、狩人の本質ではない」


 「ふふふ……噂通り、頑固というか。 それに、他とは違った目を持っている。 ……ご安心を、この事は決して話したりはしません」


 「……君も見えるのか?」


 「えぇ。 同じ景色を見れる人は居なかったので。 噂話でしか無かったんですけど、話を聞く限り自分も同じ様な経験があったので、間違いないか

な〜と。 まぁ、遺物または呪具を集めているのは我が家の遺伝とも言いましょうか」


 「……遺伝?」


 「精霊だとか悪霊が見えるだけで、こちらからアッチ側に干渉出来ない体質でして。 魔除けついでに集めているという側面もあります」


 「へぇ。 まぁ、そもそも人と違う景色が見えても不便なだけですからなぁ……。 他にも理由があるのでは? 遠い昔の約束事に血筋が縛られているだとか」


 「……いえ。 その様な話は」


 思い切って聴いてみるが吉と判断して声を出す。子どもとは言え、組織のボスをやってる相手だ。多少怖い話をしても問題無かろうと踏んでの選択だ。


 若い実業家なら問題無いだろう。ラクな環境で歳をとった中年よりも根性がある。


 「……そうですか。 妙な夢を見たんです。 この屋敷の応接室で魔術師と契約を結ぶ場面の夢を。 一族の中で妊娠中に病で死にかけたところを魔術師に救われた人物は居ませんでしたか?」


 「いいえ。 その様な話は。 すみません」


 見透かしたかのような表情。嘘をついたとして、それがどういった嘘で、つくことでどんな利益があるのか。場合によっては嘘を信じて死ぬ可能性がある環境で生きた男の目をしていた。


 目をみた瞬間、見透かされた事がついた本人ですら判るほどだった。


 「そうでしたか。 ……まぁ、しがない野郎の独り言として聞き流して欲しいんですが。 預かっている遺物があるのであれば、それは破壊した方が良いですよ。 特に、現代でさえ強い力を放っている品はね」


 「昔、遺物関連で痛い目にあったんですか?」


 「人間に持たせるとロクなことが無いという話ですよ。 まぁ、収集家であるのならコレクション目的でしょうし、下手に使う様な馬鹿はしないでしょう」


 「遺物の失敗談、何かあります?」


 「代償で皮膚が全て無くなった男に、ゼリー状の肉塊になった女。 赤子にまで若返って死ぬまでその姿のまま、育児疲れで殺された50代のオッサン。 未知の疫病を解き放って国が1つ滅んだ、灰化病の遺物。 無限の富と引き換えに、親族皆病死、生殖機能を失った男」


 「あぁ……やっぱ良いです。 グロいのはちょっと」


 「明らかにヤバい遺物を保管しているなら、さっさと砕いちまうのが賢明ですよ」


 「今までで見た遺物の中で最も有用だった遺物とかはあります?」


 「15分だけ穏やかな雨を降らせるって遺物ですかね。 ただ、その雨に打たれた土地は地滑りが起きやすくなるっていうデメリットがありますが。 自然様の都合を人間如きが強制するんです。 まぁ、妥当な代償ですよ。 あと微細精霊が死滅するっていう謎な光景をみられますよ。 純粋に土地が痩せるってデメリットだとは思いますけど」


 「へぇ〜……! それは今どこに?」


 「度し難い収集家根性してますね……ダメですよ教えませんから」


 「ちぇ。 ケチだな〜」


 「うるせ〜。 欲しいものは手に入れないと気にすまないタイプだろ。 やめときなされ、若いの」


 「若返りだとかの遺物って今まで見たことあるんですか……あぁ、さっき言ってましたか」


 「ありますよ〜。 人生上手く行かなかったオッサンが若返って最後は捨てられた話」


 「それ何年前の話ですか?」


 「6年くらい前? 大きくならない養子が居るって依頼で見に行ったら、見事に呪われてんの。 何処で保護されたかを調べたら、彼の住まいにたどり着いて、どうやら遺物を使って赤子に戻ったらしいと。 ちなみに56のオッサンですと伝えたところ、卒倒しかけてましたよ。 そっから縁組団体に返還。 特別措置ですがね」


 「その後、新聞でとある夫婦が殺人で逮捕されたと言う記事が出てました。 老いない赤子を捨てて死なせた。 確証はないですが、あの赤子モドキだったのかもしれません。 決して若返りだとかの甘い誘い文句に乗ってはいけませんよ。 稀に代償無く使えるのがありますが、目に見えないだけで未来の寿命を使ってる可能性だってありますので。 まぁ、使わないに越した事はないってやつですね」


 「へぇ。 遺物運搬で狩猟団に箔が付くと言っていた方とは思えない詳しさですね」


 「こういった方が信じてもらえるかと。 経験は何事よりも大事で、嘘をつかない。 自分にも他人にも。 これから話すことを信じて欲しいから開示したまでです」


 モーガンが柵に背中を預けカイルの方へと目を向ける。冗談など微塵も含まない視線を向け、寝起きの如く低い声で続けた。


 「近い内に天パで胸に茨と眼球の彫りを入れた随分と若々しい、爺さんが訪れると思います。 おそらく、過去に預かった遺物を取りに来る……んだとは思うんですが、その時は」


 「その時は?」


 「自らの命を最優先して生き延びなさい。 他の大人の命を犠牲にしても生き続ける選択を躊躇わない事です」


 「……予知夢だとか?」


 「それか、この家が私を通して見せたのかもしれません。 ……明日にはこの国を出る予定ですので、伝えましたよ。 預かった遺物を砕いて、隠れて生きるか。 取り立ての後に利用され続けるか。 選ぶのは貴方です」


 その事がどうも頭を離れない。あれから3日。 小休止しているカイルは体を伸ばし、考えに耽っている。


 「……家が見せた。 家が見せたか……。 入れ墨の男」


 キャビネットの一番奥へと仕舞ったファイルを取り出し、日焼けした紙を広げる。


 「そこまで悪い人なのか……?」


 テーブルにはモーガンの言っていた男の写生画と魔力を放っている契約書が広げられていた。


 紙を拾って窓脇へとより沈みゆく西日に照らしながら良く眺める。そんな彼を下から眺める男が門前に立っている。


 「……相変わらず繁盛ってやつかね。 昔来た時よりか、少し綺麗になったか?」


 「……失礼、もう訪問者は立ち入れない時間です」


 「あ。 良いよ。 勝手に通るし」


 軽く跳ぶと数メートルはある門を飛び越え、噴水の前へと着地する。


 「イイね。 良く訓練されてる」


 銃口を向けられ、複数の術者に囲まれたにしては、随分と落ち着いている。座り慣れた椅子に腰掛け寛いでいる様に。


 「いますぐに出ていけ。 撃たれたくはないだろう、魔術師」


 「……撃っても良いけど、そしたら報復で殺すけど良いよね? 僕は喧嘩をしに来たんじゃないよ。 預けてた物を取りに来ただけだ。 ボスに伝えな。 デクスターが戻ったとな」


 「……いいえ。 その必要はありませんよ。 皆さん、通常の業務に戻ってください」


 仰々しい挨拶。膝を曲げ、左手を胸に置き、引き下がるように腰を落して頭を下げる。


 「……おぉ〜。 これはこれは、随分と若々しいご当主だこと。 パパとママはどこかな? あぁ、早死したのか」


 癪に障る奴だと思いながらも、背を向けてついてくるように首を振る。


 「……預かり物をお返しします。 どうぞこちらへ」


 「へへへ。 堅物な童だこと」


つづく 

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