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狩人の生活  作者: 青海苔
第二章 星屑の反逆者達
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内ポケットに隠した便箋

 「……と言うことで、ファットボーイ解析概要の説明を終了します。 各位、部署に展開願います。 以上、質問は?」


 「では、これにて解散します」


 ファットボーイ解析概要の説明会を終え、今回の件にあたった2人がレオの後ろへとつづく。


 長い廊下を歩く中、ミリアが悪態をつく。 あぁ、酷い長話だった。結局は何もわからなかっただけなのに仰々しいと。


 「何もわからなかった事が判ったんだ。 そして、次の変異体が出現した場合、再び捕獲の依頼が発注される。 今度は、頭部と胸部をきっちり残した状態でって依頼をな」


 「まぁ、おつかれ。 どうだった? モーガンと組んだ感想は?」


 「別に〜」


 「おいおい……。 咄嗟に助けられたのはお前だろうに……」


 「はっ。 あんな遠距離攻撃、軽く防御出来るっての〜」


 「……自分としては、頼りになる奴。 と言う一言につきます」


 レオがそれを聴いて嬉しそうに微笑む。


 「そうか。 あっちからの評価はあまり芳しく無い感じだぞ? ふふふ……ミリアに関してだが、術式行使中に周りが見えなくなる。 とだけ」


 「っけ。 余計なお世話だよ」


 「……俺は? なんか言ってましたか?」


 「お前のは特に酷い。 不必要な単独行動を行い、行動に至るまでに迷いが無い。 普段からの習慣によるものと推察でき、改善が必要と考える……だとさ。 実際、3人で事にあたる案件だったのに、先走った行動は褒められるものじゃないな」


 「……まぁ、確かに。 ……」


 「不服そうだな。 やっぱり、やった事に対してとやかく言われるのは嫌だろうが、自分の実力以上の相手が来た時、死ぬのは先ずお前からだ。 複数相手にリンチされる可能性があるからチームで動いて欲しいとオーダーが出てるんだ。 んで頭数の減った残り二人が各々殺される。 お前が居なくなった後に、二人が待ち伏せにあって死ぬ可能性だってある」


 「……ふ〜……。 まぁ確かに」


 「……嫌なのは判る。 けどな、お前も狩猟団を立ち上げるんなら、リスクを取りすぎないやり方ってのを考えないといけない。 昔から強い術式でプレイヤーとして優秀だった奴がそのままリーダーをやってメンタル病む事例なんていくらでも見てきた。 というわけで、狩人協会から有り難い教育指導がございまーす!」


 「まじかよ……」


 「ミリアは指導パンフレットを受け取って帰っても良い。 後で対策を提出な。 今回は紫電の狩人にヘイトが向いててな……依頼元から改善依頼が飛んできてんのよ。 もちろん俺もバチクソに絞られてるから頼むわ」


 「……モーガンは?」


 「あいつは、今回の件の報酬を拒否した。 報酬を受け取れるパフォーマンスを出せなかったとしてな。 んで、被害のあった区域の壁外警備を無償で請け負って、昨日まで仕事だった。 始末書も提出済み。 あくまで不可抗力。 彼の言い分が受理されて、お咎め無しさ。 その分、こっちは報酬も受け取ってるから相応の対応を……ってわけ」


 「……通りで、あのあと飯誘ったのに颯爽と居なくなったわけだ」


 「……いやいや、ウキウキで飯行くか? 普通。 一応言っとくけど、任務失敗してんだぞ?」


 「……いや、行くでしょ。 仕事終わりは盛大に祝わなきゃ」


 レオが口を大きく開けて眉間に皺を寄せる。 一瞬硬直した後に、首を左右に振ると困惑気味に息を吐き出す。


 「最近の奴の考えが解らねぇ…………歳かな……?」


 しばらく後。日付が変わり、太陽が上りだした朝焼けくらいにモーガンが目を覚ました。


 (……あぁ。 疲れた……流石に大型の怪物を連続で相手すると、結構響くな……)


 「……んう……」


 側で眠るアリスの頭を優しく撫でて寝床をあとにする。


 ベッドの端で落ちそうになっているアリスを持ち上げて中央へと乗せ直すと、いつもの上着を羽織ってリビングへと姿を見せた。


 「やぁ、モーガン。 起動時間が被るだなんて珍しい……奇遇(きぐう)ですね。 普段は平均して40分ほど遅い筈ですが……顔色が優れないですが、何かありましたか?」


 「ん……あぁ、アリスに毛布全部巻き取られてた……通りで、疲れが抜けて無いんだな……ソファーで二度寝するもありかねぇ……」


 「それは災難でしたね。 一度、彼女の家で家事手伝いをしましたが、確かに寝相の悪さは人一倍でしたからね……コーヒーを淹れましょうか? 先日までの出張で、お疲れでしょう」


 「……頼む。 ジャンクヤードでお前を拾って直して正解だった。 良い話し相手になってくれて助かるよ」


 「いいえ。 充実した日々を過ごせておりますから、お互い様でしょう。 それに、あそこでは私よりも新しいオートマタが壊れていく毎日でしたから……貴方の傍での毎日は楽園の様ですよ」


 「……そうだ。 モーガン。 どうして私を拾って修理したのでしょうか?」


 「前話さなかったっけ?」


 「なんとなく。 とだけ。 そういう会話ログが残っています」


 コーヒーを前にしてカウンター席へと腰を下ろす。


 「……そうだな。 まぁ、売っ払う相手が居なかったってのが、まずは前提かな。 四肢が酷く破損して、頭部パーツも雨水で使い物にならなかった」


 「それで、どうして持って帰ろうと?」


 「はは。 まぁ、その日は目ぼしいスクラップが拾えなかったからね。 手ぶらで帰るのもなんかムカつくってんで。 動きそうなコアユニットでも持っていこうって探してたんだ。 でも、コアユニットなんてまさに高級品、真っ先に持っていかれるパーツだ。 現行のジャンクが投棄される場所より古い場所。 思い当たる節があったからそこを漁る事にしてな……まぁ、結果は散々だ」


 「市場価値のつかない旧式のパーツばかり。 錆びて風雨でボロボロになったオートマタしか無かった。 他人が寄り付かないのには理由があるって事を思い出してな。 イライラしてて忘れてたが、あくまでビジネス。 売れないものを時間を割いてまで探すものじゃないってな」


 「まぁ? こっからが、妙な話でな。 ゴミと金属の山の上に誰かが立ってたんだ。 じ〜っとこっちを見下ろしていてな。 霊体にしてはえらく濃い輪郭を持っていてね。 こう言ったんだ。 足場が悪いから、気をつけて降りた方が良い。 ナイフの山の上に立ってる様なモンだ、降りてこいって。」


 「……」


 「そしたら、そいつ片手を上げる様にして返事を返してきてな。 判ってくれたなら良かった。 そう思って、足元のスクラップを漁ろうとした瞬間だった」


 「……重たい音がしたんだ。 こう…………人間が落ちた時の音がな。 響いてきた音的に平らな場所に落っこちたんだろうと思って、あの人影が登ってたスクラップの山をくまなく探したんだ。 ……結果として、誰も居なかった。 頂上に登って見たが、人間が転がり落ちたとしても無傷では済まない場所だと判ったよ。 それに垂直に落っこちる所も無い。 せいぜい転がり落ちるしか出来ない場所だった」


 「ほぅ」


 「んでさ、なぁ〜んか声がするわけ。 うめき声って言うのかな、痛みに耐える感じの唸り声がしてね。 そこを掘り返すとお前が出てきた。 胸部ユニットを確認したんだけど、見たことが無いタイプだったから、持って帰って修理がてらに旧いカタログとかも調べたけど該当製品が無いっていうな。 相場がわからなきゃ売るにも売れない。 大枚叩いて買う奴も居ないだろうし、売れたとしても、トラブルになりかねない」


 乾いた口を湿らせる様にコーヒーを飲み、少し伸びたヒゲを撫でつける。


 「……お前を持って帰ってからというものの、家鳴りがしたり、カラッと晴れた日に直径30センチメートルの雹が屋根をぶち抜いたり。 悪夢も見たな。 泥棒に入られたり。 なんだかんだで、旧いオートマタの互換性がありそうなパーツが手に入ったから組み直して……頭と胸部、左腕だけで再起動。 そっからはお前の知る通り」


 世界にノイズ混じりの暗闇が映る。眼の前に熱源が近寄っており、咄嗟に左腕を突き出す。


 「おおっと?!」


 子供の声だ。カメラの電圧が安定し、視界に0と1の細かな数字で埋め尽くされる。内部パーツが応じた数字を画像へと変換すると、右肩の肉が抉れて出血している薄汚れたガキが、痛みに耐えながら離れて行くのが見えた。


 「やっぱし、マニュピレーターは外してから電源入れるべきだったかな……痛てぇ〜。 お〜い聴こえてるか? お〜いガラクタ、お〜い」


 鉄パイプで胸の外装部分をやかましく叩きながら、返事が返ってくるまで続ける等と騒いでいる。


 「……なんだ? 小汚い子供じゃないか」


 「うっせぇ〜。 朝から機械いじりしてたんだ。 汚れて何が悪い。 ……てかよぉ〜……動いたし! へっへへぇ〜……! 内部補助ユニットはヴァルキリーフレームから流用……可能っと。 う〜ん。 ヴィンテージだねぇ。 最近のオートマタじゃないな……名前は?」


 「回答を拒否」


 「おっ。 口数少ないんだな……俺はモーガン。 小汚いガキだけど、狩人やってるんだ〜……どうよ? 中々にやるっしょ?」


 「その歳で狩人……孤児か何かか?」


 「正解。 因みに、好きな食い物は肉全般。 ……あとは甘いものと……穀物……まぁ何でも食える。 今日からお前は俺の所有物な! よろしく〜!」


 「…………」


 「勝手に電源落とさない様に配線に細工させてもらったから……いや、なんか油でくっついててさ、外す時に一緒に取れちった。 返そうか?」


 基盤と配線の繋がった制御ユニットを左手に載せると、オートマタはそのユニットを握りつぶしてしまう。


 「……あ〜あ。 珍しいタイプだったから後でバラそうと思ったのに……ま、いっか」


 「……何が目的だ?」


 「ん〜? 目的ぃ? そ〜だなぁ。 ……無いな。 ぶっちゃけ好奇心で修理しただけだし。 ……直ったら何に使おうとか考えて無かったな……イテテ」


 止血帯をつける所作は無かったが、右肩の傷が何か黒い物で埋まっており、小汚い布で雑に拭って肌についた血を落としている。


 「……馬鹿なのか?」


 「機械には、気分ってモンが解らないだろうから、理解を求めはしないさ。 動くなよ〜」


 左腕のマニュピレーターに付着した血を同じ布で拭き取る。


 「その傷。 今さっき」


 「おん。 ザシュって。 キレのあるパンチだったよ。 寝起きで覚えてないとか? 人の事、馬鹿とは呼べないアホだなぁ。 お前も……まぁ、これからお互い長い付き合いになるだろうし、よろしくな。 名前は……そうだな、俺は基本的に根無し草だからさ、色んな場所に行く事になる。 旅行鞄(トランク)なんてどうだ?」


 「おい、トランク。 ……トランク。 どしたよ? ぼうっとして。 お前、話聞いてたか……?」


 「……すみません。 過去ログを漁っていて」


 「お。 そうか。 ま、たまには昔話も悪くは無いな……」


 モーガンがラジオに電源を入れ、周波数を変える。この時間に流れている放送。先日に起こったニュースの録音が流されている。


 「……国際ニュースですか」


 「まぁ、こういうのを聴いて、ある程度の一般教養を入れるのも悪くはない。 役立った事はあんまし無いけどさ」


 「……先日未明、狩人協会参画国家、アッシュランドが狩人協会を脱退する声明を発表しました。 今年に入り、狩人協会を新たに脱退した都市国家はこれで、28カ国。 アッシュランドは王政による統治が行われていましたが、反乱により国王、その他一族が処刑されたとの事です」


 「また、この革命に関して、民主的な国家が誕生するとの見方が出るのではないかとの声もあります。 またこの革命により、アッシュランドの平均株価が4割下落。 法定通貨、1700オクロンあたり1クラウン。 クラウンの価値が暴騰しています」


 「……最近多いねぇ。 狩人協会からの脱退」


 「……民主的な国家ですか」


 「ありえんよ。 アッシュランドと言えば、七曜教会の分派が力を持ってる。 ナンバー2がトップに挿げ替えられるだけさ。 宗教国家になるだろうさ。 民主的な国家なんざ幻想的な話さ。 滅多にないよ」


 「狩人協会によりますと、民主的国家になるという意見には懐疑的との意見が発表されており、革命派のグループには七曜教会の分派、ジレオールが関与しているとしています。 ジレオールのメンバーに関して、トップであるマジーニ氏、ナンバー2である、フォリセ氏が立て続けに亡くなっており、ジレオール内の過激派による革命の扇動がなされた可能性が高いとの事です」


 「脱退に関してですが、狩人協会の提供する防壁の施工費等は全額回収がされており、脱退国には珍しく無借金での脱退となる予定です」


 「……明朗会計とは珍しい」


 「……実は知ってたんですか? モーガンの読みが当たるだなんて。 先日のニュースですし」


 「……株価が上がる様な読みができれば良いんだけどな。 どうでもいい国の株価の予想は、割りかし当たるのはなんでかね……?」


 「……モーガンが買ったら下がりますもんね。 この間換金しに行ったら、会社潰れて紙屑化してましたよね。 あの株券」


 「あーあぁ。 聞こえな〜い。 ギリギリプラスだから良いんだよ。 別に。 トータルで儲けてるから……」


 「クリスタルリバーサイドが狩人協会を脱退……とか」


 「やめてくれ。 縁起でもない」


 つづく

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